対岸の永遠 公演情報 てがみ座「対岸の永遠」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    ロシアが抱えるもの
    1999年のサンクトベテルブルグを中心に家族を置いてアメリカへ亡命した詩人と祖国にいる娘やその家族、知り合いの心情を描いた重厚な力作。長田さんの戯曲は実は初観劇。全編で、詩的なセリフが多く心にスッと入るというよりは、もう少し観る側が思考しながら観る必要に迫られるところはあったけれど、ラストに行くにつれ娘と父がどこかの世界でどんどん心が通い合って行く様が力強く押し寄せ、ラストは呪縛からようやく解き放たれた安息が訪れる。観ているこちらも静かに感動できた。
    日本人にとって社会主義時代のヨーロッパを100%理解することはできないと思っている。かつて東ドイツ出身の巨匠指揮者、クルト・マズア氏がNHKのインタビューで、東西ドイツ崩壊時の心情を聞かれたとたん、それまで上機嫌で答えていた表情が一変し、こう言った。「今、この限られた時間で、それをあなたに話して、いったいどれだけ理解できるのでしょう?おそらく無理だろうし、あなた方の番組が、むこう1週間にわたって私の話を編集なしに放送してくれるなら、話してもいいが・・・」と。あの情勢の当事者でないとわからないことは山ほどある。ただ、長田さんのこの戯曲は、それを柔軟な感性で上手に解きほぐし、全部は無理でも当時のロシア人の感情の一旦を間違いなく感じることはできたような気がした。

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    2016/03/21 21:16

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