ゲキ★BAR 公演情報 世の中と演劇するオフィスプロジェクトM「ゲキ★BAR」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    桶屋のはらぺこソングが抜群
    先ずは「ふ抜けの投影」(20分)、「桶屋はどうなる」(50分)を拝見。前回も紹介したようにBARが設置されている。今回はウェイターも居た。

    腑抜けが、見えない物を通してイリュージョンを立ち上げるという演劇手法であるならば、桶屋は、時代の現実に棹さしつつ庶民の的確な判断を勘違いも甚だしい阿保な為政者に突きつけるメスの役割を担ったもう一つの演劇の形であると言えよう。こちらは、原因こそ目に見えない放射線であるが、その結果は、医療機器の進歩で資格化できるようになったものが、増えた。桶屋だけなら、★5つの所だ。

    ネタバレBOX


    「ふ抜けの投影」
     男(兄)はキャンバスに向かって見えない絵を描いている。女が現れる。二人は同じ夢を見ているとか。で、男が何度も名を呼ぶので、女はやってきたわけだ。男は相変わらず、キャンバスに向かって描き続ける。男の描いているのは、彼を振って出て行ってしまったさよこの肖像だ。然し、女に絵は見えない。女は、自分を見て、と言う。男は女を見る。然し、女は自分を見ていないと言う。男は、胸に手を入れ取り出すと、女に手渡す仕草をする。愛情を手渡したのだと言う。女は、何も無いと応える。男は上着や、ズボンのポケットをまさぐろうとするが、女に言われる。ポケットは無いよ、と。女は男の帽子を指さす。男は帽子を脱いでその中からまた何かを取り出す仕草をする。そして女に手渡す。女は応える。空っぽ、と。そして、あたしは“さよこ”じゃない、と応じた。
    妹が出てくる。妹も何度もさよこに間違えられた、と言う。彼女はまだ恋に恋している段階なのだが、先に進みたい。実際に男友達を呼び出して告白しようとするが、上手くゆかない。
    33歳のOLが、登場し、彼女が、新宿西口のLOVEモニュメント交差点に突っ立っている理由“結婚して下さい”と年齢とが書かれた段ボールを首からぶら下げて盛んにアピールしている。偶然が重なって、どうにか、カフェのウェイターと話をすることはできたのだが。
    メインストリームは、絵を描いているハズの男と現在の彼女の話である。だから、最後は、其処に戻って行く。で、最初の会話と同じ科白が演じられた後、女が言う。男が愛情だと寄こしたものに空っぽだと応えてから、私はさよこじゃない、と。
    「桶屋はどうなる」
     風が吹くと桶屋が儲かる。という例の話なのだが、じゃあ、それは実際何がどうなると最終的に桶屋が儲かるのか? と問われて即答できる人は、そんなにいまい。落語通なら居るかも知れないが。
     で、実際に語られるのは、ゴキブリ姉妹の話である。妹には名が在って、チャバネ、姉には名が無くお姉ちゃんで通される。
     ゴキブリはシーラカンス同様、3億年前から存在し、地球上、生物の居る所なら殆ど総ての場所に生息し、主たる食物は塵である。その生命力と繁殖力の逞しさは並大抵ではない。ところで、チャバネは腹ペコである。お腹と背中がくっついちゃいそうな程だ。でもくっつかないけどね。何故かというと、お姉ちゃんが隣の庭に住んでいる鈴虫に恋をして、ストックしてあった胡瓜を毎日持ちだしてしまったからだ。毎日、お姉ちゃんは胡瓜を鈴虫の所へ持って行く。そして、お腹が減って鈴虫の目の前で全部食べてしまう。それで、鈴虫に「2度と顔も見たくない」と振られてしまった。声フェチのお姉ちゃんの恋はこうしてお姉ちゃんの喰い意地のせいでおジャンになった。でも、お腹はすく。喧嘩なんかしないで、仲良くしてたってお腹はすく。特に、チャバネはペコペコで腹が減り過ぎて腹痛を起こしているほどだ。そんな彼女らの所へ、妙な野菜が歩いてきた。色も変なら、形もおかしい。野菜なのに、手足がある。足は根っこが変形したと本人は言っていたが、ミュータントなのだという。要は、突然変異である。姉妹は、この野菜にベジ子という名をつけた。ベジ子は、自分の体になっている幾つもの異なる野菜から、1つづつもぎ取ると姉妹に与えた。姉ちゃんは、可也、警戒している。というのも、突然変異を起こした原因は、自分の子供達に悪影響を及ぼさないか、と心配しているからである。だって、食べたものが、体を作るわけだから、食べ物こそ、自分の生命である。従って、その声明の素に悪い物質が入っていたr、あ自分の体が悪くなり、母体から栄養を摂取するしかない子供たちも母を通して同じ悪影響を蒙るハズだ、と彼女は言うのである。姉妹はベジ子に訊ねる。何故、突然変異を起こしたのか? 何があってそうなったのかを。ベジ子は答えた。風が吹いた、と。風邪が吹くと雲が出来る。雲が出来ると、雨を降らす。雨は、汚ない物を溶かし込んで、地面に沁み込む。土は、汚染されてしまった。そして、ベジ子は汚染された土の畑で育った。そして体がこうなった。収穫の時期に人間に見付かると処分されてしまう。折角、食べられる為に、おいしく育ってきたのに、処分されてしまうのでは、自分の生きて来た、否、生きている意味が全否定されてしまう。だから、彼女は畑から逃げ出してきたのだ。この風が吹いて云々から、奇形迄のプロセスが、桶屋のそれと照応するのである。そのことで、人間が自然界に齎した災厄と生命に対する罪を告発しているのだ。
     説明はこれくらいにしておく。兎に角、姉妹はベジ子がちぎってくれた野菜を食べた。ホントにおいしかった。こんなにおいしいのに、それを食べた者にも、その子孫にも異常が出る可能性があるというのだ。ベジ子自身もレゾンデ―トルを失い、アンチノミーに引き裂かれている。この残酷な状況に除々に気付いていった姉妹は、初め50度cのお湯を掛けて、ベジ子の汚染を取り去ろうとするが、そんなことで内部被曝の悪影響は拭えない。次に体内の悪い因子を排出する為のエクササイズに挑むが。野菜の鮮度は直ぐ落ちる。そうこうしているうちに、ベジ子は、腐り始める。そして、彼女は、1人去ろうとする。処分される為に。だが、心を通わせたチャバネにそれは耐えられない。まして、ベジ子の何も理解せず、というより意図的に隠蔽し矮小化して何も問題は無いとするような者の手で処分させてはならない、とチャバネ自らがベジ子を処分することに決めた。先ず、種を取り出して、劣性遺伝子の拡散を防ぎ、彼女の体を見仁に刻んで、深い土中に埋める。そう決めたチャバネにベジ子は訊ねる。「私を処分した後、あなたはどうする」と。チャバネは答える。「あんた達の末裔を食べられるまで生き抜く」と。
     ベジ子の解体しつつある体からはDNAの螺旋が出て来た。二人は、その端を互いに持って3億年前の世界を垣間見た。その美しかったこと! その驚くべき世界を見た2人は未来を思い描く。3億年後、生物は進化を遂げて人間になった。

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    2014/09/25 02:41

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