悪い冗談 公演情報 アマヤドリ「悪い冗談」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    カタルシス、発見、いずれも薄い
    絶望のお話。よどみない眼差しで人間の真実(残酷さ、醜悪さ、身勝手さ)を見すえた時、果たして人の未来に希望を見出せるのか? と問うている。反語的疑問だが、希望は見出せていない。絶望の仕方がゆるいからだと思う。資本主義にしろ新自由主義にしろ「自由」が「悪」を不可避に孕む事実を知っても、人は自由を選ぶだろう。そして悪は無くならない。終盤で男が結語のように語る台詞の意訳だが、そこに収斂する各シーンになっているかと言うと、関連がいまひとつスッキリしない。場面の作りも中途半端でその中途半端が意図的なのか‥それにしては隅田川繋がり(花火見物に絡むシーンが幾つかある)からの東京大空襲の描写はえらくシリアスで感情移入を促している。だが、爆弾を投下した兵士はつまらない動機でこれをやったのだろうと、皮肉にしては力なく陳腐な、敵愾心の対象にしたい「意図」による解釈の落ち。韓国、台湾から来た男女をそれぞれ囲む会話のシーンでは、植民地時代や歴史問題に触れる部分もあるが、それでどうという展開はない。意図的に会話を「深めない」ようにしたのか、あれで結構深めた事になっているのか、それさえ分らないが、いずれにしても自らの側の加害を掘り下げて初めて見えてくる風景を、無意識に避けていないか? スタンレー何とか言う、人間の服従心についての有名な実験の再現はいいアイデアだと思った。が、残念ながら問題が浮き彫りになるように作れていない(これは単に技量の問題かも知れないが)。妹を殺された姉が服役囚の下へ通うが「罪」を問題にしているようで自分が何をしているのか分らなくなる対話が、何となく人間の限界を暗示しかけるが、全体の中に埋もれてしまって残らない。被害と加害の対立は厳密には解決出来ない(歴史を救うのは忘却だ)、という部分に着目した感じは受ける。しかし今や道徳や倫理が通るにはその土壌が必要であって天から授けられる訳ではない事は、現状を見れば十分で、強調する意味があるのか。もやもやした日本の現実をそのまま舞台に上げてみた、というには先述したように空襲の逸話が被害体験として浮き立っている。個が国家に寄り添うのは自主、民主の意識が脆弱になった時だが、被害意識の共有はその端緒になる。そうなりかけてる現状を突き放してこの劇は見ているのでなく、それを結果的に促していないか。突き詰めきっていない感が否めない。

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    2015/03/28 09:38

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