カルメン、オレじゃダメなのか… 公演情報 シンクロナイズ・プロデュース「カルメン、オレじゃダメなのか…」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    彫を深く。これが注文だ
     メリメの「カルメン」ともビゼーの「カルメン」とも異なりながら、カルメンの情熱的な本質を活かし、ロマンティシズムに彩られたfemme fataleを描いた作品と言えよう。

    ネタバレBOX

     ただ、現在、植民地としてしか機能していないこの阿保な「国」にあってロマンティシズムをベースにしている所に、この劇団の甘さがあろう。一応、どうしようもない現政権を批判する文言が、歌われる曲の歌詞に描かれているのだが、捉え方が浅い為に表面的である。エスカミーリョ役の早川 毅は、歌もうまいし声の質も良いのだが、シナリオが浅いので表層に留まらざるを得なかったのが残念だ。カルメン役の水谷 純子は、それなりの貫目を出している。一つの形を作ったという意味で評価できる。他に気に入った演技をしていたのは、ホセ役の村上 貴弘 リリャス役の前川 翔。レメンダード役の玉城 大志は、タッパもあるし、二枚目役を優雅にこなしていた。スニガ役の張 徹雄も老け役を自然に演じて好感を持った。
     演出レベルでは、曲の使い方が上手い。また、開幕早々、カラフルな衣装を舞台上に投げ出し、必要に応じて様々な役割を持たせて使っていたが、衣装自体が派手な色彩なので、スペインの原色文化を彷彿とさせ、アナーキーで自由でカオティックな雰囲気を醸し出すのに役立っていた。無論、後半には、これらの衣装は、地味でフォーマルな物に変わる。それは、警察という権力の表象が機能するからである。この辺りを衣装の転換で表したセンスは中々のもの。評価されて然るべきだろう。
     気になった点は、序盤、音響と歌詞のボリュームの相関である。若干、歌詞が聞き取りずらい所があった。また、カルメンの性格が余りにも単純で陰影に欠ける。現在、我々の生きている時代を反映させるなら、もっと複雑なキャラを匂わせる芸が欲しい。カルメンを今のままで行くなら、脇でもっと陰影をつけるべきである。
     今後は、提起した問題を掘り下げ、内面化してから表象するように持って行けば更に高く深い表現を舞台化できよう。期待している。

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    2013/08/08 02:55

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