虚人の世界 公演情報 公益社団法人日本劇団協議会「虚人の世界」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    その嘘 ホント?
     異形の者たちって、みんな評するけどホントウ?

    ネタバレBOX

     通常の世界に至る為に、虚数空間やウロボロス、メビウスの輪を潜り抜けなければならぬほど、我らの住む現世は狂っている、という作品ととる方が面白そうである。
     仮にこう捉えるならば、この世界の捩れを透かして、その本質を見る為には、異界に自ら身を浸さねばならぬということだろう。異質性を自家薬籠中のものとするか、皆が当たり前に持っている物を欠く事によって、獲得されるものをベースとした時、初めて人は外連やバイアス無しに世界の実相に迫ることができるのではないか? ということでもある。因みに世界がこれ程迄に狂ってしまった原因は、力によって道理が押さえ込まれ、道理の悉くが、圧殺され、封殺されてしまったからである。代わりに蔓延したのが、嘘と偽物である。その嘘は、限りなく本当に近い嘘、肝心な「所だけが、力ある者達に都合の良いように改変された嘘であるから、それを射抜くことは、相当の困難を伴う。
     我々の人生にした所で、各人の生きる目的は、自己自身を最大限実現することであると定義するなら、そして、生きるとは、それを最も効率的に実現する為に戦うことだと規定するのであれば、それ以外の行為は、己の内で余計な事、余計な部分であると言わねばなるまい。そんなこと、部分の為に己の時間と資力、労力を用いるなら、謂わば生きながら(・・・・・)の(・)死(・)を生きていると言わねばなるまい。
     無論、それが、戦略・戦術の一環として規定されている場合、それなりの合理性は持つであろうが。だが、それが、実行されないまま、その生を終えるのであれば、その志を継ぐ者が誰一人居ないのであれば、その人生に意味は成立するのか? という問いが可能である。
     然し、この作品が、真に目指しているものが、それだと言えるだろうか? 言えるだろう。主人公自身が「虚人とは私だ」と時に、会社などの社会組織として機能していたはずの擬制が、内破して崩れ、街は正常に復し、彼らは、其処に戻って行こうとしているのだから。
    蛇足ながら、虚人たちを内破する為の悪口に「蛆」という表現が無かったのが面白い。言う迄もなく、ベルゼゼブは、サタンの副官、蝿の王であるが、その幼生が、死者に湧く蛆であり、生きながら死んでいる存在が虚人であるなら、この蔑称こそ相応しかろうに。

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    2013/07/24 05:07

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