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露出狂

露出狂

柿喰う客

王子小劇場(東京都)

2010/05/19 (水) ~ 2010/05/31 (月)公演終了

満足度★★

冗長で退屈(劇団初見の意見です)
最近のアゴラ劇場等で行われる芝居に物足りなさを感じていたので「反・現代口語演劇」の旗手という文句に誘われ期待して観ましたが、なぜか同じような物足りなさを感じました。それは演劇その他の手法を上手く使っているように見えて、実はそれらの手法によりかかっているところです。

ネタバレBOX

全体を貫いていたテーマは所有/非所有(=束縛/非束縛)だったと思う。
・チームワーク(全員を束縛)を優先するか
・私情(好きな人を束縛)を優先するか
・結果(自分を束縛)を優先するか
もちろんサッカーの試合の結果は芝居であっ気なく描かれる通り、余り重要ではないし上記に上げた三つの束縛のうちどれが良いとか悪いとか言う問題でもない。14人の公私入り乱れた、不毛ともいえる束縛のし合いが、この芝居の見せ所であった。
そこには、あえて手放すことで束縛したり、無自覚に束縛をしたり、わざわざ束縛されたり、と多様な束縛/非束縛の関係が蠢いていた。しかしその関係は何事もなかったかのように卒業し別れてしまうものでもある。友情(?)という束縛の面倒臭さみたいなものをありのままにカラフルに描いていた。

ところで
この芝居の特徴として、「事前にルールが明示される」というのがある。
・話は三年前に遡る。(三年分の歴史を追うという明示)
・アベックを作ってチーム力をつけよう。
・3期生の間で些細な出来事があった。
などといったモノローグで事前にこれから行われることを説明する。
あるいは台詞、及び演技(どこかのアニメや漫画から(意識的)に集めたもの=つまり事前に観客が知っている=ステレオタイプ化)、もそうであるし、全員必ず舞台上にいる、というルールも含めて事前に観客に明示されている。
そのように隠し事ができないルールを設定し、さらにそこで束縛の関係を描く。それは役者へのプレッシャー(=束縛)である。そこまで追い込んだ末にでてくる役者の衝動、ルールからはみ出た(「露出」した)不定形なもの、それを演出家は期待していたのだと思う。それはこのサッカー部の物語内で束縛が反転し、予想を超えたチームワークとして機能することとパラレルの関係にある。

しかし私にはそれが見受けられなかった。ただ冗長で退屈で正直眠気すら感じてしまった。
なぜか。それは閉じているからだ。これはルールを厳密にしたからでは決してない。
ルールはたくさんあるが、その方向性が似ていて無理がないのだ。だからこの物語(作品・演技)が思いもよらないところで結びついたり、あるいはぶつかり合い破綻したりというところがなく、つつがなく進行してしまっている。その一見、過激な演出も多視点的な舞台美術も実にお行儀よく狭いルールに収まっている。確かに、女優陣は声を張り上げ、迫真の演技で舞台を駆けまわっていた。それがしかし空回りしていたのはルールで縛っていたというより単純に芝居が整理されていただけだからだ。

ここまで高評価のレビューが多いので、こんなこと言うのもおこがましいが
ここの演出家は非常に器用で自分なりのテーマを持ち(?)、外部への進出も積極的でかつ多作である。
しかしもう少しそのスピードを緩め、じっくりと自分の作品・演出に「外部」(客観性ではない)を持ち込むやり方を考えるといいのではないだろうか。
偉そうにすみません。是非、反論・コメントして下さい。

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