もっと超越した所へ。 公演情報 月刊「根本宗子」「もっと超越した所へ。」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    超越した面白さとリアルさを併せ持つ演劇
     根本宗子が脚本を書き、演出し、出演しているお芝居は
    今見なきゃいけない。後からじゃ駄目なんですか?はい、駄目です。
    彼女は徹底して「今だから。私だから」(☆)書ける
    作品にこだわっているから。
    彼女が言う「今だから。私だから」書けるものとは
    どんなものなのか?評論家さんの多くは彼女の作品を
    「リアル女子演劇」と語っている。まあ、的を得ている
    言葉だと思う。今を生きる女性たちの可愛い部分だけで
    なく醜い部分も合わせ、リアルに描いているから。
    でも、まだ言葉が足りない。リアルなのは女性だけではない。
    男性もなのだ。
     
     この作品は男性側のリアル、俗に言う「ダメンズ」のリアルが
    半端無い。劇中には、4種類・4人のダメンズが登場する。
    プライドが異常に高いダメンズ、ナルシストダメンズ、
    小心者ダメンズ、相手を傷つけたくないと思えば思うほど
    傷つけてしまう、他人と深く付き合えないダメンズ。
    笑ってしまうほど「こんな奴いるいる!」と凄く納得してしまう。
    4人を一言で片付けてしまったが、各々には、
    経済力の皆無、強烈な卑屈精神など駄目っぷりが十重二十重に
    てんこ盛りされている。なのに誇張だとは思わない。
    何をやっても駄目な男って周囲に結構いるという現実を
    根本に再認識させられたからだろう。
     その4人にはそれぞれ彼女や女友達がいる。
    彼女たちは皆、しっかり者で真面目で働き者で、
    経済的に自立しているという、今時の女性だ。
    登場人物全てが根本が言う「今だから」を体現している。
    彼女たちは真剣に男の事を思い、現状の改善や将来の事について
    真面目に考えているのに、ダメンズたちはその場限りの言い訳や、
    責任回避などに明け暮れ、彼女たちの足を引っ張ってばかり。
    空回りするやりとりが、幾度となく観客の爆笑を誘う。
    当然、彼女たちはキレる。相手を傷つけたくないと思えば思うほど
    相手を傷つけてしまう男が言う感情のこもっていない奇麗事に、
    女性は泣きながら怒りをぶつける。「自分だけ良いカッコしないで」と。
    拙者、こういう事、言われた事あります(笑)。いや笑っちゃ
    いけないな、真剣に怒られたのだから。彼女たちが言う
    男たちを非難する言葉、男性の観客なら、少なくともどれか一つは
    自分にも身に覚えがあるはずだ。逆に言えば、女性の観客なら、
    そういう言葉を実際に男に浴びせた記憶があるのではないか。
    それだけ、男女問わず幅広く多くの共感を得られるという事だ。
     
     この4組の男女のお話が、文字通り「同時」進行
    するという、今までに見た事がない構成だ。これが凄く面白い!
    「どこでも観たことがないものをやり続けたい」(☆)という
    彼女の決意が見事に反映されている。
    それぞれの舞台は、主に女性の部屋。そこには、彼氏が好きな
    ファンタオレンジの空きペットボトルがたくさん入ったゴミ袋や、
    ジャニーズの顔写真が写ったウチワ、ピカチュウやキティちゃんの
    ぬいぐるみなどがあり、舞台装置のリアルさにも抜かりがない。
    それらが、根本作品の「私だから」を強烈に感じさせる。

     なぜこれほどまでにリアルなのか?出演者の小沢道成は
    根本宗子について「とにかく見てるんです。人を。(中略)
    観察力のずば抜けた人。まじビビる」(※)と述べている。
    同じく出演者の大竹沙絵子も同様の意見である。
    彼らが語る、根本のずば抜けた観察力が、彼女の作品の
    凄まじいほどのリアルを支えているのだ。
    彼女は自身の作品を「私は人を描くことで動く物語が
    多い」(※)と分析している。ストーリーが登場人物たちを
    動かしていくのではない。ずば抜けた観察力で描いた
    今を生きるリアルな人間たちが、ストーリーを動かしていくのが
    根本作品の特徴なのだ。だから、登場人物たちの発言や行動が
    自然で、それがストーリーの自然さ・リアルさ、面白さに
    繋がっている。その特徴は、このお芝居で一際際立っている。
    他の作家が書く演劇では、それらがここまで突き抜けた
    ものはなかなか見られない。
     最後の最後まで、「ありきたりなものなんていらないし、
    もっと超越した感情が私はほしい」(*)という彼女の強い
    意志に貫かれたこの作品。ラストのラストまで目が離せない。
    面白かったの一言では済まされない、それよりはるかに
    超越した感情を、観る者全てに与えた事は
    紛れもない事実だ。

    (終わり)

    ☆「ご挨拶」より抜粋
    ※パンフレットより抜粋
    *月刊「根本宗子」のブログより抜粋

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    2015/05/16 16:39

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