花と魚(劇作家協会プログラム) 公演情報 十七戦地「花と魚(劇作家協会プログラム)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    現代社会の写し絵
    現代社会で一番問題となっていることを描いている。
    漁村の話だが、どんな地方でも、いや都会でも同じような力学で世界は回っている。
    人は自分の見たいように世界を見、そのためにあらゆる情報、手段、他者を利用する。それはどんな立場の者でも同様だ。右であれ、左であれ、上であれ、下であれ。この作品はそんな社会に蠢いている力学のことを描いている。

    私は再演を観ているが、再再演の今回では見え方が変わった。
    役者や演出、そして小屋が変わったこともあると思うが、
    社会状況が変わったことも大きな要因だと思う。

    その状況状況で、様々な捉えられ方のできる素晴らしい作品だと思う。

    ネタバレBOX

    今回改めて観て一番感激したのは、作家:柳井 祥緒氏の姿勢。
    一般的に社会意識の高い作家は、単純な体制批判に陥りがちだ。
    だが、社会はそんな単純な二項対立では成り立っていない。
    体制批判の力学は一歩間違えば第三者への暴力にもなりかねない。
    また根拠のない陰謀論をまくし立てるだけでは、批判をしているという話者のストレス解消にはなっても、本当の意味での問題解決には何ら近づけない。
    そのことは震災を契機として社会の前景となり、それらの暴力を様々な場面で私は見てきた。

    本当の批評性とは、そこで発動している力学を注視すること。
    そこからしか問題の解決に至る端緒は見いだせない。

    柳井 祥緒氏はそういう意味で極めて理知的で批評性を持った作家だと思う。
    その点にとにかく感服した。


    <再再演を観て>
    私は再演を観ていたこともあってか、再演の時ほど作品内のスペクタクルにのめり込めなかった。というのは、第一に物語を知っていたから。第二に小屋が大きかったから。どちらの要素が私にとってより大きかったのかは判別がつかない。どちらかというと後者のような気がしているが、「大きい舞台でも充分よかった」という評も多いので、前者が理由かもしれない。
    これは批判ではなく、向き不向きという話だが、柳井作品を充分に活かすにはやはり密室的空間で観客の集中力を最大限に高めるという方が良いような気がする。広い空間は、観客の意識も拡散してしまう。すると、どうしても柳井氏の知的な台詞の意味を充分には理解できずに、次のシーンに移ってしまうという場面が多かった。(私の頭が悪いだけかもしれないが。)
    ただ、これだけ力があり素晴らしい劇団は、もっともっと評価され、多くの人に観られてしかるべきだと思うので、座・高円寺のような大きなところ、更にもっと大きいところでもやって欲しいとも思っているので複雑だが。
    (私が問題にしているのは、「観客の意識」の問題であって、空間演出のことではない。空間演出については素晴らしかった。難しいテキストを聞き、理解する観客の集中力が劇場空間の大きさにも左右されてしまうと言っているだけだ。勿論、影響を受けない観客もいるだろうが。)

    また、役者さんが素晴らしかった。
    皆、素晴らしかったけれど、なんと言っても須田日出子役の関根信一さんが凄い存在感だった。『獣のための倫理学』での演技も凄いと思ったが、パワーアップしている感があって、見入ってしまった。
    鶴町憲さんも地味によかったな。
    いや、皆さん本当によかったんですけど、特に。

    柳井作品、次回作も楽しみです。

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    2014/12/14 14:52

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