初雪の味 公演情報 青☆組「初雪の味」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    2バージョンを一日で
    それぞれのバージョンの骨組みは
    ほとんど同じだったのですが、
    細かい違いの面白さに加えて
    2バージョンを織り上げる
    手法の違いのようなものも感じて。

    それぞれの舞台の秀逸に加えて、
    二つの語り口の異なりを楽しむ面白さもありました。

    ネタバレBOX

    (鎌倉Version)、

    冒頭からとても自然な空気の密度が舞台にあって、
    少しずつ、
    仕付け糸がほどけるように場のシチュエーションが現れ
    色がゆっくりと解けていきます。
    toiや中野成樹+フランケンズが独自のタイトルで上演した、
    「long christmas dinner」の如きシームレスで定点観測にも思える
    時間の繋ぎと
    そのなかでぶれずに貫かれる
    役者たちの安定したキャラクターの作りこみが
    変わらないトーンに潜む変化を紡ぎ、
    繊細にロールたちの時を染めていく。
    幾色にも移ろう質感にキャラクターたちの姿を織り込んで
    場に満たされた空気は、
    ウィットもありつつほろ苦く、
    やがて彼ら自身の歩みを削ぎ出して
    そのままに過ぎ行く時の質感をさらに際立たせて。

    やがて場は記憶や想いにまで昇華し、
    ラストシーンの今には、
    その場所を道標のように過ごした彼らへの俯瞰が生まれて。
    ゆっくりと深く浸潤されたことでした。

    (会津編)
    鎌倉編に続けて観劇。
    設定された場所の違いからアレンジされた部分があったり
    言葉(方言)も現地のものに作りこまれてはいるのですが、
    基本的には同じ骨格を持った戯曲でありながら、
    なによりも物語の訪れ方が異なっていて
    飽きることなどまったくなく
    舞台に取り込まれてしまいました。

    冒頭からキャラクターの色がくっきりと舞台に置かれている感じがして
    描きこまれたロール達にも
    良い意味でのばらつきがあり、
    組み上がっていくその部
    屋の時間の少しざらついた肌触りがあって。
    でもその質感が次第に場の実存感となり。
    その空気の中に再びロール達が纏った時の流れが浮かび
    抱いた想いがしっかりと映えて・・・。
    一人ずつのキャラクターの心情に深く心を奪われる。

    なんだろ、
    二つの舞台、
    醸される場とキャラクターの姿の重なりの順序が異なっていて、
    でも、それを続けて観ると、
    作品毎に描き出される
    人が歩み、揺らぎ、時を重ね、さらに歩んでいく姿に加えて、
    異なる語り口から戯曲のコアに不思議な立体感が生まれて、
    深く鮮やかに残るのです。
    同じロールを演じる役者たちのキャラクターの貫きも実に秀逸。
    観る側にとってひとつのキャラクターとしてぶれずに置かれて、
    一つの舞台を支えるにとどまらず
    それぞれの舞台を上手く結びつけてくれる。
    互いに、其々の描き出す世界に別の視座を与えてくれる感じがあって
    醸し出される新たな奥行きが、
    違和感とならず作品が内包する豊かさを
    さらに新しい印象へと引きだしてくれて。

    いたずらに重いわけでもなく、
    寧ろ淡々とやってくる幾つもの大晦日の風景描写なのですが、
    もれなく手練れの役者たちからやってくる
    その重なりの先のロール達の心風景は
    除夜の鐘や汽笛を聞くたびに
    ふっと心に蘇るような気がします。

    二人の異なる演出での舞台の上演という企ても功を奏して・・。
    役者たちの演技にどっぷりと浸されて
    とても心に残る今年の観劇はじめになりました。

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    2013/01/04 07:07

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