◯六◯◯猶二人生存ス 公演情報 劇団チョコレートケーキ「◯六◯◯猶二人生存ス」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    特攻の起源
    どこまでが事実に基づいていることかはわからないが、
    少なくとも作品には、
    「特攻」を可能にした精神が、どのように醸成されたのかの一端が描かれている。
    作品内ではそれを「空気」とも表現している。

    多くの兵士が命を賭す攻撃を神聖な行為として受け入れるためには、
    人間魚雷「回天」に最初に乗り込んだ2人(黒木・樋口)の行為が、崇高な神話として機能する必要があった。
    黒木はそのことに自覚的であった。
    それこそが、この戦局を「回天」させ得るものとして。
    そして、この2人の物語を、1人の整備士が別の視点から見つめるという話。

    集団的自衛権の行使容認が進もうとしている社会状況がある一方で、
    特攻隊の物語が美談のエンタメとして受容されている。
    そんな現在の世相に漂っている「空気」をこの作品は問うている。
    過去を見つめると同時に、現在について考えさせられた。

    ネタバレBOX

    「回天」の運用テストの最中で地底に突き刺さってしまい、
    脱出不可能となった黒木と樋口が、酸素がなくなって死に至るまでの時間を描いた物語。

    2人の物語を、整備士の視点が相対化し、批評することで、この物語が美談になることを阻止している。

    その視点によって、優れて批評的な作品になっているという言い方はできるが、今まで観た古川健脚本の豊かさと比較すると、少々図式的で複雑さに欠けるという印象もある、短篇だから仕方ないとしても。
    作品がメッセージになってしまっているきらいがあるのだ。
    勿論、役者さんの強度や演出によって、メッセージだけの作品では全くないのだが。

    どうしても、劇団チョコレートケーキの作品には、過剰に期待してしまっているところがあるので、観方も厳しくなってしまう。(申し訳ない。)
    充分素晴らしい脚本であり、作品なのだけれど。

    『○六◯◯猶二人生存ス』というタイトルは、
    2人がまだ生存していた6時を指していると同時に、
    「回天」の別称「○六」ともかかっているという、素晴らしいひねり。
    それも、チラシ段階では、何を意味しているのか、何と読むのかさえわからないのに、観ているうちにはっきりしてくるというのも素晴らしかった。
    (私は事前には宮武外骨の「滑稽新聞」のようなものなのかと思っていた。それにしても読めなかったのだが。
     深読みすれば、○は空欄としてとらえ、「26〇〇年にも猶二人の作り出した神話は生存ス」という意味として捉えることもできる、、、。)

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    2014/03/25 02:37

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