アンソロジー 公演情報 ACRAFT「アンソロジー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    豊かな創作力...
    芝居は、脚本・演出・演技・舞台美術・音響・照明など、総合的に楽しむものであろう。そしてフィクションであり、それをどう面白く描き、観せるか。そこにテーマ性などが見えれば最高である。
    その意味で、この芝居...壬申の乱は日本史の中でも教科書に記されるほど有名でありながら、よく知らなかった話を魅力ある物語にして観せてくれた。
    その創作力、イマジネーションの豊かさ...同じことを並べて書いたが、文字も言葉と同じくらいに大切である。それはこの公演が教えてくれたこと。

    ネタバレBOX

    この物語の構成・展開は解りやすいが、それでもこの時代背景を理解しておいたほうが、より楽しめる。そのストーリーを牽引するのがストーリーテラーとなる、柿本人麻呂と稗田阿礼である。この二人の回想と俯瞰を通して「壬申の乱」前後が描き出される。その展開は時代を遡るが、そこからは時系列に進み、トピックも都度説明が加えられる。

    この公演の良かったのは、有名であるがあまり知られていない事件について、発想力豊かに描いたこと。その中心は、人間の愛憎の視点であったが、当時の社会経済(財政逼迫)・政治(皇位継承)・国際情勢(唐、新羅および百済との関係)もしっかり織り込んである。この物語を貫いているキーワード「言霊」であるが、それを表す力強いセリフもちりばめられ、心地よく響く。その後、記される「古事記」「万葉集」などは、まさしく「心に(言葉)の種を植える」が実を結んだ証であろう。

    だたし、この「言葉の力」の描き方が、歌を詠むシーンだけでは弱い感じがした。選歌が、個人的心情・情愛のものであるため、この内乱阻止に役立たないのかもしれない。しかしそこは芝居の世界...言葉の力が戦渦を防ぐ一端が観えればと思った。あくまで史実の流れという感じであったのが、個人的には残念であった。

    最後に芝居の演出について、際立った戦闘シーン(殺陣)がないので、宮殿の業火シーンは上部幕の揺れと紅蓮照明が相まって陥落の雰囲気があった。逆にいえば、それ以外の演出の妙が感じられなかったのが残念である。

    次回公演も楽しみにしております。





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    2015/07/05 12:21

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