落伍者、改。 公演情報 ラチェットレンチ「落伍者、改。」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    芸の道...観応え十分
    2014年の公演は、劇場_てあとるらぽう であったが、今回は第26回池袋演劇祭優秀賞受賞を祝し南大塚ホールでの上演であった。舞台スペースが広くなったことで、動きも多く取り入れ、躍動感が増したようでもあった。同時に人物像がより鮮明で落伍から落語へ成長する姿...相楽亭爽雲(山口太郎サン)と相楽亭爽太(大春ハルオ サン)の2人に迫力があった。
    落語の世界に生きるとは、その芸を全うすることの難しさ、そのためには命をも懸ける厳しさを描く。落語会に名を残したい、極めの演目が古典落語「死神」である。表層的には古典落語と新作落語の対比の中で、その芸に邁進する過程を描いているが、その姿を通して人間の生き様を見るようである。


    ネタバレBOX

    舞台セットは、舞台奥を4~5段高い2層にし、上手は客席に、下手は袖口に向けてそれぞれ階段が設けられている。そしてそこには落語の演目を書いた半紙が重ねるように貼ってある。舞台中央には高座を設けている。

    物語は、咽頭がんで噺家としての命、声を失うとしている。さらには自身の命を懸けて芸を極めようとする相楽亭爽雲。その生き様は落語界では鼻つまみもので、残った弟子も2人のみ。余命幾ばくもないが、後世に名を残したい。その噺は不思議と力強く、魅力に満ちている。

    そのライバルとして新作落語の鉢巻家ろく紋(山﨑巌サン)である。この現在の2人の相克を横糸、若い時に愛した女・小百合(南口奈々絵サン)... 親友との鞘当で、図らずも身を引くことになり、その後小百合と親友との間に生まれた娘を引き取り面倒をみる。こちらを時代軸とした縦糸とし、糸が織り成す見事な着物(物語)が出来ている。そこに落語に因んだ「品川心中」をイメージするような話を紋様として織り込まれ、濃密で重厚な物語が展開する。観客は弟子の相楽亭爽太の寄席を通して師匠の心を聞くことになる。
    古典落語、新作落語の違い...犬猿の仲といわれた噺家2人が互いに認め合うが、決して妥協しない芸筋。息苦しくなるような台詞の応酬、一方色恋に見せる艶やかさと寂寥に心打たれる場面も秀逸である。
    桎梏に捉われそうな世界を自由に泳ぐ大魚を大舞台で観た。

    次回公演も楽しみにしております。

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    2015/09/29 18:34

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