酔いどれシューベルト 公演情報 劇団東京イボンヌ「酔いどれシューベルト」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    悪魔の名曲
    曲作りに悩むシューベルトが悪魔と取引して、寿命と引き換えに
    美しい曲を作ってもらう、という設定が良い。
    芝居と歌のバランスもよく、エンタメとして大変楽しめた。
    前半のぎこちなさ、特にコメディタッチの部分がやや無理くりな感じでもったいない。
    悪魔が登場してからは、その台詞とキャラの魅力でグッと舞台が締まって面白くなった。

    ネタバレBOX

    舞台上段は小ぢんまりしたオーケストラとピアノ。
    下段は町の酒場が設えてある。
    思うように曲が作れないシューベルトは、1曲でも出版社が買ってくれたら
    幼馴染にプロポーズしようと夢見ているが、思うようにいかず飲んだくれている。
    そこへ悪魔がやって来て「寿命と引き換えに美しい曲を作ってやる」と囁く。
    1曲に寿命1か月を差し出す、という条件で、彼は600曲の歌曲を始め
    多くの曲を世に送り出し、成功を収める。
    ところが幼馴染は、金のために好きでもない男のところへ嫁ぎ、
    シューベルトは彼女を恨んで生きることを決意する。
    やがてシューベルトの寿命があと1か月となったとき
    彼の望みが叶えられて、幼馴染と再会する…。

    シューベルトの幼馴染役の方、のどを痛めたか風邪か、苦しそうな声だったのが残念。
    でも静謐なエンディングはとても良かったと思う。

    前半が固く、台詞の応酬にぎこちなさが見られたのが、
    せっかくのコメディが客席を巻き込めなかった理由だろうか。
    役者陣は皆熱演なのに惜しい感じだった。
    それがガラッと変わったのが、悪魔の登場シーン。
    悪魔の台詞回しにキャラが乗って大変面白く、一気に惹き込まれた。
    悪魔が曲を作る辺りから、挿入される歌とエピソードがリンクして舞台が濃密になった。
    私は歌に関して素人だから専門的な事は判らないが、魔王の歌には豊かな表現力と
    “悪の道の艶”があって、ドラマチックな展開に相応しい華を感じた。

    “悪魔と取引した”と告白するシューベルトに、幼馴染が告げる台詞に説得力があった。
    「悪魔が作ったのではない、悪魔も天使もあなたの心の中にいる」
    その言葉に、音楽家としてのシューベルトはどれほど救われたことだろう。
    “作曲家として認められたいがために、作曲家としての魂を売った”ことに
    死ぬほど苦しんだに違いない彼が、最期にそれを聞いて安堵の眠りにつくシーン、
    思わず涙がこぼれるラストだった。

    私は初演を観ていないが、ストーリーが音楽家の本質を突いていて
    とても深く、面白かった。
    主人公のキャラ設定がもう少し繊細だったら、
    時折大声を出すだけでなく、台詞で表現されていたら、
    いしだ壱成さんの個性がさらに際立ったように思う。




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    2016/11/17 21:45

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