雑音 公演情報 オイスターズ「雑音」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    なんだろ、この感じ…。
    うまく言えないけど、ハマった。
    思わずハマってしまった90分。

    これは不条理というかSFだ。
    たとえると、これは、オフビートな筒井康隆的な、アレ的な、そんなやつではないか、と感じた90分でもあった。

    ネタバレBOX

    男が友人を呼び出すところから物語は始まる。
    呼び出した男は、自分の家の天井にネズミのようなものがいるという話を始める。
    呼び出された男は、仕事を抜けてきているので、よほどの用だと思って来ているのだが、男の話はなかなか前に進まず、イラついてしまう。
    そして、「で、結果は?」と話の結末を思わず催促してしまう。
    呼び出した男は、順を追って話したいので待ってくれと言い、その天井裏を撮った写真を見せると言い出す。
    そして、デジカメの写真を見せようとするのだが、天井裏の写真を見せないで、なぜか海の写真を見せるのだった。その海の写真にはピースをする女性の姿があった。

    ここから思わぬ方向に話は転がり出す。
    とにかく、緩く不条理と言うか、オフビートというか、ズレてく感覚というか、困ったちゃんと言うか、投げっぱなしと言うか、巻き込まれるというか、人も時間も空間もぐちゃぐゃになっていく。
    「王国」だとか「墓地」だとか「怖い話」だとか「究極の親子丼」だとか「イオン」だとか「韓国料理」だとか「名古屋城大学」だとか、そんな頭に残るコトバがバンバン飛び交う。
    中での、なんだろ、この感じ。
    うまく言えないもどかしさがある。
    初めて出会うというか、そんな感じな味わい。

    独特の手触りで、変な感じがさらりとしながらも、しつこく進む。
    どこに向かっているのか、まったくわからない。
    不思議な味わい。
    と、言っても、不条理のオンパレードということではなく、スパゲッティにあんこをかけてしまうぐらいの、名古屋テイストというか、八丁味噌と言うか、喫茶店のモーニングセットの豪華さというか、まさに「おまえだ!」なのである。

    不条理だとかメタとかいうのが野暮になってくるぐらいに、変な感じ。
    どこにもたどり着かないし、登場人物たちが何を目指しているのかさえわからない。
    あひるなんちゃらが不条理になったら、いや、あひるなんちゃらは、ある意味、もの凄い不条理合戦だけど、ま、とにかくあえて言えば、そんな印象で、「おまえだ!」なのである。

    そんな空気感があっての、笑いっぱなしだったのだ。
    客席全体が大笑いしていたかどうかは知らないけれど、私の世界では、私は大笑いしていた。

    これは不条理というかSFだ。オフビートな筒井康隆的なアレである。主人公の「おれ」が語る話が、そのまま展開していくというような、ご都合主義的で、細部は適当すぎな世界が現れてくる。タクシーのくだりとか、座席のことや諸々がテキトーなのは、話の中心である男にとってどうでもいいことだからだ。

    お話の中に人を巻き込んでいくという構造は、ないわけでもないのだが、渦中にいる、呼び出された男という冷静な視線が、また変な効果を生んでいると言っていいだろう。どこからどこまでが「あっち側」で「こっち側」はどこだ、という線引きも曖昧。

    お話の中に人を巻き込んでいく様は、まるでミキサーがいろんなものを巻き込んで、ドロドロにしていくという地獄絵図のようだ。ただし、地獄絵図と言っても、極々ライトな地獄絵図で、誰もそれほどは困ってない。ときどき現れる、呼び出した男の、女性の同僚(あーまどろっこしい!)だけが、そのドロドロの外にいて面白がっているというのもいい。

    そういう構造の面白さがここにはある。
    それを、あっさり見せてしまうことの凄さがある。 

    もの凄く変な感じ。
    が、いい。

    個人的には「ど」がつくほどのど真ん中ストレートで、やられた! なのだ。
    1発で気に入った。すでに次回の東京公演も心待ちにしている。

    もはや役者がどうこう、ということではないな、これは。

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    2011/09/25 08:37

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