見渡すかぎりの卑怯者 公演情報 ジェットラグ「見渡すかぎりの卑怯者」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    普通に(正しく)生きるとは
    物語が動き出す中盤以降は、まさにタイトルに合ったテーマが語られ、ただただ圧倒、ただただ納得、ただし序盤は我慢が必要だったな、というのが個人的な感想です。僕は最後の台詞までオチがわからなかったので、序盤の一定の事実が伏せられたままの物語は疑問が多く素直に入っていけませんでした。観劇後の感想としてはテーマとエンタメ感が絶妙にうまい!でも共感の多いテーマで、とても豊かな演技で魅了された役者さんばかりだった公演だけに、作演の古川さんが敢えて一歩踏み込まずに留めているであろうテーマのその先が見たいなぁ、などと勝手に思ってしまいました。HPの室井さんや又吉さんとの対談も刺激的だったし、創り手の思いをもっともっと垣間見たかったなぁ。

    ネタバレBOX

    物語序盤に医師が口にするキチガイ、って言葉は便利だ。そう言って枠にはめて型通りのやり方ならば対応出来る。逆に言えば、枠にはめないと人の精神、脳の構造なんてわからない事だらけだ。劇中「富士山」を例に正常と異常の違いを説明した場所は非常にわかりやすいなと思った。人の正常と異常の境目のいかに曖昧なことか。

    劇の中盤、登場人物の権田と坂東が客席を見ながら発される(それは登場人物の主観的には世間一般に向けての視線だが)「卑怯者」も、最初と最後で同じシーンが繰り返され、最初は敢えて無声でわからなかった台詞の正体が「卑怯者」であった構造も、そこには自分を取り巻く周囲への「承認願望」が露呈されてるなぁと思う。この2つのシーンには非常にゾッとされるし、驚きも大きい。まさに見せ場だなぁと思う。ただ踏み込んで欲しいなと思うのは。私自身の身近にも心療内科や精神科に掛かってる人はたくさんいて、今やメンタルヘルスは日常的だ。昔の精神科に掛かる奴は狂ってる、一家の恥、みたいな風潮に比べれば、明らかにメンタルヘルスへのハードルは下がってる。でも、偏見は依然としてあるし、何より薬に頼っても、カウンセリングで勇気付けられても、最終的に自分自身を克服するのは自分自身だということだ。物語の面白さとしての、誰が異常で、誰が正常かわからない構造はエンタメとして非常に長けているし楽しく見れたけれど、現実に大なり小なりメンタルで苦しんでいる人への救いにはならないだろうなぁと感じてそこは残念だと思いました。

    0

    2012/12/17 00:26

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大