セントの観てきた!クチコミ一覧

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はこがみ

はこがみ

ハコボレ

SPACE9(大阪府)

2019/05/24 (金) ~ 2019/05/26 (日)公演終了

満足度★★★★★

今までの劇と180度違うような熱を帯びた力作だ。とにかく架空とはいえ、人間を創造したといわれる神の存在を、逆転させて、人間が神を製作するという突飛なハナシなのであります。

そういえば、舞台の周囲、床、上部空間には古新聞紙が一面に漂っている、、。紙も神であり、紙一枚で神に仕立てられるという男のハナシである。

今までの劇とは違い、設定は、遠い虚構の国のおとぎ話のようでもあるが、決して寓話ではない。それほど前田の思い込みは強い。市井の、普通の人間が神として昇華するまでの不思議な話である。

切羽詰まったような閉塞感もそのうち感じられて、不気味な鐘の単一な音が観客の胸を締め付けてゆく。だんだん怖くなってきます。

いやあ、迫力十分でしたね。前田氏はそれまでの劇をイメチェンした感じでもあります。まさに熱を帯びておりました。

女子たちのギリシャ劇 アンティゴネ/うちの子は

女子たちのギリシャ劇 アンティゴネ/うちの子は

the nextage

in→dependent theatre 2nd(大阪府)

2019/05/16 (木) ~ 2019/05/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

たまにはこういうシリアスな翻訳劇もいいですね。しかもギリシャ悲劇を基本にしたアンティゴネときたら今までも何回も見たが、また見てしまうという好きな劇。そして今回は2本立てなんだ。こちらは子供と親を主題にした10篇の短編フランス劇。いやあ、これもすこぶるよかった。

学生劇らしいんだが、何人か、見知っている人もおり、この劇に出演している人は実力者ぞろいということがわかる。正直、彼らがここまで本格的にギリシャ悲劇を演じるとは思っていなかっただけに驚きの連続。難しくない元祖ソフォクレスの世界を垣間見せてくれる。いやあ、うなりますネ。

休憩後、フランスの家族劇。これがまた秀作ぞろい。日本の家庭とそれほど変わらない家族の在り方をじっくりと考えさせられます。特に、9編目の自分の息子の死に対面する母親の愛憎劇は鋭く、強く感銘す。

3時間の体力も神経も精神力も鍛えてくれる劇でしたが、彼らの若さをストレートにそのままいただきました。演劇ファンにとっては至福の時間。

慶應不思議草子

慶應不思議草子

真紅組

近鉄アート館(大阪府)

2019/05/10 (金) ~ 2019/05/12 (日)公演終了

満足度★★★★

総勢30人以上の出演者。時代は幕末。しかし今回の主役はなんとそんな時代の分かれ目に住んでいる猫たちであります。この猫たちから見た人間模様、時代が描かれる、、。

ということで、いつもより娯楽色が強くテーマ性が薄い気がした。常に鋭い人間描写を得意としてきた真紅組としてはたまにこういう軽妙・洒脱な作品もあるんだと納得。

ラストには「ええじゃないか、よいじゃないか、、、」の狂ったような踊りでこの京の明治維新を終わらせる。中岡慎太郎は出るも、一緒に殺害される坂本龍馬が名前だけの登場というのも面白い。

そして引き続き劇団員によるレビューが何曲も続く。何かファン感謝デーみたいでしたネ。たまにはこういうのもいい。

VARIETY

VARIETY

asobiiiino

STAGE+PLUS(大阪府)

2019/05/04 (土) ~ 2019/05/05 (日)公演終了

満足度★★★★★

中編3本。短編とは違うのでそれぞれじっくり見られる。最初は未来型、宇宙へとつないでくれるエレベーターの話。設定は面白いが、それほど新鮮味はなし。もっと斬新な展開が望み。ちょっとした小世界。

2編目はぐっと砕けて、誕生日パーティのお話。若い人だからできるシンプルなおふざけ。でも楽しい。ヤングだけの世界。

そして真打3話目。これはいいね。すごくいい。

ベランダ越しに語り合う漫画家の卵と官能小説家の女性。このベランダでの会話という設定がいい。お互い顔が見えずにだんだんと親しんでゆく過程が心地よい。愛なんだね。その二人にもしばし空白があり、二人は思いがけないところで邂逅する。

ここで時間が止まる。涙が出そう。まるで映画の一シーンだ。素晴らしい。これぞ愛の世界。今日の収穫。

箱庭の王様

箱庭の王様

フラワー劇場

ウイングフィールド(大阪府)

2019/04/23 (火) ~ 2019/04/25 (木)公演終了

満足度★★★★

簡単そうで結構難しい。ファンタジーっぽく作ってはいるが、内容は辛く、苦く、そして薄ら甘い。ストーリーというものはないようだ。一応、王様という存在はあるけれど、関係性が見えてこない。

ポエムの感じが強いかなと思い、目を瞑る。頭に響くセリフはいいフレーズで、美しい。

はっとして、目を開ける。目の前には演劇のうごめきがまさにあった、、。

なんといっても、川口ともさんと宮嶌秀彰氏が最高。ピタッと止まった時間の感覚と永遠。ほんと、ポエムだ。

『台風とうとう吹いた』

『台風とうとう吹いた』

演劇計画プラネットナンバー

OVAL THEATER & GALLERY (旧・ロクソドンタブラック)(大阪府)

2019/01/18 (金) ~ 2019/01/20 (日)公演終了

満足度★★★★★

知らない劇団だと思っていたら、結構見知っている役者さんがいる。みんな若いけれど、堂々としっかりしてる。かなり演劇数をこなしているはず。

子供時代からのホント、等身大の身近なことを描いていきます。小学生の役なんか、全然みんな自然で、彼らがいかに素直な心を持っているかが分かる。伝わってくる。変に力が入っていないのだ。

人を愛すること、人と話をすること、何でもない家族との会話・別れ。そうした当たり前の普通のことがじっくり丁寧に描かれてゆく。

だからラスト、主人公がもはや死んでしまった幼馴染みから手紙で愛を告げられた時、心が融解する。彼女の凍結していた心が蒸気する。僕は感動する。僕の心も溶ける。しばらく涙が止まらない。ここで幕。

やはり若い人たちの演技をじっくり見るのは究極の楽しみだ。彼らには未来がある。揺れる明日もある。悲しみも喜びもこれからどんどん受け止めてゆくことだろう。

いい舞台だった。

河童ライダー

河童ライダー

かしこしばい

ウイングフィールド(大阪府)

2019/01/06 (日) ~ 2019/01/07 (月)公演終了

満足度★★★★

私小説的な演劇です。今自分がどこにいるのか、自分とは何なのか。この自分は祖母の葬式にも出席しようとしない。机で、新たないつ公演できるかもわからない劇の台本を書いている。その彼の脳裏にみなぎり彷徨うものは、、。

映画でも演劇でもまず自分とは何か、という身近なテーマをまず問題にする。その基本的な代物が分からないと、自分をどこに持って行っていいか、何を書いていいのか不明瞭である。と僕は思っている。

だから、例えば映画ではフェリーニの「8・1/2」的な自己追及作品などが過去に名作を生み出してきた。本当に見事だ。その行為は芸術の深淵に辿り着くまず最初の第一歩だと僕は思っている。

だからというわけではないが、かしこしばいの2作目にこのテーマを持ってきたのは必然だと思う。そしてその目論見は成功していると思う。

この若い作家の喜び、苦悩、哀しみ、諦観を75分に描いている。それは観客に投影されるべき内容である。一般人も常に自分を追及しているからだ。主役の小林夢祈が熱演。彼は一体全体何歳なんだろう?その若いエネルギーにうらやましくもあり、拍手を送りたい。

『恭しき娼婦』

『恭しき娼婦』

「出口なし」プロジェクト

スペース コラリオン(旧カフェスロー大阪)(大阪府)

2018/12/15 (土) ~ 2018/12/16 (日)公演終了

満足度★★★★★

サルトルの演劇って初めてで、ちょっと気にしてはいたが、全然想像とは違い(サルトルと言えば実存主義・不条理というイメージ)、まともな翻訳劇といった感じが濃厚でした。ちゃんとストーリーがあり、題名通り娼婦とは言いながら、人間を深く見つめる女性の脳裏と彼女をとりまく現象が交差する秀逸な演劇です。

サルトルとアメリカ南部というイメージがなかなか僕の頭の中では醸成しなかったのだが、テネシー・ウイリアムズものとはだいぶ違うし、人間への確かな暖かいまっすぐなまなざしはやはりサルトルそのものであった。

一つ面白いと思ったのは、上院議員の息子が娼婦をただ利用するだけの存在だったのが、自分の存在において(愛を見たわけではないだろうが)彼女を人生の一部にしてしまうところであった。

こういうところにサルトルの人間への追及・分析は鋭く、たかが娼婦だなんて思って見ていると、とんだ間違いを犯してしまうのである。まさに彼女は「恭しき娼婦」なのであった。

狭い舞台に、肉太の脚本。イメージではないサルトルを見て、僕は満足して十三の街を闊歩するのであった。

タイムマチンだよ!〜かえってくるきないよ〜

タイムマチンだよ!〜かえってくるきないよ〜

0F-ゼロフレーム-

船場サザンシアター(大阪府)

2018/12/07 (金) ~ 2018/12/09 (日)公演終了

満足度★★★★★

題名から軽いSFファンタジーものかなと思っていたら、意外と輻輳し構成にテクが入っていて、ちゃんと見ていないとどんどん置いてけぼりになるようなまともで真面目な作品でした。お見それいたしました。

それぞれのエピソードが実は深くハートフルなので、もう1回見てみたい作品です。とはいえ、明日は予定があるしのう、、。9人の出演者、全員稽古も十分で見ごたえありました。才能のある劇団です。

808ダイエット(ハッピャクヤダイエット)

808ダイエット(ハッピャクヤダイエット)

極東退屈道場

AI・HALL(兵庫県)

2018/11/09 (金) ~ 2018/11/11 (日)公演終了

満足度★★★★

舞台の奥に大きく掲げられている大坂の808橋地図。ずっと思ってたんだけど、東が上にある。その架空線上には大阪城が。現代の地図とは随分感覚が違うが、当時は大阪城を東西に発展していたせいだろうか。

これに目をつけた林は西方浄土とミックスすることにより、不思議な大阪噺を見せてくれた。

林の作品は能との融合劇でも知られるように、奇想天外な宇宙的な構想に身近な話をくっつける。これがまたたまらないほど面白い。むずいようで、何だか楽しいのだ。

今回は宇宙的なものは影を潜め、大阪808橋の人間喜劇を基本づけのか、コミカルなんだけど、饒舌でもある。大衆版に徹したかのような林の変わり身である。

これにちょっと僕は驚くが、いつものリフレインもあり、まあ楽しめる。でも林の面白さはこんなものではないと思う。ランタイムもちょっと長かったから、女性3人のお話なんかも、少々饒舌に感じたところは林一流の余裕なのかもしれないですね。

アイホールの大きな舞台、そして橋を自在に動かす舞台づくりに彼のやる気を見る。次回がますます楽しみになった。

はこづめ

はこづめ

ハコボレ

ウイングフィールド(大阪府)

2018/11/02 (金) ~ 2018/11/04 (日)公演終了

満足度★★★★★

設定が遠い未来の話ではあるけれど、意味深の現代青春群像劇とも言える。一つの箱に3人が真実を隠しながら生活を送っている。しかし、その日々はいつまでも続くことはなかった、、。

ラスト近くの10分ぐらいから、怒涛のように今まで静かだった穏やかな川が激流に変貌する。もう彼らには時間も、青春も、かすかな希望も、そして未来さえなくなってゆく。その最後の時間を彼らはロックを演奏し、彼らが一体となって共有しながら、その時を迎えるのであった。

まるでこの10分間を描きたいがためにこの劇を作ったような、凝縮した密度の高い時間であった。そしてそのまま劇は終わってしまう。取り残された観客はどうしていいのか面食らっている珍しい観客席でした。

あの圧倒的なラストには僕も唖然となりました。

scene1「Heimat-ハイマート-」

scene1「Heimat-ハイマート-」

StarMachineProject

HEP HALL(大阪府)

2018/10/23 (火) ~ 2018/10/24 (水)公演終了

満足度★★★★

一体故郷はどこにあるんだろう。ふるさととはいったい何なんだろう。

詩劇というか、ポエムなんだろうなあ、コミカルでいて哀しくてやはりおかしい。ずっと故郷というひとつのテーマを追求している。

想像していた以上に映像はそれほど驚かせるものではなく、むしろおとなしめだ。俳優のクローズアップなどが多い。

バランスの取れた俳優の布陣で、劇は深く流麗に進行する。途中流れる「うさぎ追いしあのころ、、」がなかなかのシャウトで泣きそうになった。

ショウ ゴウ

ショウ ゴウ

劇団暇だけどステキ

HEP HALL(大阪府)

2018/10/05 (金) ~ 2018/10/08 (月)公演終了

満足度★★★★★

20周年公演ということですべて凝っている。まずHEPを使って、大がかりな大道具。迫力のある動き、20人を超える俳優陣にそれぞれ造形力の強い脚本で攻める。

子供時代と現代とをオーバーラップさせることにより人間の心の不変をノスタルジックに問う。これはうまい。20年の歳月が瞬時に色濃く示される。これほどの大人数の役柄ではあるが、ひとりひとり丁寧に描き込んでいるので、みんな主役のようでもある。

強いて言えばこの手法により、主役不在であるかのように思われてしまえるが、これも各劇団員への愛情と捉えることにより、その気持ちがじんわりと観客に伝わることとなる。優しい劇団である。

2時間、だれることなくこの劇はいよよ進みゆく。それぞれ人々は悩めるも、前に進んでゆくのだ。それはこのヒマステの今、を歩み出す道のりに違いない、、。

女と男のしゃば・ダバ・だぁ ~みんな夢の中~

女と男のしゃば・ダバ・だぁ ~みんな夢の中~

あみゅーず・とらいあんぐる

ウイングフィールド(大阪府)

2018/10/05 (金) ~ 2018/10/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

いつも秋が来るとアミューズを見て、ふと人生を感ずるのが習わしとなっている。今年は一月ほどそれが早い。けれど、まさしくいつものアミューズの黄昏人生劇だ。

いつも通り3話のオムニバス。第一話はなかなか大胆でしかも味わいも深く堪能する。亡くなった男と会話する家族たち、、。素敵な話である。

第2話は、意外と軽やかなセンスのある楽しげなるお話。結論も出すわけでなく通過劇であろう。

そしてそれは第3話へとつながれる。これだけの主題を30分で刻むのは大変だと思う。夢まぼろし、そして現実。重く、軽やかなエスプリの利いた人生劇である。アミューズ健在。来年もよろしく。もう待ち遠しい、、。

キラメキ~私はトビウオ、あなたは太陽~ 

キラメキ~私はトビウオ、あなたは太陽~ 

project真夏の太陽ガールズ

HEP HALL(大阪府)

2018/08/29 (水) ~ 2018/09/02 (日)公演終了

満足度★★★★

シンクロナイズで明日を目指す女性たちの物語です。話はクラブ活動なんかでよくあることかなと思ったが、次に丁寧に描いています。合間にはシンクロの実演もあり見て飽きさせない演出である。

笑う茶化師と事情女子

笑う茶化師と事情女子

匿名劇壇

in→dependent theatre 1st(大阪府)

2018/08/24 (金) ~ 2018/08/27 (月)公演終了

満足度★★★★★

原点に戻ったのであろうか、小さなin→dependent1ST劇場での上演だ。Hepなんかでも十分通用する劇団になってしまった、福谷率いるこの美女イケメン揃いの関西を代表する待望の新作である。

客演がないからいつもトーンが整っている。だから完成度も高い。ホンはシニカル十分で、うまい面白い哀しい恐い。言うことがない。

冒頭、福谷の斜め前に東がストーンと立っている。彫像のように。まるで人間ではないがごとく、、。これが最後に効いてくるんだよなあ。うまい!

松原の役柄を見てあっと思ったんだが、この役っていつもなら東の役っぽい。今回は東と松原をとっ変えた感もする。うまい配役構成。

8人の俳優、全員魅せるんだあよなあ。練習が十分だけでなく、理解力が早いのかな。これが客演なしの演劇の強みかも。

最後には茶化師という結びつきで8人が揃うことになる。演劇冥利。けれど思ったより、茶化師が生きて来てないなあとも思った。思い付きはいいけどね。

あっという間の85分。時間もテンポも演技も演出もすべてよしの匿名。さてこれからどこへ向かうのか、、。

マナナン・マクリルの羅針盤 2018

マナナン・マクリルの羅針盤 2018

劇団ショウダウン

船場サザンシアター(大阪府)

2018/07/28 (土) ~ 2018/07/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

林遊眠さんの2時間を超える一人舞台。ト書きまで自分でやってのけるので、ストーリーが分かり易い。
それにしても一人で10人以上、それもほとんど男の荒くれ男を演じ切るのだから熱演というより、猛演です。その彼女、まだうら若き美しい女性なんです。
話は大航海時代、カリブの海、海賊の話です。怖いし楽しいし、夢やロマンがいっぱい。けれどしっかり確かな人生を見せてくれる。そこが素敵です。ラストなんかちょっとした映画を見てるようで、ジーンとくる。
一人芝居あまり好きでははなかったんだけど、そんなものどこかへ行ってしまったよ~~ん。充実した演劇日和。台風一過だったけど、心はルンルン。

ほたえる人ら

ほたえる人ら

ばぶれるりぐる

in→dependent theatre 1st(大阪府)

2018/07/13 (金) ~ 2018/07/16 (月)公演終了

満足度★★★★★

旗揚げ公演だという。しかし、なんのなんの脚本がしっかりしてるし、うまい。そして何気ないとある田舎の出来事が、現代社会の光と闇を明確に浮き彫りにしている。雇われ区長が一人籠もる辺りから俄然面白くなる。ユニークである。

いやあ、観客をわしづかみにするテクはかなりの才能があると見た。モモコさん、見た目普通の可愛い女性としか見えない人だが、人は見かけに寄らないものですね。

俳優陣もみんな的確に演技をこなしている。特に得田晃子さん、籠もっているときのセリフの掛け合いがタイミング的に難しいと思うが、見事こなしている。

みんな演劇が好きなんだろうなあ、そんな意気込みがすごく感じられた。これからも伸びてゆく劇団だと思う。こういう劇を見た日はルンルン気分になります。真夏で37度の日でしたが、そんなの忘れてしまいました。

最後の晩餐

最後の晩餐

ThE 2VS2

in→dependent theatre 1st(大阪府)

2018/06/29 (金) ~ 2018/07/01 (日)公演終了

満足度★★★★

12年の長きにわたり活躍していた劇団の解散公演である。20歳過ぎで始めた彼らもももう30歳半ば。色々考えたんだなろうなあ。このまま演劇を続けるにも一大決心がいる年齢である。青春の時は過ぎ、今からは何をするにも責任が重くのしかかる年齢である。

劇は6編のコメディ劇。というより寸劇。下ネタもありめちゃ面白い。千秋楽なのに子供がやけに多い。大人と同じように笑ってる。内容がそれほど分からなくても、年齢にかかわらず本能的に面白いものは面白いのだろう。彼らと観客との一体感が素敵だ。

そしていよいよ出し物が過ぎて行き、最後のアドリブ劇。一瞬が劇を決めてしまう難しい技術と力量が要求される。しかし、何とか彼らは切り抜ける。

最後なので、一人一人挨拶がある。実力はあるけれど、興行的には駄目だった、と。小劇場で、興行的に常に安定している劇団なんか、一握りしかないような気もする。ましてや、演劇だけで食べていける劇団があるのだろうか、、。

劇そのものは面白かったけれど、なんだか演劇をただ追っている僕のような一観客は、ひょっとしたら彼らにたいして何かの責めをかけていたのだろうか。

僕らは彼らの演劇から明日への活力を得る。彼らも発表する喜びなどを得、さらに明日へと向かっていると信じてた。

でも現実は、僕らが彼らをただ縛っていたのかもしれなかった。そうだとしたら彼らに申し訳ないなあ、、。考えさせられる解散公演だった。

となりのところ

となりのところ

空晴

HEP HALL(大阪府)

2018/06/07 (木) ~ 2018/06/12 (火)公演終了

満足度★★★★★

上演時間いつもきっちりと90分。これ、映画もそうですが、人間の見られる時間の基本タイムです。そしていつも人間の、人と人の機微を忘れ去られた時を遡るかのようにじっくり見せてくれる空晴ワールド。いつもいつも感心して見てしまいます。

今回はいつもの勘違いからくる挿話が淡く、いつもほど強調していない。さらりと描いて、爆笑には持っていかない工夫がされていると思った。前作を経て、山を越えたのか、ちょっと方向を変えた感がする。

それが真実だったら、それは正解だと思う。いつまでもいつもの空晴でいる必要はなく、空晴一同も観客もそれぞれ時間とともに変わっていくのだから、、。

3軒の隣近所の話だが、この小さな町に20数年ぶりに帰って来るもの(上瀧昇一郎)、夜逃げ同然出ていくもの(孫高宏・駒野侃),娘はいるもののなかなか会えない元教師(山本ふじこ)、そして訳あり中年新婚者2人(絶妙岡部尚子・小池裕之)の家族を通して、自分と隣という他人との関係を庭という親近感のあるものを通して考えてゆく、、。

ひょっとしてそこに仕切りは要るのか要らないのか。

岡部の脚本は最近特にじっくり描いた女流小説風である。きめ細かく、劇を見ている時より、終わってからその余韻を辿っていくと、空白の間というものを考えさせてくれる稀有な作家である。そう、文学的なのである。

相変わらず今回も素晴らしいと思う。彼女はどこまで進歩してゆくのか、、。

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