チャイムが鳴り終わるとき 公演情報 オーストラ・マコンドー「チャイムが鳴り終わるとき」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    長くて重いが、充実した見事な内容
    すでに多くのレビューが投稿され、意外とそれらの点数は高くないが、
    もしかしたら私は「年間ランキング1位かも?」くらいに感じました。
    この日は仕事とその他で昼間から外を歩いていましたが、今年一番かも
    しれない暑さで、夜吉祥寺に着いたときは、相当疲れていました。
    そして、終演21:50の掲示を見て、一層がっくり。
    なにしろ横浜まで帰るのは時間もかかるので。
    しかし、観終わった後は、満足感で、
    そういう気持ちは吹き飛んでおりました。

    会場に入ると、ステージ上には学校で使われる椅子が並べられていて、
    これだけでも「ああ、今日は学校ものなのだな」と分かる。
    そして、ステージの両脇には、やはり学校ものの椅子がいくつも不揃いに吊り下げられている。オブジェを観るようでもあり、また、風によって多少動くのでモビール作品を観るようでもある。

    ストーリーは、ここにもすでに書かれている通り、同窓会が開かれる中で過去(小学生時代)が回想され、初めに思い出されえる楽しい思い出のみならず、いじめが残酷な結果を生んだことまで想起させられる。
    話の主たる流れとして、先生と子供達の出来事があるのだが、
    この部分についても「小学生時代」と「同窓会」とが
    交互にあらわれる手法である上に、
    さらに副次的な話として、転校生と、
    その病気入院中のお母さんの病室内のシーンがある。

    こう書くと、複雑な構成の話のように感じられるかもしれないが、場面転換ははっきり分かるように作られているので、
    観ている分にはある意味自然に進行していく。
    そして、音楽はギター1本の生演奏で、ある時は優しいメロディーを歌い、
    またある時には、激しい興奮を掻き立てるなど、大変効果的であった。
    もちろん、演奏が素晴らしかったことは言うまでもない。

    (以下ネタバレだが、これから観る方はネタを知らないで
    鑑賞されることを強くお薦めする。)

    ネタバレBOX

    (すでに他の方も詳しく書かれていますが、私も合間を見てコツコツ書いてきたので、一応そのまま載せてしまいます。)

    小6の教室に、新しい担任が登場する。若い男性教師で、教え方も上手く、
    子供達の人気も抜群!
    しかし、前任の女性先生が産休にしては交代が早いことや、後任のこの教師も、前任校を教えない……など、話に影が落とされる。

    さて、このクラスに、児童の1人に大人びた美少女がいた。
    彼女は、はじめこそ、他の子供たちがこの先生をもてはやすのとは一線を画していたが、ある時、遅くまで教室に残っていたところ、先生に「校舎の見回りをするんだけど、一緒に行こう」と言われ、2人で校舎を回り、そして普段は入れない屋上で美しい夕焼けを観る……。
    他の女の子同様、この少女もついに淡い恋心を抱く。
    そして、自分は先生にとっても特別な存在であるんだ、と思い込む。

    ところが、ある時、この少女は、置き忘れてあった先生の日記に気が付き、
    それを読んでしまう。
    そして、明るく楽しい、そしてある時は親切な人気者先生の言動は、
    計算ずくのもので、すべてが事前に「意図され」行われていたことを
    知ってしまう。
    そして、自分に対して、先生の「特別の想い」も無いことも……。

    それを知った少女は、少女なりのショックを受け、
    そして、先生に「小さな報復」を始める。
    日記が読まれたということを、先生にだけ分かり、しかし、
    他の子供には分からないよう、チクチクと刺すようなことをやり始める。
    それに対して、先生は一度は自信喪失するが、夏休みを挟むと、
    今度は少女への復讐に転じる。
    怪我をした少女に、さらに怪我がひどくなるような指図を……。
    予想通り、怪我がひどくなった少女は大泣きし、教師は反省……
    しかし、これがきっかけで、この二人のわだかまりは一応解消する。

    ところが、またしても、別の悪ガキが「先生の手帳」を見つけ、
    そして読んでしまう。
    しかも今度は、少女のような「先生にだけ分かる」方法でなく、
    クラス全員ではやし立て、先生を徹底的にからかう。
    その結果、先生は退職に……。

    以上が中心の話であるが、
    これに、転校生が病室の母を見舞うシーンが交錯する。

    この転校生は学年も1~2年低く見られるほどの幼く見える少女で、
    はじめは何気ない、彼女と、その母、そして主治医だけのシーン。
    母は話もできず、記憶も失っているようだが、母の魂に伝わることを信じ、
    母に学校であったこと、そして時々いじめからかばってくれる例の美少女
    の体験を、時に、まるで自分の話のように母に語る。

    ところが、このシーンは次第に深刻なものになる。
    なんと、母の主治医が少女に性的いたずらを始めたのだ。
    一方、母も、一度無理やり授業参観日に出席したところ、
    他の生徒から幽霊呼ばわりされ、
    それが少女のいじめのさらなる原因にもなる。

    ある意味、母も、娘も追い詰められ、
    ついに、娘は自殺を暗に勧めるような言葉を放ち、
    その直後、母は学校の屋上から投身自殺する……。

    というような大変重い内容なのだが、
    やはり首吊り自殺(未遂)シーンがあった「ヒューマンエラー」に比べると、
    私はやや表現が柔らかいというか、生々しさは薄かった気もする。
    これは必ずしも悪い意味だけで言っているのではなく、
    表現の仕方が微妙に違うのかな?などと思っている。
    (ここは自分でももう少し考えてみます。)

    最後に、素晴らしい公演であったことを前提に、
    若干気になる点を2点だけ申したい。
    1 投身自殺のシーン、母の人形が落とされるわけだが、
    人間が意を決して、飛び込むというより、裏方さんが放り投げた、
    という落ち方だった。これは頂けない。
    2 すでに指摘が出ているとおり、性的いたずらを受けていた
    少女自身や加害者の医師について、
    本当は何らかの結末がほしいと思った。
    もちろん、上演時間等の考慮もあったのだろうが、「材料」をこれだけ提示されている以上、物足りなさが残った点は否めない。

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    2011/08/12 13:46

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