あんかけフラミンゴ11【ご来場ありがとうございました】 公演情報 あんかけフラミンゴ「あんかけフラミンゴ11【ご来場ありがとうございました】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    無理解
     何とも辛い作品だが、実りの無い純愛の一つの形であろう。DNA変異の可能性など、産む性として生まれた形態を持ちながら、アイデンティティーが、本能や社会的常識とは相反する条件・優生保護法が当たり前とされる生活圏に暮らす人々と反対に産む性としての機能は完全乍ら、恋人が、特殊な傾向を持ち、通常の交わりができない関係の地獄を描いているからである。(追記2013.10.29)

    ネタバレBOX

     妹の難産がもとで母は死亡。重い障害を負った妹は、兄に言わせれば「生まれて来なければ良かった、肉の塊」である。妹の所為で母が亡くなったと思い込んでいる兄は、優生保護法的発想に縛られ、笑うことができない。おまけに極度のロリータコンプレックスを持つ為、小さな女の子を見ると襲い掛かって悪戯をしたりする。妹に対しても性的悪戯をしている節がある。
     一方「恋人、あかり」は、愛の証として彼の子を欲しセックスをしたがるのだが、彼の方では子を望まない。子供が女の子だったら、彼は娘を追い回して悪戯しかねないとの強迫観念からである。2人の関係は、互いに強く惹かれ合い乍ら性を仲立ちにできないことで崩壊する。あかりは寂しさから、仕事先のヌードカメラマンと付き合うようになるが、カメラマンはレスビアンである。カメラマンの仕事場に不妊で悩む女達のグループにライン参加している女がモデルとして入って来たり、あかりがラインに参加したりということが描かれるので産めない女達の問題も提起される。偶々、グループメンバーから人工授精の話を聞いたあかりは、久しぶりに逢った彼から採取したスペルマを用いて妊娠することに成功。然し、「堕ろせ」と言われて中絶、女の子だったが、この事件を契機に精神に失調をきたす。壊れた精神が妹の障害と交響し挙句妹はあかりの首を絞め、妹の首を兄が締め、終に殺してしまったようだ。然し、事実そうだったのかどうかは定かでない。というのも、これは兄に対して問診をしている精神科医との話の中で語られることだからである。あかりが、実際に子を産んだのか堕胎したのかについても、兄の錯乱を描くことが主眼ということになれば、判然としない作りになっている。兄の不幸は、出産事故を妹の悪胤問題にすり替えてしまうコンプレックスと幾重にも屈折して入れ子構造化してしまった狭く深く苦い、彼の精神世界の手応えの無さに対する底なしの不安。これらが、彼の精神世界を四六時中脅かす要素である。為に彼は笑えない。「好きな人に暴力を振るわれると、口角が吊りあがって笑っているように見えるが泣いているんです」とくどい程繰り返されるフレーズが、その精神の危機を表す。と共に、くどさは、粘着質を表してもいよう。だが、この笑いに関する描き方はロートレアモンを彷彿とさせる。更に、この物語全体から立ち上るアトモスフィアは、「ドグラマグラ」をも想起させた。
     何れにせよ妹を殺害したと見える場面で、堕胎させたあかりと共に在る彼が笑っているように見えるのを「泣いているの?」と問われ「馬鹿、笑っているんだよ!」と答える科白にこの作品の地獄が、客体化された瞬間が表現されていると見て良かろう。

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    2013/10/16 16:41

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