未確認の詩-ウタ- 公演情報 ライオン・パーマ「未確認の詩-ウタ-」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    子どもの駄々ではない
    “ショートコントのようなシーンを積み上げて、一つの作品に仕上げる作風”
    だとホームページにもあるが、まさにそう。
    軽い笑いネタ満載のエピソードがいくつも展開して
    最後どこに行きつくのかと思っていると
    何だよ、えらく泣いちゃったじゃないの。
    じーんとくるようないい台詞言わせるんだもの。

    ネタバレBOX

    冒頭の野球場のシーンが秀逸。
    これでいきなりぐっとつかまれる。
    大ファンだった選手の引退試合で、裕幸はその選手のホームランボールをゲットする。
    大喜びする裕幸、そのシーンを回想して語るこずえ。

    「未確認飛行通販」のオフィスでは今日も
    人々の願いを叶えるべきか却下するべきかについて、碇指令が判定を下している。
    もし叶えば最高のタイミングで願いは実現されるが、
    碇指令が「子どもの駄々に付き合っている暇はない」と言えば、それは却下だ。

    そしてこのあと、人々の様々な願いが描かれる。
    ダム建設をめぐって狼の存在を証明しなければならない村の人々、
    行列を作りたいラーメン屋のけなげな奥さん、
    これからカジノ摘発に臨む刑事たちの打ち合わせ風景、
    母親の誕生日に一番望む物をあげたいと願う家族等々…。

    刑事たちの短パン論争とかエヴァンゲリオンなど
    ちょっと懐かし系のネタがえらく楽しい。
    早口の台詞が滑って感情が浅くなったのがちょっと残念。
    SFものや刑事ものは、単語や説明を聞き逃すとストーリーが途切れてしまうので。

    最後に、全てのエピソードは恋人を亡くして精神を病んだ
    こずえの小説であることが明かされる。

    「今あるものが何も救ってくれないなら、
    未確認とされる未知の力を信じたっていいじゃない」

    というこずえの叫びが悲痛で、彼女の心の痛みが伝わってくる。
    未確認飛行通販を生み出して自分で自分を救うしかなかったこずえに
    もう一度あの野球場のシーンを録画したビデオが再生される。
    実はホームランボールをゲットしたのは裕幸ではなく
    隣のサラリーマンだったのだが、そこには自分のことのように喜んでいる裕幸がいた。

    そして裕幸が叫ぶ。
    「僕の台詞は僕が喋っているんじゃない
    君が僕に言わせたい事を、喋ってるんだ」

    これが泣かせるんだなあ。
    私たちはみんな、“言って欲しいこと”を胸に会話している。
    期待通りの言葉が返ってくれば嬉しいし安心する、幸せな気持ちになる。
    だがそうでなければ怒ったり悲しんだり落胆したりする。
    喧嘩も誤解も憎しみも、みんなそこから発生するような気がする。
    絶望のあまり裕幸を自分の中で理想通りに創り上げてしまったこずえが哀しい。

    コントが徹底していることと、役者陣が達者なので成功しているのだと思う。
    それを重ねて最後にあの台詞だから、孤独や哀しみが際立って思わず涙がこぼれる。

    裕幸役の草野智之さん、短パンの話をしても泣かせる台詞を言っても
    台詞に説得力があってとても魅力的。

    母の誕生日を祝い、5人の娘たちが西城秀樹の「YMCA」の替え歌で
    「♪かあさん、かあさん…♪」と歌うのが素晴らしく、聴き惚れてしまった。

    結局こずえは裕幸の真の笑顔に気付いたわけだし
    もしかして未確認飛行通販で願いが叶ったんじゃない?
    今ある物が救ってくれない時代に、未確認飛行通販ってすごくいい発想。
    あの碇指令が判定を下すのはちょっと不安だけど。

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    2013/05/21 03:18

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