おどくみ 公演情報 新国立劇場「おどくみ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    「天皇制」を支える小さな「天皇制」−−まさに昭和が終わらんとする時代に、家族内の終わらない葛藤
    ストレートプレイとしての完成度が高い。
    役者たちのテンポのいいやり取りに魅了させられた。
    2時間なのに「濃い」。
    長いとかそういった時間感覚では表せない時間が流れている。

    ネタバレBOX

    面白い舞台というのは、脚本・演出・役者・舞台装置等々のバランスが良いものである、ということに今さらながら気づかされる。

    登場人物のキャラクターがとてもいい。
    「いかにも」「いそう」な人たちが「いかにも」「ありそう」で「言いそう」なことのオンパレード。その俗っぽさがたまらない。
    たぶん、キャラクターが役者の身体にぴったりとしているので、そう感じてしまうのだろう。キャラ押しすぎる感じもあるにはあるけど。
    もちろん、家族や親戚などの関係性など、ややステレオタイプにしたことで、観客の没入度が高まったのだとは思うのだが。
    そういうところも「うまい」と言わざるを得ない。

    弁当屋や学習院大学など、青木豪さんの実際の体験が活きているようでもある。

    ナイーヴなテーマを扱うのだが、それへのアプローチはやや直截すぎるかもしれない。
    「天皇制」「天皇」について語られ、キワドイ台詞が飛び交う(テレビサイズの自主規制に慣らされてしまった耳なので)。そのキワドさは、親しみから来るモノなのではあるのだが。

    しかし、「天皇制」というものは、当たり前だけど、「小さな家庭の天皇制」すなわち「家長制度」が支えている。
    それは、どちらがどちらを支えているのかは、今やわからないのだが、精神の根底にはそういったものが流れていた、ということなのだ。
    「家長制度」が崩れつつある現代においての「天皇制」はその「象徴」であり、今も続く、一種「アイドル」的なとらえ方にもつながっていく。

    「家」「家族」を長男たる自分が支えるのが当然と思っている弁当屋の主人と、それに耐えきれない妻と子どもたち。
    まさに象徴たる昭和が終わらんとする時代に、昭和を引きずる、家族内の終わらない葛藤が続く。

    弁当屋の息子は、天皇暗殺の映画を撮り上げることはできず、どこかで断ち切りたいと思っている、「家」との関係もそのままで、結局そうした見えない何がつながっていることを示唆しているような物語だったと思う。

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    2011/08/18 07:44

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