無心 公演情報 劇団 東京フェスティバル「無心」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    柔軟
    直球ストレートな問題提起と、それを他人事と思わせない設定が
    きたむらさんの真骨頂。
    矛盾との共存を余儀なくされている沖縄の実情がビシビシ伝わってくる。
    そこに暮らす人々の柔らかで、他を許し受け入れる精神が美しい。
    “暑苦しく愛すべき”登場人物が大変魅力的で、うまく行き過ぎなラストまで
    惹きつけられた。
    シリアスなテーマを扱いながら笑いのタイミングを決して外さないところも
    素晴らしい。
    当分沖縄弁のイントネーションが頭から離れないさあ。


    ネタバレBOX

    沖縄、基地移設反対運動の拠点「テント村」が舞台だ。
    活動を続けるメンバーたちは、皆沖縄の現状に矛盾を感じながら、
    それでも協力し合っている。
    ところがその矛盾が具体的な形で彼らの身に降りかかる。
    娘が米兵と交際していたり、妻の病気にお金が必要で用地買収に傾いたり、
    国の事業を請け負う仕事をしている父親の言いなりだったり…。
    そしてそこへ東京からひとりの男がやってくる。
    彼は地元の議員の主張の矛盾を突き、新しい発想で
    事態を打開しようと試みる…。

    基地がすぐになくならないのは誰もが分かっている。
    考え出したら怒りと情けなさでいてもたってもいられないような場所で
    沖縄の人々は生きている。
    矛盾を矛盾のまま受け入れ、だけど純粋なエネルギーは持ち続ける。
    そんな南国らしいおおらかさと、敵対する人をも理解し思いやるやさしさが光る。
    きたむらけんじさんの脚本は、真摯に現実と向き合う人を描く時、その人を甘やかさない。
    辛い選択をさせ、情けない告白をさせ、大事な友人を失う覚悟をさせる。
    観ている私たちはそこに歩み寄り、深く共感する。
    そして一緒に解決方法を探すのだ(たとえ解決できなくても)。

    ストーリーを動かす登場人物が二人、実に魅力的だった。
    一人は公務員でありながら反対派に心を寄せ、
    敢えて間に立って職務を全うしようとする男。
    菊池均也さん演じるこの男は、複雑な心情と立場が今の沖縄を象徴するようで、
    この立体的な人物造形が物語に奥行を与えている。
    もう一人は、東京から来て新鮮な空気とアイデアを吹き込む男。
    江端英久さん演じるこの男は、アフロヘアの見かけとは違って硬派な一面を見せる。
    硬直した関係性に全く新しいアプローチをする外の風だ。

    これら役者陣の熱演が、暑苦しいキャラにはまって大変楽しい舞台になった。
    山口良一さんの“間”と終演後の“しゃべり”に、さすが鍛えられてるなあと思った。

    東京フェスティバル、テッパンの良心で泣かせる数少ない劇団だ。


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    2015/10/26 22:56

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