『うそつき』/『屋上庭園』/『千両みかん』 公演情報 アマヤドリ「『うそつき』/『屋上庭園』/『千両みかん』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    『うそつき』:人が人に対する感情(恋愛)のエネルギーは、エネルギーの法則のとおりに、流れる向きは一方通行なのか? またその総量は変化しないのか?
    っていう感じの壮大な物語ではないけど。

    ネタバレBOX

    私が感じていた、今までのアマヤドリ(ひょっとこ乱舞)の作品イメージは、空間や時間の壮大な広がりから、内側へ深く深く入り込んでいく、というものだ。

    今回の『うそつき』はそれとはかなり印象が異なる。
    一点の中で、ぐるぐると回る感じ。台詞のやり取りでバランスが変わっていく。
    ラストのどんでん返し(までは行かないけど)、一種のオチのような仕掛けが2つあり、オトシ話的で、演劇的には「普通」感さえしてしまう。

    しかし、面白い。

    なんと言っても台詞がいい。そして、役者がいいからだ。熱さだけでなく、軽妙さでも惹き付ける。90分まったくダレることなく楽しませてくれる。

    ストーリー的には、ギーコがエレファントだった、という設定のままのほうが、「引っかけました」的なオチの印象が薄く、さらにあとの展開がスリリングだったような気がする。そのほうが、私が勝手に考えるアマヤドリの作品イメージに合っているような気がする(ただし、上演時間が長くなるだろうけど)。

    しかし、ラストまでの道程がうまいのと、さらにもう一押しの、スランプがエレファントだった、というオチの「見せ方」がいい。
    ナイルとスランプの会話の感じや、かつてエレファントを飼っていた、という鳥かごの影が、スランプの頭上(壁)にスーっと伸びていく様は、照明を、壁のスイッチを切ったり入れたりするような会場で、よくもうまく作り上げたなと思う。もちろん、彼女がエレファントあるという伏線も、台詞の中にきちんと入っていたなということも思い出させる。

    それにしても、「カルタゴ」に「エレファント」という名称、さらに対する敵国に「スキピオ」という命名は、モロなのだが、悪くはない。「カルタゴ・ノウァ」なんて店名までも。これで、元軍の偉い人だったナイルが「ハンニバル」だったらやり過ぎなのだが(笑)。

    「マックスウエルの悪魔」という敵国の不滅の部隊名もなかなか。なるほどその部隊はその名のとおり、破壊と混乱から静止と死をもたらすことで、エントロピーを減少させるのかもしれない。……なんてね(笑)。

    人の感情、この場合、主に「恋愛感情」は、エネルギー法則のように「総量は変化しない」わけではないし、「流れが一方向」というわけでもない。
    だから、いろいろと面倒なこともあるし、面白いんだろうな、と。

    カルタゴの市民はスキピオ軍に蹂躙されてしまうらしい。スビキオ軍総攻撃の前日までも「大丈夫じゃないか」という確証のない安心感に包まれているカルタゴの人々。さらに市民を威勢良く鼓舞しながらも、結局は見捨てていった市長という図式は、どこかの国を思い起こさせる。

    今回は、アマヤドリっぽい、例の「ひょっとこフォーメーション」と、私が勝手に呼んでいる群舞のようなものがなかった。近しい動き、身のこなしはあるにはあったが。4人だから無理っぽいのだが、もう少し観たかったような気がする。

    また、数回前ぐらいから獲得した「ユーモア」も、きちんと入ってくる。不発っぽいところもあったが、全体的にはギスギスしがちなストーリーを和らげていた。

    これからアマヤドリは、この会場を拠点とし、定期的に公演を行うという。さらに、劇団としてのレパートリーを育てていくという目論みもあるようだ。
    この展開はとても興味深い。
    新作をバンバンやるのではなく、レパートリーを手に入れ、役者や演出の足腰を鍛えるということにもなろう。
    今回の公演は、その第一歩として成功したと言っていいのではないだろうか(まだ残りの2本は観てないけど)。少なくとも『うそつき』はレパートリーとしての強度はあるような気がする。
    さらに、岸田國士の作品のように、古典的ともいえる作品にチャレンジして、アマヤドリらしさを見せていくであろうことにも意味があると思う。
    例えば、そうした古典的な作品をアマヤドリの本公演にかけることだって考えられるわけだからだ。

    これからも目が話せない劇団だ。

    ……どうでもいいことだけど、ナイルは突っ込み体質なのだろう。しきりに突っ込んで、さらに突っ込まないで笑わせる。

    もうひとつどうでもいいことだけど、港の新聞=サンケイ、砂漠の新聞=アサヒ……かな(笑)。

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    2013/06/29 07:43

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