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『天才バカボンのパパなのだ』『マザー・マザー・マザー』

『天才バカボンのパパなのだ』『マザー・マザー・マザー』

桜美林大学パフォーミングアーツプログラム<OPAP>

PRUNUS HALL(桜美林大学内)(神奈川県)

2009/09/18 (金) ~ 2009/09/26 (土)公演終了

満足度★★★★

堪能しました
30年くらい前自分が学生だった頃、別役実さんの芝居はたくさんの学生劇団・アマチュア劇団で取り上げられていました。「新劇」と呼ばれていたすでに新しくもなくなった芝居ばかりの演劇界に、新しい風を吹き込んだのが、別役実であり、寺山修司であり、唐十郎でした。その後の世代が、つかこうへいです。まだ、つかさんも若手と呼ばれた時代です。野田秀樹以前の演劇界です。
別役さんのお芝居は「不条理劇」とされて「日本のサミュエル・ベケット」と呼ばれていましたが、そのような「括り」に収まりきれないたくさんの引き出しを持った作家であったと思います。

今回この2作品を見て、あらためてその思いを強く持ちました。
別役さんのお芝居を本格的に観たのは本当に久しぶりです。奇をてらわずに、別役さんらしく仕上げてくれていて、うれしくなりました。

「天才バカボン・・」の方は、ある論点についての会話なのに、その末端の「ずれ」をもとに、次の論点に発展し、一つの会話からどんどんずれていって本来の論点がわからなくなっていく、別役さんのお得意の作劇法で成り立っている芝居で、その「ずれ」の面白さを堪能しました。
別役さんの芝居で登場人物に固有名詞がある芝居は極めてまれです。
この芝居に関しては、あえて天才バカボンの登場人物の「すでに確立された人物像」という造形を取り入れることで、それに付加価値をつけていったものです。
その点ではバカボンのパパは最も赤塚不二夫の造形に近く楽しくなりました。作劇意図を最も反映した人物像になったと思います。

「マザー・マザー・マザー」はセリフの奥の奥を深読みしないと全体像が見えてこない難解な構造の芝居で実に面白かったです。短時間の芝居なのに、奥が深くて、持っている内容の重さを感じます。どんなひとの心にも潜む、排他的な部分と依存的な部分とを微妙に操った内容であったように思います。
脚本をあらためて読んでみたくなりました。

当時は、こんな、見終わってもすぐには理解できずに、何度も何度も反芻するうちに脳に染み入ってくる芝居がたくさんありました。
しかし、こんな芝居ばかりになると、「何も、芝居でそんなに難しく考えることはないじゃん。芝居は楽しければいいんだよ。見終わってハッピーな気分になればいいんだよ」というアンチテーゼが出現し、今やそんなバカ芝居ばっかりになってしまいました。

演劇はもっと知的好奇心をinspireしてくれるものであるべきであると再認識させてくれる舞台でした。

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