雲の影 公演情報 スポンジ「雲の影」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    サンプリング
    よくできているとは思ったけれど、この劇団・作品でしか見られない何かというようなものを感じなかった。

    ネタバレBOX

    この作品のピークはふたつある。
    ひとつは、二人の主人公:野村と遠藤が罵り合う場面。
    お互いがそれぞれに抱えている背景がありながらも、
    相手のそういう部分は無視して、互いにアラを探して罵り合う。
    こういうことはよく日常でも起こることで、とても強いシーンだと感じた。
    ただ、喧嘩のようにエネルギーをぶつけ合う芝居は、誰が演出し・演じても、それなりの力は持つというのはあるのだが、、、。

    もう一つは、チェーホフの『三人姉妹』の引用部分。
    古典を現代劇に使うそのサンプリング的な手法はとても上手いと感じた。
    ただ、逆に言えば、作品のクライマックスを他者(しかも大作家)の言葉の引用で力を持たせるというのは、どうかと思った。
    全体を通して、このようなサンプリングが為されている舞台だったら、そういうものとして素晴らしいと言えるのだが、一部分、それもクライマックスだけが他者の言葉では、その言葉だけが突出してしまい、作者自身の言葉の弱さが同時に強調されてしまう。(この引用が無ければ、言葉の力でまとめる芝居ではないという観方ができるのに。)他人の、しかも大御所の言葉の力で、この作品をまとめてしまったという印象。

    私は、冒頭に「この劇団・作品でしか見られない何かというようなものを感じなかった」と書いたが、ラストの締めが他人の言葉であり、作者の顔が見えないというのも、作風の問題だけではなく、その印象を助長しているのかもしれない。

    それでも、サンプリングというか、引用の手つきは素晴らしいと思った。

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    2013/07/30 10:15

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