カモメの観てきた!クチコミ一覧

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天守物語

天守物語

少年社中

吉祥寺シアター(東京都)

2011/06/03 (金) ~ 2011/06/12 (日)公演終了

満足度★★★★★

少年社中を信じて!今こそ、多くの人と共に!
美しい!
あまりもの美しい世界観に、言葉を失いました。

舞台美術、照明、衣装、人物の心情に寄り添うように流れる音楽、
役者の声色、その一挙手一投足に込められる想い、役者同士の信頼。
全て、全てが、美しい!

慈しみ!
日本への、日本人一人ひとりへのまるで母のような愛情を感じて、
あの日以来、初めて心に硬く結んだ結び目をほどく気持ちになれました。

生きる!
一瞬一瞬を慈しむように舞台に生きる役者の方々の想いが、切々と伝わり、
その真剣さを思うと、今も涙が溢れてきます。

刻一刻!
舞台に紡ぎ出される命をかけたそれぞれの生き様に、
刻一刻新しい自分が生まれてくるような新鮮な思いがしました。


まるで劇団少年社中は、この年に『天守物語』を描き出すために生まれ、
これまでの道のりを歩んできたのでは、と思えるほど。

この作品は、日本人の心に空いてしまった空虚な穴の中に
今こそ、生命の息吹を吹き込んでくれることでしょう!

今だからこそ、
この過酷で残酷な現実に真向勝負をかけ、人間の「生きる」が問われている。

真に生きるとはどういうことか?
真に愛するとはどういうことか?
人間とは何なのか?
この大自然に秘められた真実とは何なのか?

痛みと苦しみを得ることを覚悟に、
その問いへの答えを求める、茨の道を少年社中と共に歩む。

今だからこそ、多くの日本人と、この辛く苦しい旅を共にしたいと思う。

一瞬一瞬を慈しむように歩む中、

必ず、生きる意欲が見つかるから。
必ず、生きる希望が見つかるから。

少年社中を信じて。



ドロシーの帰還

ドロシーの帰還

空想組曲

赤坂RED/THEATER(東京都)

2011/02/23 (水) ~ 2011/02/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

平和への帰還・・・ドロシーに学ぶ
 観劇から、既に3ヶ月。
 たくさんの感動をいただいた2週間後。日本は巨大地震と津波に襲われ、
それ以前とは全く異なる価値観への変更を余儀なくされることとなった。
 恐らく、多くの日本人が感じてはいるが、あまり口には出せないこと、
「日本のある時代はこれで幕を閉じた」それを飲み込む苦しい日々が、日本人の「今」なのだろうと感じている。
 
 そんな中、私はドロシーの苦悩が、そのまま現在の日本の苦悩になぞられるのではなかと、この頃感じるようになった。

 ただひたすらに、自分の世界を描き出し、人々(特に思春期の若者たち)に届ける作家活動に邁進していた高峰ドロシー。
 ところがある時、その作風の残虐性部分にのみ感化された少年が、事件を起こし自殺するという悲劇に遭遇する。世間は責任を作者ドロシーに向ける。

 読者の受け取り方までも、筆者は責任を持つべきか否か。ドロシーは悶々としながら、そして自分を責める父親と対立しながら、人知れず苦しみの日々を10年も過ごす。

 しかし、それぞれの夢に向かいもがき苦しみつつも前進を諦め無い若者たちとの出会いや、自分を20年来信じて支えてきた編集者の存在を深く想う中で、長い年月保留にし続けていた問題に結論を見出す。

 「自分が信じて創り上げた作品が読者に及ぼすあらゆる影響も含めて、自分は逃げることなく、真摯に受け止めていこう。例え、それが深い苦しみを伴うものでも、受け止めよう。苦しみを胸に秘めて、それでも自分の世界を描き続けよう。自分の作品を支えとして、必要としている読者がいる限り、自分は作家として生きる責任があるのだから。もう、引き返せない所まで、自分は歩んできたのだから。父親や編集者、そして読者の支えを得て。」
 
 このドロシーの苦悩と決意の道のりは、今回大災害のみならず、それによって引き起こされた原発事故と向き合う、現在の日本国民全員が歩むべきそれになぞられるのではなか?
 信じて進めてきた原子力発電の弱点。修復は絶望的な状況の中、国民は何を決意し、今後どう行動を起こすべきか、ドロシーは教えてくれてるように思った。
 
 そして、日本人は、今後どこにどのように帰還すべきか?
 世界人類が、平和と幸福への道のりへと帰還するために選択すべき行動とは? 

 私たちを叱ってくれた父なる地球の懐へ戻る資格を得るためには、この苦しみに耐えることは、日本人にとって、必須なのだろう。
 

『小手伸也のよくわかる古事記<1>』  第一回「イザナギとイザナミ」

『小手伸也のよくわかる古事記<1>』  第一回「イザナギとイザナミ」

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キッド・アイラック・アート・ホール(東京都)

2011/04/22 (金) ~ 2011/04/23 (土)公演終了

満足度★★★★★

神々はいつもすぐ側に・・・
日本人が古来大切にしてきた「日本の心」。

脈みゃくと伝えられてきたはずなのに、
いつの間にかどこかに置き忘れてしまったもの。
その一つひとつを、丁寧にそして笑いも交えて、生き生きと
語り聞かせてくださいました。

遠い過去の話とばかり思っていたら、
登場する神々があまりにも人間的なので、
いつもすぐ側にいてくれる、親しい知り合いのように
感じてしまいました。

インナーチャイルドの3方と古事記の世界を旅していたら、
何か大きな愛情に包まれて生きている自分を再確認するかのような、
あたたかい気持ちになりました。
そして、「自信をもって生きていこう!」そんな勇気もいただきました。

ありがとうございました。

また次回が楽しみです!

NUMBERS【全公演中止決定。いつか必ず再演を。】

NUMBERS【全公演中止決定。いつか必ず再演を。】

Sun-mallstudio produce

サンモールスタジオ(東京都)

2011/03/08 (火) ~ 2011/03/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

「確率」でははじき出せない人間達の「生き様」
「人生に偶然などない」

この言葉通り、
「確率」という数値に押し出された人間達の多様な「生き様」が、
地下室の限られた空間の中で、炸裂していた。

それは、まるで、自由を奪われた「花火」のようにも感じられ、

そこに交錯する音も光も、
まるで、
「完璧なるもの」を目指しながらも、
叶うことのない強烈なジレンマのようなものと、
締め付けられるような哀しさを残した。

「確率」をテーマに、
棲む世界も、色も表現手段も異なる4つの劇団が、
30分という限られた時間、そして、
同じ空間を使って描いた舞台。

表現者が異なれば、
「人間の生き様」というものは、こんなにも捉え方が多様なのか。

それぞれの「哲学」を提示されたようで、
4つの舞台をひとつに合わせてこそ、完成する世界観・・・

NUMBERS企画の魅力は、きっと観劇後の余韻の中で、
より深く、的確に理解されるように感じた。

非の打ち所の無い、「確率」という数値をたぐり寄せても得られぬものが、
人の純粋な「願い」がもたらす、
「運命」という幻影の中にこそ、存在する哀しさを知ることになった。


4つの劇団のそれぞれの俳優さんが、
ワクワクするほど自由で、存分に持てる魅力を発揮し、
驚愕の世界を惜しみなく表現されていたので、見応え充分だった。

中でも、DART’S『ブラインド・タッチ』の
長谷川太郎さん(少年社中・森の太郎)。

死の迫る緊迫した状況に置かれ、混乱する人間の心理を、
現実に生きる人間以上に、鮮明に取り出し、
観客の目前に突き出して見せた、表現。

まさに異常と言えるこの状況を生き抜く人間達を強く牽引し
観る者をグイグイと引き込む全力技。

見事でした。
素晴らしかったです。








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