土反の観てきた!クチコミ一覧

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TOKYO DEEP CRUSE

TOKYO DEEP CRUSE

86B210

Art Space呼応co-oh(東京都)

2014/10/08 (水) ~ 2014/10/08 (水)公演終了

満足度★★★

アンダーグラウンドな一夜
空間の中央に設けられた高さ30cm幅90cm程の細長いランウェイ状のステージでパフォーマンスが行われ、劇場で行われる公演には無いディープなアンダーグラウンド感が楽しかったです。

ナオミミリアン+芦刈純
天井から吊るされた赤い布に絡まりながら踊る、舞踏とエアリアルをミックスしたようなパフォーマンスでした。変則チューニングのコントラバスの即興演奏が独特の雰囲気を生み出していて、身体や楽器を積極的にダンサーに絡めていたのが印象的でした。

86B210
レースの覆面を被り、胸と腰に布を巻いた女性2人による、舞踏、ベリーダンス、ブレイクダンスの要素が感じられるダンスパフォーマンスでした。大きなゴムの膜を用いて、身体や顔のラインを浮かび上がらせるフェティッシュな質感の表現が印象的でした。

フランソワ・シェニョー+セシリア・ベンゴレア(+もう1人)
数日前にスパイラルホールで上演した『TWERK』のポップなアンダーグラウンド感とは趣きが異なり、3人のダンサーが顔まで覆った全身タイツ姿でポワントを履いて踊り、ダークで変態的な雰囲気が濃厚でした。即興パフォーマンスだったようで、狭いステージでバランスを崩しそうな不安定な動きがユーモラスな緊張感を醸し出していました。

20時スタートかと思って会場に行ったのですが、最初はDJタイムでパフォーマンスは21時から始まり、3組目が終わったのは23時を過ぎていました。週末ならともかく、平日の公演はもう少し早めのタイムテーブルの方がありがたいです。

altered natives’ Say Yes To Another Excess-TWERK ダンス・イン・クラブナイト

altered natives’ Say Yes To Another Excess-TWERK ダンス・イン・クラブナイト

Dance New Air ―ダンスの明日

スパイラルホール(東京都)

2014/10/04 (土) ~ 2014/10/05 (日)公演終了

満足度★★★

クラブと劇場
近年流行っている「twerk(トゥワーク)」というダンススタイルを始めとしたクラブ系のダンスをフィーチャーした作品で、アンダーグラウンド感溢れるエキセントリックな表現が刺激的でした。

開場すると既に始まっていて、DJがプレイする大音量のダンスミュージックが流れる中でアヴァンギャルドなファッションをしたダンサー5人が細かく回転しながらステージを大きく回る動きを繰り返していて、キッチュな高揚感がありました。
暗転した後、ドラァグクイーンのようないでたちの男性がバレエのテクニックで踊るのに続いて、様々なクラブ系のダンススタイルで踊り、後半では男女とも上半身裸で踊りまくり、終盤では性行為を思わせる、激しく尻を振るエロティックなトゥワークで盛り上がりました。

ダンスショウとしてはエロティックで馬鹿馬鹿しく、かつ技術的に高度でインパクトがあって魅力的でしたが、このようなパフォーマンスをクラブでなく劇場で着席して観ること、露骨な性的表現、セクシャル・マイノリティーに対しての批評性やコンセプトが作品に込められていそうなのにそれを読み取れないもどかしさを感じ、素直に楽しめない部分がありました。

BOX, L’HOMME AU CARTON

BOX, L’HOMME AU CARTON

Dance New Air ―ダンスの明日

こどもの城(東京都)

2014/10/05 (日) ~ 2014/10/05 (日)公演終了

満足度★★

段ボール箱と踊る
青山円形劇場の1階エントランスホールで行われた(雨が降っていたせいか、場所が屋外のピロティから変更されていました)10人のダンサーによる30分間のパフォーマンスで、周囲とは異なる時間感覚で静かに踊る姿が印象的でした。

各ダンサーの足元に置かれた1面が開かれた段ボール箱の後ろで片手を上げながらゆっくり回るシークエンスが淡々と続き、次第に5人ずつの動きに分かれ、更に1人だけが回転を続ける展開の後、段ボールを手に取って高さや向きを変えながら踊り、最後にまた同じ1人だけが取り残される構成でした。

物語性も目を引くようなムーブメントも無い単調な内容でしたが、 劇場内ではなくオープンな環境の空間で上演されることによって独特の質感が生まれていました。
とはいえ、せっかくそのような場所で上演するのであれば、通りすがりの人が足を止めるようなキャッチーな要素があった方が良いと思いました。

カーニバル

カーニバル

タバマ企画

なかのZERO(東京都)

2014/10/05 (日) ~ 2014/10/05 (日)公演終了

満足度★★

インパクトに欠ける
タバマ企画と馬喰町バンドと公募で集まった様々な年齢・経歴の人達によるパフォーマンスで、楽しめたものの舞台作品としての芯が弱くてあまり印象に残りませんでした。

冒頭で全員が登場、ステージの手前に一列に並んでダイナミックなユニゾン数名は奥の方で静止したままというシーンから始まり、空回り気味に感じられましたが、その後はソロのシーンを多く入れながら展開して次第に引き込まれました。赤い服を着た女性のソロが途中からパーカッショニストとのデュオになる流れが魅力的でした。

ギター、コントラバス、パーカッションによる音楽は様々な国の音楽をミックスした感じでバラエティー豊かで楽しめましたが、ダンスとの積極的な関係性が感じられず、生演奏であることが活かされていないと思いました。
舞台芸術専用の会場ではないせいもあってか、照明の演出が中途半端に感じられ、表現したいことが伝わってきませんでした。

コンテンポラリーダンスファンには名の知れたカンパニーでチケットも手頃な値段なのに客席がかなり寂しい状態となっていて、冷えた空気感が漂っていて残念でした。他の公演でチラシを見掛けることもなかったので、もっと広報に力を入れた方が良いと思いました。

炎 アンサンディ

炎 アンサンディ

世田谷パブリックシアター

シアタートラム(東京都)

2014/09/28 (日) ~ 2014/10/15 (水)公演終了

満足度★★★★★

圧倒的な舞台
壮絶な運命に直面する家族を通じて人間の尊厳を問う作品で、脚本・演出・役者のいずれも素晴らしく、3時間を超える上演時間を意識させない強い求心力がありました。

男女の双子の母親が晩年に突然喋らなくなってそのまま死んでしまい、遺言に従って父親およびその存在を知らされていなかった兄を探すエピソードと、母親の過去のエピソードが展開し、衝撃的な事実が明らかになる物語でした。
理由・原因を遡及して行くやりとりが2度あり、その終わりのなさに空しさを感じました。最後に明らかになる事実は途中で何となく分かってしまいますが、その事実自体よりもその事実に対する反応が丁寧に描かれていて、強く心を打ちました。
一番最後の絵面が宗教画のようで美しかったです。

土で覆われた勾配のついた床しかない空間で、2つの場所・2つの時代が交錯しながら、時には同時並行で物語が展開するものの、照明で巧みにエリアをフレーミングして分かり易く描かれていました。

物語としてはとても重い内容ながらも、謎が少しづつ明らかになって行くミステリー仕立ての構成や、1人で10代から60代まで演じたり、複数の役を演じたり、場面転換に工夫があったりと、あざとくならない程度に趣向を凝らした演出があって、演劇として楽しかったです。特に効果音に複数の意味が掛けてあり、同じ音が異なる場面で違う意味合いを帯びさせていたのが印象的でした。
BGMとして使われていた音楽が悲劇を無闇に盛り上げる大袈裟なものではなく、明るさや希望が感じられるピアノ曲だったのも良かったです。

7人の役者だけでスケールの大きな世界を表現していて素晴らしかったです。特に岡本健一さんは多くの役をそれぞれ説得力のあるキャラクターとして演じていて良かったです。

ロミオとジュリエットのこどもたち

ロミオとジュリエットのこどもたち

ロロ

あうるすぽっと(東京都)

2014/10/02 (木) ~ 2014/10/05 (日)公演終了

満足度★★★★

ラブストーリーのコラージュ
『ロミオとジュリエット』をベースに様々なラブストーリーがコラージュされた作品で、後半の三浦さんなではのシュールで重層的な展開に引き込まれ、休憩込みで2時間40分程の比較的長い上演時間が気になりませんでした。

前半は大幅なカットはあるものの原作に沿って演じられ、ロミオとジュリエットが死ぬラスト直前から独自の展開となり、休憩の後は三浦さんオリジナルのラブストーリーにまつわる物語となる構成でした。
3階建てのセットの2階にはターンテーブルが設置されていて、前半はレコードをスクラッチするのに合わせて早回しのような台詞と動きで次々に進み、ロミオとジュリエットが初めて合うシーンは音楽と共に何回も繰り返されるのが印象的でした。
クラシカルな装飾が施されていていたセットの表層が取り外され素の足場に変化することによって古典から現代に接続され、『トリスタンとイゾルデ』『金色夜叉』『タッチ』『東京ラブストーリー』といった古今東西のラブストーリーの断片が『ロミオとジュリエット』と被さり、幻想的な広がりが感じられました。
後半は、女隊長が率いるラブレターを探すグループ、工事現場で働く人達、死者と繋がりを持つラジオDJとそのリスナーといったエピソードが同時並行し、カオティックな雰囲気が魅力的でした。終盤では愛が時代・場所・性別を超越した普遍的なスケールで描き出されていて壮観でした。クライマックスの吊り橋効果的なスリリングで高揚感のあるシーンが素晴らしかったです。

前半と後半で色々な要素が関連付けられていたのが良かったです。前半で死ぬ場面が描かれずに時間がフリーズしてしまったジュリエットが後半では常に3階の中央で静かに佇んでいたのが効果的でした。後半でも『ロミオとジュリエット』の台詞やシーンが効果的に引用されていて、有名なバルコニーのシーンが印象的に変奏されていました。原作ではあまり目立たない、ロミオがジェリエットに会う前まで恋焦がれていた女性、ロザラインを大きくフィーチャーしていて恋の切なさを描いていたのが新鮮でした。前半の様々な場面で登場していたレコードと双眼鏡が聴覚と視覚を象徴する物として後半で扱われていたのも興味深かったです。
後半は素晴らしかったのですが、前半は文体と早口のせいもあって台詞が聞き取り辛く、後半での引用が引き立たなくなっていたのが勿体なく思いました。

音楽の使い方がただの雰囲気作りのBGMとしてではなく物語に密接した物となっていて、様々なラブストーリーの音楽がコラージュされて1つの曲になって行くプロセスの盛り上がり方が気持ち良かったです。

不謹慎な家

不謹慎な家

PANDA JOCKEY

シアター711(東京都)

2014/10/01 (水) ~ 2014/10/05 (日)公演終了

満足度★★★

待つ女達
少しだけ特殊ではあるものの日常的な生活を描いたシンプルな会話劇で、コミカルなやりとりの中に考えさせられる内容が織り込まれた作品でした。

罪を犯して懲役を受けている夫や恋人が出所するのを待っている女達が一軒家で共同生活を行う様子を描いた物語で、罪を犯した者の身近に居る人の難しい立場や待つ心情という、シリアスに描くことも出来るテーマを軽妙な会話劇に仕立てていて、楽しめました。
ラストで殊更に盛り上げたりせず、さらっと終わるのも良かったです。

特徴的な手法や仕掛けを用いずに演技で見せるタイプの作品で、個人的な耆好と異なっていて少々物足りなさを感じました。

手前中央だけ1段下がった、掘り込み座敷の断面のようなセットは、出演者が座っているシーン(大半がそうでした)でも見易いという効果はありましたが、それ以外にそのような形状にした意図が感じられず、もったいなく思いました。

どの役者もアクのあるキャラクターながら現実に居そうな雰囲気を感じさせる演技で良かったです。特に冴えない管理人を演じた有川マコトさんの声や表情の引き出しの多さが魅力的でした。

『ALice, where are you going? /アリスどこに行くの?』

『ALice, where are you going? /アリスどこに行くの?』

バストリオ

神保町・試聴室(東京都)

2014/09/26 (金) ~ 2014/10/01 (水)公演終了

満足度★★★

居場所についてのコラージュ
言葉、身体表現、音、映像が対等に扱われた、イメージ豊かな表現が魅力的な作品でした。

舞台奥上手にドラムセット、下手に銅羅やパーカッションが設置されていて、ドラムの短かく激しいフレーズに合わせて役者達が踊るように動く前半に続いて演奏だけのシーンがあり、後半では金属製楽器中心の神秘的な持続音が響き続ける中でパフォーマンスが繰り広げられる構成で、一貫性のある物語は無く、『不思議の国のアリス』との関連がうっすらと感じられる断片的なシーンが連なって、自身の居る場所について考えさせる内容でした。

ペットボトルの水、林檎、小石、マッチの火といった小道具が場面毎に様々なイメージを連想させ、狭い空間の中に独特の開放感が漂っていてました。
動きや佇まいにアリスを連想させる少女的なエロティシズムが感じられ、印象に残りました。

作品は良かったのですが、客席の丸椅子を人の肩幅より狭く配置していた為、80分近く不自然な体勢を取らざるを得ず、後半はかなり苦痛でした。また座り込んでの演技や床に置かれた小道具は全く見えずストレスを感じました。演出家あるいは制作担当が客席に実際に座ってチェックして欲しかったです。

宇宙船

宇宙船

3.14ch

王子小劇場(東京都)

2014/09/19 (金) ~ 2014/09/29 (月)公演終了

満足度★★★

正統派SF演劇
有名なSF映画・漫画へのオマージュを感じる、時間的スケールの大きな作品でした。

地球外生命体がいる星へ350年の時間を掛けて向かう宇宙船の中で繰り広げられる物語で、被支配階級による革命や自由による退廃、孤独と狂気の長い年月、物語の存在意義といった要素がテンポ良く描かれていました。

SF物を舞台で上演しようとすると時間や空間の制約から安っぽくなりがちなのですが、そうはならずにSFらしい雰囲気が出ていて良かったです。
革命後、享楽的に生きる人々が壊れたファッションと言語になり、音楽もそれまでのクラシックから切り替わるのがインパクトがありました。
「実年齢」と「表層年齢」という設定がストーリー上であまり活かされていなくて、作品中で何十年過ぎても外見が変わらないことの理由付けの為だけにその設定が用いられているように思えたのが残念でした。

台詞を叫んだり轟音が響く場面が多過ぎる為に音的に飽和状態となっていて、その効果が感じられずにうるさいだけになっていたのが勿体なかったです。感情の高まりは大声だけでなく、沈黙や敢えて淡々と普通に話すことでも表現出来ると思いました。

天井まで作り込んだ真っ白い空間がレトロフューチャー感を醸し出していました。分割式の円環状のテーブルが場面毎に異なる配置・形状で使い回されていたのが良かったです。

コンタクト

コンタクト

水素74%

アトリエ春風舎(東京都)

2014/09/12 (金) ~ 2014/09/23 (火)公演終了

満足度★★★

引き込まれるぎこちない会話
未知の他人とコミュニケーションを取ろうとすることの難かしさや滑稽さがナンパをモチーフにして描かれ、ドラマティックな展開や派手な演出は無いものの会話だけで魅力的でした。

ボーリング場の前でナンパしようとする仕事での先輩後輩の男2人、そこを通りかかった女2人、母がナンパされるのを阻止しようと未来からタイムトラベルして来た男女2人、ボーリング場の店員の女が組み合わせを変えながら、なかなか進展しないぎこちない会話を続ける物語で、どの登場人物にも変な部分があってイライラさせられながらも、食い違いや妙な間が生じるやりとりが笑えて面白かったです。

開場すると既にナンパをしようとする2人が舞台上にいて、開演までの時間をナンパ相手が通らないことの表現としていたのが巧みでした。
最初に舞台にいた2人が話しながら客席の出入口から捌けて行くと同時に客席が次第に明るくなり、カーテンコールも無く終わるのが、そっけなくも冒頭と対応関係が持たされていて印象に残りました。

音響は効果音やBGMを用いずに、車が行き来する環境音のみで、声を張らずに日常的な音量で喋る台詞を引き立てていたのが良かったです。

グループ・アントルス『[àut]』

グループ・アントルス『[àut]』

世田谷パブリックシアター

シアタートラム(東京都)

2014/09/18 (木) ~ 2014/09/20 (土)公演終了

満足度★★★★

奇妙な世界
観客に媚びることのない独特のシュールな世界観が魅力的で、1時間弱の間で一瞬も集中力を失わせない作品でした。

開場すると、壁で三角形に仕切られたステージに既に女性ダンサーが静かに佇んでいて、オペレーターの2人が入って来て始まり、更に男性ダンサーが入って来て激しくないものの異様なテンションを感じるパフォーマンスが展開しました。途中からはおそらくラジコンにカバーを被せた、照明を仕込んだオブジェが登場し不気味なユーモアを感じさせました。時折照明が切り替わり『美しく青きドナウ』が流れて、奇妙なデュオを踊るシークエンスが何度か繰り返された後、終盤で不意に客席が明るくなり、何事も無かったかの様にまた暗くなり、今度は壁の向こう側が明るくなりそのまま終わってしまうという、人を食ったような雰囲気が魅力的でした。
結局何が言いたいのかさっぱり分からず、奇妙な印象だけを与えたまま終わりましたが、逆にその突き放し方が爽快でした。

LED照明を用いた青や緑の一色の光に照らされた空間やダンサーが非現実的で印象的でした。動きもいわゆるダンスとはかなり異なるタイプで、重力の方向や空間が歪んで感じられる様な人間離れしたムーブメントやポーズが飄々と繰り広げられて不思議な感覚でした。冒頭の女性ダンサーの常に微かに揺れながら繊細に異様な形を作って行くシーンや、デュオで絡みあって手足がどちらのものか分からなくなって行くのが刺激的でした。

おそらくステージ上の椅子やダンサーにマイクが仕込まれていて、それを増幅して音と動きの関係を意識させる手法が興味深かったです。

無実

無実

東京演劇アンサンブル

ブレヒトの芝居小屋(東京都)

2014/09/11 (木) ~ 2014/09/21 (日)公演終了

満足度★★

世界の不確実性
現代ドイツを代表する作家の旧作の日本初演でしたが、戯曲の面白さが伝わって来ない印象を受けました。

不法入国者の黒人の男と盲目の踊り子を中心に、癖のある登場人物達によって、自殺、犯罪、移民といった現代社会における問題や人間の存在意義について考えさせられる内容が、平行的に展開するエピソードの連なりで描かれる、晦渋かつ幻想的な物語でした。
ト書き的な地の文と普通の会話が入り混じった独特の文体が用いられ、さらにコロス的な斉唱で台詞を言う場面もあり、人称の定まらなさが印象的でした。

男性は棒読み的な人が目立ち、逆に女性は大仰な台詞回しが目立って、演技が噛み合っていないと思いました。ダンス的な表現も動きに切れが感じられませんでした。

ハープの生演奏や映像を用いた演出は印象的でしたが、作品の内容に深く関わっている様に感じられず、その場の限り効果に見えることが多くて勿体なく思いました。
特に放射性廃棄物を入れるフレコンバッグが沢山置かれた舞台美術や、転換作業をする人が防護服を着ていたのは、この戯曲でその様にする意図が分かりませんでした。原発事故を絡ませるなら、全体的にその方向に振った演出にして欲しかったです。

赤い靴

赤い靴

Dance New Air ―ダンスの明日

青山円形劇場(東京都)

2014/09/12 (金) ~ 2014/09/15 (月)公演終了

満足度★★★

欲望に負ける
アンデルセン童話をモチーフにした1時間程度の作品で、欲望に勝てない人間の姿がユーモラスに描かれていました。

微妙にデザインの異なる黒のワンピースを着た女性3人がメインで、特定の役が振られているわけでなく、次々に異なる役に切り替わって行き、唯一の男性である小野寺さんは真っ赤な衣装で赤い靴を象徴しながら、物を動かしたり、ダンサーに照明を当てたりと黒子的な役割を果たしていました。
特定の正面を意識させないパフォーマンスを机と木の箱を用いつつ展開していて、円形劇場ならではの表現になっているのが良かったです。
赤い照明の中で大きな木製の人形の足に付けられた紐を3人が引っ張り合い、足が取れてしまうクライマックスの場面の残酷な雰囲気が印象的でした。

これまでに小野寺さんの作品は多く見ているので、ムーヴメントに既視感を覚える場面が多く、あまり新鮮味を感じませんでした。得意技の小道具やセットを用いた独創的な表現も控え目で物足りなさを感じました。
床に描かれた美術も美しかったものの、パフォーマンスにあまり関与していなくて勿体なく感じました。

イドメネオ

イドメネオ

東京二期会

新国立劇場 オペラ劇場(東京都)

2014/09/12 (金) ~ 2014/09/15 (月)公演終了

満足度★★★★

父と子
古代ギリシャの物語ですが、現代的な衣装を纏って場所や時代を特定しない形で演じられ、親から子へ受け継いで行くものに焦点を当てた演出となっていました。

序曲が流れる中、父イドメネオが幼少のイダマンテに服を着せるモノクロ映像が舞台手前のドレープの効いた白い幕に流れ、父と子のテーマと服というモチーフが提示され、劇中でも頻繁に服を脱いだり着替えたりすることによって様々な関係や感情を表現していました。
王子と結ばれようと策略を謀る女が思い通りに行かず半狂乱になり、服を脱ぎ捨てカツラを外し(中はスキンヘッド風に処理してありました)泥まみれになりながら高音で歌う姿が壮絶でした。
フィナーレでは台本には無い、新王妃の出産シーンが演じられ、親と子の繋がりが強調されていたのが印象的でした。

『フィガロの結婚』や『魔笛』といったモーツァルトの有名なオペラとは異なる、シリアスな質感の音楽を颯爽とドラマティックに演奏するオーケストラが良かったです。
歌手陣は叙情的な部分の歌唱は聴き応えがあり、演技も棒立ちでも過剰でもなくて良かったのですが、技巧的な細かいパッセージの歯切れが悪かったのが残念でした。

幅より奥行きの方が大きい傾斜したステージに砂が敷き詰められ、戦争の犠牲者達を表す大量の靴が散乱するなかで物語が展開し、後半では椅子やスーツケースも乱雑に積み上げられ、現在でも各地で起きている争いを思わせました。

オペラ『おぐりとてるて』

オペラ『おぐりとてるて』

オペラシアターこんにゃく座

俳優座劇場(東京都)

2014/09/11 (木) ~ 2014/09/14 (日)公演終了

満足度★★★

今を生きる
小栗判官と照手姫の物語を室内オペラにした作品で、単純に物語を演じるだけではなく、冒頭と最後に物語を相対化して現在の人間の置かれた状況を考えさせる場面があり、作品に深みが出ていました。

前半では小栗と照手が出会って結ばれるものの、2人の結婚を良く思わない照手の父によって小栗が殺されるまでが、語り部が時折現れて語っているという形で描かれていました。休憩を挟んだ後半は餓鬼阿弥陀仏として車で引かれ、お互いがそれと気付かずに出会うシーンが印象的でした。

グレーに統一された屏風状の壁、傾斜のついた台、階段のミニマルな空間の中で、しっかり作られた衣装や衣装やリアルな蛇や馬の作り物が映えていて印象的でした。

舞台の上手に位置するピアノ、サックス、打楽器の伴奏に乗せて歌われる曲はことさらに和風に寄せ過ぎず、程良くモダンな響きがして聴き易かったです。小栗が乗る車を引く掛け声に基づくリズムモティーフが所々に現れて統一感を与えていましたが、反面、単調さも感じられて音楽としては少々盛り上がりに欠けると思いました。

マハーバーラタ~ナラ王の冒険~

マハーバーラタ~ナラ王の冒険~

SPAC・静岡県舞台芸術センター

KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)

2014/09/12 (金) ~ 2014/09/13 (土)公演終了

満足度★★★★

祝祭的絵巻物
インドの古代の物語を様式性の強い演技と打楽器アンサンブルの賑やかな演奏で描き、神事の様な祝祭性が圧巻でした。

物語自体は悪魔に憑かれた王と王妃の別れと再会を描いた単純なものですが、日本の伝統芸能に着想を得たと思われる、シンプルながら効果的な演出で幻想的で豊かな世界が広がっていました。
高い位置に設えられた円環状の舞台が客席を囲むという特殊な形状で、普段の舞台形状では感じられない様な高揚感を生み出していました。
その舞台形状の特性から、人が複数出るときは横一列の配置となり、絵巻物の様なヴィジュアルになっていたのが印象的でした。
通常は舞台として使われている部分を客席としていて、円環舞台の背後に見える2階・3階の赤い客席がアヴィニョン公演の会場の石切場の絶壁を連想させて印象的でした。

布と紙で作られた白一色衣装・仮面・小道具が広い空間に映えていて美しかったです。像を鼻の部分だけのオブジェで表現していたのがユニークでした。
様々な民族楽器を用いた8人の打楽器奏者の演奏が、情緒的なメロディーに頼らずリズムのみで雰囲気を盛り上げていたのが良かったです。演奏する姿もパフォーマンスの一部として存在感がありました。

PAや照明は用いているものの基本的に全て人力で表現する演出となっていたにも関わらず、一番最後の締めに像の鳴き声の録音を使っていて、興を削がれてしまい残念でした。

星の王子さま

星の王子さま

青蛾館

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2014/09/11 (木) ~ 2014/09/15 (月)公演終了

満足度★★

言葉が届かず
ダンサー・振付家のスズキ拓朗さんが演出を手掛けた公演で、軽やかな雰囲気が印象的でしたが、寺山戯曲に対して演出がマッチしていないと思いました。

少女と男に変装した女が謎めいたホテルに入り込み、そこで怪しげな人物達と遭遇する物語で、サン=テグジュペリの『星の王子さま』の要素が絡んで迷宮的な世界観を描いていました。
オープニングはこれからの展開を期待させる魅力がありましたが、ダンスや音楽の無い台詞だけで進行する場面は求心力が弱く、独特な言葉が伝わって来ませんでした。終盤では寺山作品らしい虚構と現実がごちゃ混ぜになる展開となるのですが、その時に現実と虚構を繋ぐ役目を役者でも(戯曲で指定されている)サクラの観客でもなく、劇中音楽を演奏していたミュージシャンに振っていて、開演前のアナウンスをその人が行っていた意味が明らかになるのが巧みな構成となっていて良かったです。

ミュージシャン達は作業着にヘルメット姿、床には養生ベニヤが敷かれ、カラーコーンやローリングタワーを舞台美術として使って工事現場をイメージさせていて視覚的には楽しかったものの、物語との関連性があまり感じられなくて、 残念でした。

音楽劇となっているものの、歌に関しては音程が怪しく歌詞も聞き取り難く、あまり満足出来ませんでした。
効果音が耳に痛くて、もう少しマイルドな響きでも良いと思いました。

背信

背信

葛河思潮社

KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)

2014/09/10 (水) ~ 2014/09/15 (月)公演終了

満足度★★★

記憶の曖昧さ
2組の夫婦のダブル不倫の物語ですが下世話な内容ではなく、記憶・認識の曖昧さを描いた、静謐さが印象的な作品でした。

途切れがちな会話が続いて沈黙の時間が多い序盤は良く分からなくて少々眠気を誘われましたが、登場人物の関係や時系列の流れが明らかになるに従って引き込まれて行きました。最後まで観た時点でもう一度頭から観てみたくなる巧みな構成でした。

白い正方形のステージに平面形状がコの字型のタイルとガラスブロックの壁が中央奥に立ち、その手前のエリアで演技が行われ、その周りに家具、主要登場人物3人と、実際には現れないものの立場的に同等で会話の中で言及される女性の4人を象徴しているかの様でした。壁の中央に縦にガラスブロックが入っていて非現実的に壁を左右を分断しているのが、会話の中で露見する記憶違いを象徴しているかの様でした。

場面転換で家具を移動させる4人の子供〜青年が、過去に遡って行く物語とは逆方向の、それぞれの夫婦の子供達の将来の姿を想像させて興味深かったです。

大きな動きをせず、激昂することも無く淡々と話す中で、わずかな表情や視線の方向で3人の微妙な関係を示す、繊細な演技が魅力的でした。

三文オペラ

三文オペラ

新国立劇場

新国立劇場 中劇場(東京都)

2014/09/10 (水) ~ 2014/09/28 (日)公演終了

満足度★★★

あっさりとした演出
ブレヒト&ワイルの名作を所々で笑いを取りつつもオーソドックスに演出していて、内容は分かり易く演技や歌も良かったものの、もう少しどぎついアクがあっても良いと思いました。

舞台両袖から奥の中央に向かって伸びる階段と石畳(風の塗装)の床の空間の中で、場面が変わっても大幅なセットの転換は行わずに展開して行きました。
戯曲には無い滑稽な台詞や動きがあって、アイロニカルな雰囲気よりもコミカルな雰囲気が強く感じられました。特に第2幕後半の牢屋の場面は笑える場面が多かったです。
この作品の特徴である、取って付けた様なエンディングの場面の演出はシニカルさを極端には打ち出していなくて、人間讃歌的な温かみを感じました。

オペラやミュージカルの様なドラマ性を排した、ドライな響きの音楽が小気味良く、歌詞も聞き取り易かったです。
マイクによる拡声に頼り過ぎず、スピーカーからではなく、ちゃんと役者のいる場所から歌声が聞こえて来たのが良かったです。

牢屋を連想させる、ストライプ状に床を照らす照明でアクティングエリアを絞っている内に転換を行う手法が用いられている割には、時折妙な間が出来てしまっていたのが気になりました。

きらめく星座

きらめく星座

こまつ座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2014/09/08 (月) ~ 2014/10/05 (日)公演終了

満足度★★★

人の存在することの奇跡
戦中の庶民の暮らしを優しく描く向こう側に人間の在り方についての問い掛けが見える、考えさせられる作品でした。

レコード屋を営む家族のところへ下宿したり婿としてやって来たりする人達の群像劇で、中盤までの朗らかな雰囲気と、終盤のそれぞれ思いの丈を熱くあるいは静かに語る様が対照的でした。
インパクトのある冒頭とラストの光景が、登場人物達のその後のより苦しい人生を暗示していて、最終場の日付がさらにその印象を強めていました。

レコード屋が舞台となっている為、歌う場面が多く、音楽的にも楽しめました。ピアニストが別エリアで演奏するのではなく、劇中の登場人物として弾く形になっていて、歌う場面が物語から乖離していないのが良かったです。

物語自体はとても良いと思いましたが、楽しい雰囲気を無理に作っている様に感じられ(テーマ的にそういう意図もあるとは思いますが)、もっとしっとりした雰囲気の演出でも良いと思いました。

作品自体は見応えがあったものの、上演中に話したり、携帯電話を見たり、ビニール袋をカサカサ音を立てたり、笑うところではない箇所でもやたらに笑ったりと観劇マナーが良くない観客が多く、観るのに集中出来なかったのが残念でした。

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