ひずむ月【本日千秋楽!当日券若干あり】 公演情報 劇26.25団「ひずむ月【本日千秋楽!当日券若干あり】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    花四つ星
    地震でデータが消失した。

    ネタバレBOX

    大森式地震計で有名な東京帝国大学教授、大森の下にはすぐれた研究者が居た。名を今村 明恒という。日本の家屋特性や地震時の状況を的確に判断し、関東大震災の起こる前から大地震の可能性と予想される被害状況を説いたが、新聞の不正確で扇情的な記事から社会的誤解を受け、ほら吹きと評されるようになる。無論、彼の子供も学校でこのことを根拠に苛めを受けたりからかわれたりするのだが、日本の大衆の事大主義と軽率が、彼を追い詰めて行った。然し、物事をまっすぐに見つめることのできる彼には、自分の地震学が、主任教授の大森のものより正しく思えた。その為、以前よりメディアに注意するようになってはいたものの理論的に正しいと信じることに対しては発表していた。この姿勢が、彼への風当たりを増々強いものにしていった。無論、彼もこの件では悩む。偶々、義太夫の呂昇という人物に出会い、人生のいろはについても深い思索を身に着けるようになった今村だったが、彼の呂昇に対する批評が鋭く呂昇自身が感心するほどであったこと、また義太夫の上達が早かったことを見ても、彼がバイアスなしに物事を正確に見る目を持っていたことの証拠となるであろう。それに引き替え、学問的正しさより政治や評判を気にするタイプとして描かれている大森が、学会の大会でオーストラリアへ出掛けている間に明恒の予想通りの大震災が関東を襲い、死者105000人という大惨事となった。大衆は、明恒を地震の神様と呼びならわすように豹変したが、見苦しい限りである。昨日までほら吹きとさんざ馬鹿にしていた舌の根も乾かぬうちに態度を一変させる。この見苦しさと見識の無さは、自分が日本人を嫌う最も大きな理由である。
     それでも、大森は帰国直後、衰えた体をおして、地震研究所を訊ね、自らの瑕疵を認めると共に侘びを入れ、後任を明恒に託す。大森も流石に一流の学者であったのだ。腐り切っていない。間違いを間違いと認め、けじめをつけることは誰にでもできることではない。裕仁の戦争責任は明らかであるのに、彼はけじめをつけなかった。その故にこそ、戦後日本は此処まで腐り切ってしまったのだ。明仁天皇は皇太子時代から、父の尻拭いをしてきた。その上での生前退位の要望だろう。良く贖罪をなさった。ご希望を叶えて差し上げれば良い、と自分は思う。
     今作にも出てくる、関東大震災時の朝鮮人虐殺事件は日本人の恥として、先ずは侘び、亡くなられた方々の冥福を祈るべきであろう。
     そして、このような惨劇を二度と繰り返すことの無いよう、日本人は、事大主義を改め、キチンと自分の目で見、自分の頭で考え、他人の話をまんべんなく聞いて自らの選択をしてゆきたいものである。
     万遍なく聞くということは日本会議メンバーのような下司の吐く嘘迄聞けということでは断じてないことは無論である。
     役者達の演技に関しては、背凭れの高い椅子に座りながら、列車の揺れまで表現していたことに感心。舞台美術、場転も話の展開の腰を折らないスムースなものであった。この辺りの演出もグー。

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    2016/10/16 00:26

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