土反の観てきた!クチコミ一覧

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岡田利規「ポストラップ」

岡田利規「ポストラップ」

東京都現代美術館

東京都現代美術館 企画展示室地下2階アトリウム(東京都)

2014/12/23 (火) ~ 2014/12/23 (火)公演終了

満足度★★

ラッパーの身体表現
岡田利規さんがラッパーの動きを演出した15分程度のパフォーマンスでした。

ラッパーのSOCCERBOYさんが白シャツに赤いネクタイ、ベスト、革靴、整髪料で撫で付けた髪というバーテンダーのような格好で登場して音楽無しのフリースタイルでラップを、後半は音楽ありの構成でした。
ヨタヨタと歩き回ったり、どじょう掬いのような動きや蕎麦を食べるような動きや畑を耕すような動きをしたりと、ラッパーがしないような動きが多く用いられていて滑稽な雰囲気を生んでいましたが、日本や日本人についてのポリティカルなリリックとはタイミングをずらしつつも内容的に関連性が感じられ、只の受け狙いでは無い表現となっていました。

不思議な感覚のパフォーマンスで楽しめましたが、ラップは元々身振りありのことが多いので、岡田さんが演劇作品で見せる言葉と身体の関係性の方が刺激的に思えました(この公演は身体パフォーマンスの展覧会の関連イベントとして行われましたが、展覧会本編の方に岡田さんが出展している映像インスタレーションが興味深かったです)。

誰でもない/終わりをみながら

誰でもない/終わりをみながら

ながめくらしつ

シアタートラム(東京都)

2014/12/21 (日) ~ 2014/12/23 (火)公演終了

満足度★★

独特の世界観
ジャグリングを統一感のあるステージパフォーマンスとして構成していて、大道芸的な賑やかし感が無い、シックな雰囲気が新鮮でした。

『誰でもない』
公募で集まった10人がピアノの生演奏に合わせてジャグリングを繰り広げる作品でした。テクニックをひけらかすのではなく、作品としての流れを重視した構成で、ダンス作品のような美しい質感がありました。
ミスが結構あって残念でしたが、落とした球の回収等のフォローがスムーズで良かったです。

『終わりをみながら』
先端がL字型に曲がった台座付きのポールを用いたパフォーマンスから始まり、2枚のベニヤ板をL字型に組んだ壁状のオブジェを使ったトリッキーなパフォーマンス、机と椅子を用いたアクロバット的ダンス、天井から吊された帯状の布を使ったエアリアル、ジャグリングと続く構成で、全般的に寂しげな雰囲気が漂っていました。
各シーンに思い入れがあり過ぎて、作品の時間構成としてアンバランスさを感じました。全体的にもう少しテンポ良く進行した方が良いと思いました。
叙情的なピアノとアヴァンギャルドなチェロの演奏は良かったのですが、音楽が少々強過ぎるように思いました。

現在は若いメンバーが年齢以上に大人びたことを表現しようとしてしっくりしていない部分がありましたが、ジャグリングを芸術性のあるステージパフォーマンスとして見せるスタイルが独特で、今後表現が熟成して行くのが楽しみです。

シンデレラ

シンデレラ

新国立劇場

新国立劇場 オペラ劇場(東京都)

2014/12/14 (日) ~ 2014/12/23 (火)公演終了

満足度★★★

王道的
有名な物語をバレエ化した作品で、この時期の定番『くるみ割り人形』と同様に、家族で楽しめる明快で美しい内容でした。

シンデレラと一緒に住むのが継母ではなく実の父であったり、最後のガラスの靴の持ち主がシンデレラと判明するくだりが少し異なっていたりと細かい変更はあるものの、粗筋を知っていれば動きを見ているだけで内容を追える、分かり易い振付・演出でした。
第1幕後半の四季の精が順に登場するシーンは季節毎に後の幕が上がって奥行きが増して行き、広くなった舞台をかぼちゃの馬車が一周する空間演出が印象的でした。
第2幕は舞踏会の場面で、ゴージャスな美術・衣装と群舞が美しかったです。12時になって魔法が解け、シンデレラの衣装がドレスからみすぼらしい服に早替わりするのが鮮やかでした。

男性ダンサーが演じるシンデレラの義理の姉2人のユーモラスなやりとりが楽しく(カーテンコールでも笑いを取っていました)、悪い性格になり過ぎていないのが良かったです。
コール・ド・バレエの振付はシンメトリーを強調していて、格調の高さが表現されていました。

プロコフィエフの音楽は意外性に富んだ旋律や和声進行でありながら親しみ易さがあり、物語を盛り上げていました。
元々の振付のせいもあるとは思うのですが、演奏とダンスのリズム感が微妙に合っていないように感じられる場面が所々にあったのが少々残念でした。

劇場スタッフの格好やホワイエの装飾もクリスマスの雰囲気を盛り立てていて良かったです。

日本舞踊×オーケストラ Vol.2

日本舞踊×オーケストラ Vol.2

東京文化会館

東京文化会館 大ホール(東京都)

2014/12/13 (土) ~ 2014/12/14 (日)公演終了

満足度★★★★

豪華共演
日本舞踊とオーケストラによるクラシック音楽のコラボレーションを中心に、宝塚やバレエとのコラボレーションも交えた豪華な公演で、充実した内容でした。

『葵の上』(音楽:黛敏郎 振付:藤蔭静枝)
能で良く知られる作品を、黛敏郎の日本音楽に基づいたオーケストラ曲に乗せて踊り、格調高く女の怨念が描かれていました。大きく広げられた装束が並ぶシンプルな空間が美しかったです。

『ライラックガーデン』(音楽:ショーソン 振付:五條珠實)
ロマンティックな音楽に乗せて男女4人の恋愛関係のもつれが描かれていて、動きから感情が伝わって来ました。明治時代の設定となっていて、アンサンブルが洋装姿で日本舞踊の振りで踊っていたのが新鮮でした。

『いざやかぶかん』(音楽:ガーシュウィン 振付:若央りさ)
歌舞伎の創始者である出雲阿国を描いた作品で、ジャズとクラシックが融合した音楽、宝塚の振付家とトップスター、横尾忠則さんの役者絵をコラージュした作品の投影と、盛り沢山のレビューショウで楽しかったです。舞台奥に投影された絵にエフェクトを掛け過ぎていて煩く感じる時がありました。

『パピヨン』(音楽:ドビュッシー 振付:花柳壽輔)
青年が蝶を追ってジグザグの道を歩いていると蝶が美しい人間の姿となって現れ、束の間の戯れの後に去って行く様子を描いていて、合唱入りの音楽も相俟って幻想的な雰囲気が漂っていました。蝶をイメージしたドレスが美しかったです。

『ボレロ』(音楽:ラヴェル 空間構成・振付:アレッシオ・シルヴェストリン 振付:花柳輔太朗)
天の岩戸伝説をモチーフにしていて、紫の衣装を着た吉田都さんの軽やかでしなやかなバレエの動きと、黒紋付き男性群舞の重心の低い勇壮な姿の対比が鮮やかでした。大勢の舞踊家のフォーメーションの秩序と混沌のバランスが良くて、新鮮な美しさがありました。

みえない雲

みえない雲

ミナモザ

シアタートラム(東京都)

2014/12/10 (水) ~ 2014/12/16 (火)公演終了

満足度★★★

大人の嘘
役者を際立たせるシンプルで印象的な演出の中に強いメッセージが込められていて、社会との関わり方について考えさせられる作品でした。

フィクションの原発事故を描いた『みえない雲』の作者、グードルン・パウゼヴァングさんを訪ねる「私」のドキュメンタリーの物語の枠組みの中で『みえない雲』の物語が展開する構成となっていて、原発の恐ろしさや、利己的な理由あるいは相手を思って嘘をつく大人の姿が悲痛な調子の中に描かれていました。

シリアスなテーマを扱った作品ですが、役者が複数役を演じたり、仕掛けが施された舞台美術や小道具を用いた演出があって、演劇的面白さが感じられました。しかし、序盤で主人公と行動を共にする人物が人形で演じられて稚気を強調した演出だったのは違和感を覚え、途中までは物語の世界に入り込み難かったです。

床が石のタイル状に仕上げられている以外は素舞台で、椅子やテーブル等の必要最低限の家具だけを運び込ぶスタイルでしたが、照明によるエリア分けによって様々な場面がスムーズに進行していました。少々照明の演出が目立ち過ぎる時があったのが残念に思いました。

空間現代 × 地点

空間現代 × 地点

空間現代

SuperDeluxe(東京都)

2014/12/07 (日) ~ 2014/12/07 (日)公演終了

満足度★★★★

緊張感のあるコラボレーション
地点と『ファッツァー』(作:ベルトルト・ブレヒト)で共演している3ピースバンド、空間現代のライブに地点がゲスト出演する形で、『ファッツァー』の抜粋が上演されました。

前半40分程度は空間現代の演奏がノンストップで続き、途中で真っ暗になった後に役者6人が奥の白い壁の前の一段高くなったステージに登場し、区切り無く『ファッツァー』が始まりました。
役者はほとんどの時間を背後の壁に張り付くような形でポーズを取っていて、複雑なビート感と構成の音楽に対して音が鳴っていない時間に台詞を言う構成となっていました。役者が倒れ込むとセンサーで制御されたベルの持続音とストロボの点滅が作動する仕掛けとなっていて、音と光が切迫感を高めていました。
抜粋での上演だったこともあってストーリー的には良く分からなかったものの、演劇と音楽の緊張感のある拮抗に引き込まれました。

アフタートークでコラボレーション第2弾がアナウンスされ、次はどのような方法論でコラボレーションするのか楽しみです。

スペイン国立ダンスカンパニー

スペイン国立ダンスカンパニー

スペイン国立ダンスカンパニー

KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)

2014/12/05 (金) ~ 2014/12/06 (土)公演終了

満足度★★★★★

圧倒的な身体表現力
バレエのテクニックを持ったダンサー達によるコンテンポラリー作品プログラムで、物語性に依らずに動きや形そのもので見せる身体の表現力が強烈でした。

『Sub』(振付:イジック・ガリーリ、音楽:マイケル・ゴードン)
上半身裸の男性ダンサー7人が床に置かれた照明に囲まれた中でストイックに踊る作品で、極端に速かったり遅かったりしない中庸なスピード感の動きの中に密度のある緊張感があって素晴らしかったです。複雑なフォーメーションの入れ替わりに引き込まれました。
暗めの照明が美しかったです。

『堕ちた天使』(振付:イリ・キリアン、音楽:スティーヴ・ライヒ)
太鼓のみの音楽のリズムに合わせて、黒レオタード姿の女性ダンサー8人がほぼユニゾンで踊る中で微妙な差異やズレを加える作品で、体操的でかつバレエ的なる動きの中にユーモアやコケットリーが感じられ、魅力的でした。
『Sub』と同様ミニマルミュージックで踊り、似たような演出効果があったりと、対になったプログラミングが良かったです。

『ヘルマン・シュメルマン』(振付:ウィリアム・フォーサイス、音楽:トム・ウィレムス)
古典的なバレエの動きを拡張した腕・脚の動き、気取ったポージング、素の状態で舞台を出入りする、といったフォーサイス節が満載の作品でクールな質感が印象的でした。敢えて照明の演出をしていないのも新鮮でした。
男性ダンサー達の均整の取れた切れのある動きが美しかったです。

『天井桟敷の人々 第2幕第5場よりパ・ド・ドゥ&ソロ』(振付:ジョゼ・マルティネズ、音楽:マルク=オリィヴィエ・デュパン)
新しい作品ですが古典的な趣きで、ドラマ性のある振付や、優美な美術や衣装、そしてピアノの生演奏によるロマンティックな音楽が、他の上演作品とのコントラストを生み出していました。
マルティネズさんが怪我で出演しなかったのは残念でしたが(開演冒頭にマルティネスさんによる日本語で謝りの挨拶がありました)、代わりに踊ったエステバン・ベルランガさんも素晴らしかったです。

『マイナス16』(振付:オハッド・ナハリン、音楽:ディーン・マーティン、リンキー・ディンクスほか)
物語は無いものの喜怒哀楽が強く打ち出された人間味溢れる作品で、有名な半円形に並べた椅子に座って踊るシーンや、終盤の観客をステージに上げて一緒に踊るシーンに高揚感がありました。
男女混合編成ですが、全員が黒スーツ姿で踊るときは男女差を感じさせない動きの質感の統一性がありました。休憩時間から1人ステージ上に立たされてコミカルな演技をするダンサーが芸達者で楽しかったです。

孤独な絵肌・滑り込む音楽

孤独な絵肌・滑り込む音楽

ナズ・ラヴィ・エ

ギャラリーCASA TANA(東京都)

2014/12/02 (火) ~ 2014/12/07 (日)公演終了

満足度★★

人生の色
音と色をモチーフに人生を描いた作品でしたが、表現が浅く感じられ、青少年向けの漫画や小説のような印象を受けました。

ある画家が関わった人達のエピソードを弟子に語る物語で、2部構成になっていて、前半は白い幕で4つに区切られたブースのそれぞれで異なるエピソードが演じられるのを観客が移動しながら観るインスタレーション形式で、後半はブースだった場所に着席して観る形となっていました。
前半は同時進行する異なる4つの話が台詞が重なったり繋がったりして関連する凝った作りとなっていましたが、台詞のタイミングを合わせる為にそれぞれの芝居としてはテンポが悪くなっていたのが残念でした。
後半はそれぞれのエピソードが拡大されて描かれ、人生の掛け替えのなさや切なさが表現されていましたが、気障な台詞や演技が青臭くて説得力が感じられず、登場人物達が観客を置き去りにして感極まっているように見えて、物語の世界に入り込めませんでした。

役者の立ち位置やダンス的な動きや、小道具の扱い方・置き場所といった視覚的要素にラフさが感じられ、もっと洗練して欲しかったです。用いる色を無彩色のものに限っていたのが良かったです。

生演奏のバンドが入っていたのに打ち込み音源の曲が多かったのが勿体なく思いました。

人形の家→庭

人形の家→庭

重力/Note

横浜市開港記念会館(神奈川県)

2014/12/03 (水) ~ 2014/12/04 (木)公演終了

満足度★★★

切り詰められた表現
シンプルながらも洗練されたヴィジュアル表現が印象的な、70分程度に圧縮された『人形の家』でした。

大幅にカットされてはいるものの戯曲通りに展開し、仮装舞踏会の衣装や手紙といった小道具は一切用いない構成・演出で、『人形の家』を知っている人でないと少々分かり作りとなっていました。
時代がかったデコラティヴなプロセニアムに囲まれたステージからファッションショウのランウェイのように通路が客席の上に張り出し、その先端に小屋のフレームが建ち、舞台奥にはグランドピアノが置かれた中で、感情を乗せない人工的な緩急を付けた台詞回しで対話の台詞もモノローグのように語り、動きは非常にゆっくりで、独特の雰囲気を生み出していました。
最後のノーラとトルヴァルのシーンになってようやく向き合って対話らしく話すのが印象的でした。

講堂の備え付けのブザーが鳴る度に全身黒の衣装の役者5人が横一列に並び、照明が一段階ずつ落ちていく表現は戯曲との関係は良く分かりませんでしたが、会場設備の使い方としては独創的で面白かったです。
通常の入口から入るのではなく、2階客席から舞台裏を通って1階客席へ案内されましたが、そのことが建物ツアーとしてしか機能していなくて、作品との関連が見えて来なかったのが勿体なく感じました。

講堂の外のノイズがうるさくて、台詞が聞き取りに難かったのが残念でした。

星ノ数ホド

星ノ数ホド

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2014/12/03 (水) ~ 2014/12/21 (日)公演終了

満足度★★★

並行宇宙
一風変わった構成を用いた作品で、偶然性や選択について考えさせられました。

養蜂家の男と物理学者の女のラブストーリーが台詞や立場を変化させながら同じ場面が繰り返されて、様々な選択肢を提示しながら物語が進み、それとはまた別の時系列のシーンが挿入されるという入り組んだ構成ですが、わざと分かり難くしている訳ではなく、すんなり理解できるように演出されていました。
後半は重い展開になって行くものの、単純にお涙頂戴な話にはせず、他の選択肢を仄めかして、運命について考えさせていたのが良かったです。
多元宇宙論や量子力学の話と作品の構成を絡めていたのが洒落ていました。

同じようなシーンを毎回同じように、しかし初めてのように演じることが要求される作品ですが、浦井健治さんも鈴木杏さんもフレッシュな雰囲気があって魅力的でした。

エッシャーの絵画を連想させる階段のループの内側に大きな木が象徴的に立ち、外側には屋内・屋外の様々な場所が散りばめられた舞台美術は、脚本の内容に適したデザインだったとは思いますが、中途半端なリアルさが安っぽく感じられ、もっと本物らしくするか、あるいは抽象的にした方が良いと思いました。

鼬 いたち

鼬 いたち

シス・カンパニー

世田谷パブリックシアター(東京都)

2014/12/01 (月) ~ 2014/12/28 (日)公演終了

満足度★★★

女の闘い
昭和初期の東北の村を舞台に人々の欲や健かさが描かれていて、女性の強さが際立つ作品でした。

借金の抵当に入った屋敷を巡って人々が群がるところに、十年前に村を出ていった先代の家主の娘と、南洋に出稼ぎに行っている現在の当主である男が帰って来て秘密の約束をすることから話が動き出し、それぞれの思惑が明らかになっていく物語でした。

奇を衒った手法を用いずに役者の演技をじっくり見せるタイプのストレートな演出で、鈴木京香さんと白石加代子さん、峯村リエさん、江口のりこさんとの凄味のある対話に引き込まれました。
男性陣はコミカルだったりどこか抜けていたりと、女性のキャラクターと対照的でした。

奥行きがある空間に存在感がある大きな柱・梁が配された舞台美術が印象的で、独特の空気感を生み出していました。
照明は室内らしくない人工的なライティングをしていましたが、抑制が利いていて不自然さを感じさせなかったのが良かったです。
BGMは最初と最後と転換の時だけ用いられていましたが、転換時の曲が洋風だったのには違和感を覚え、全部和風にした方が良いと思いました。

【Dance in Asia 台北・凱旋公演!】ILLUSION〜記憶喪失で鈍痛中のテンプル〜

【Dance in Asia 台北・凱旋公演!】ILLUSION〜記憶喪失で鈍痛中のテンプル〜

リクウズルーム

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2014/11/29 (土) ~ 2014/11/30 (日)公演終了

満足度★★★

意味のあるナンセンス
東京と台北、演劇とダンスのコラボレーションを安易な所に落ち着かせず、敢えてそのまま舞台に乗せたような取り留めの無さが新鮮でした。

東京の役者3人と台北のダンサー3人がある場所に連れて来られ、コミュニケーションを取ろうとしても上手く行かず、外にも出られない状況を描いていました。昨年のアジア舞台芸術祭のテーマだった「米」を引き継いだ内容で、異文化コミュニケーションの難しさが支離滅裂な展開の中に表現されていました。日本語、中国語、英語、字幕が錯綜してカオスになっていく様子が圧巻でした。
『ゴドーを待ちながら』や『ハムレット』の引用があったり、駄洒落的に宮城聡さん、平田オリザさん、青年団、早稲田大学の名前を持ち出したりして、表層的には悪ふざけに見える中に国際文化交流や舞台芸術に対しての批評性が見え隠れするのがスリリングでした。

宙吊りシーンのワイヤー装着の為に舞台下手にブースが設けられていたり、ラストに客席に向かってテープ発射装置を用いたりと、敢えて一発芸的なことにお金を掛けているのが楽しかったです。

上野水香プロデュースバレエ Jewels from MIZUKA

上野水香プロデュースバレエ Jewels from MIZUKA

神奈川県民ホール

神奈川県民ホール(神奈川県)

2014/11/29 (土) ~ 2014/11/29 (土)公演終了

満足度★★

プティ作品と定番古典
上野水香さんがプロデュースしたガラ公演で、海外の大物ダンサーも出演していたわりには地味な印象を受け、物足りなさを感じました。

『オープニング』(構成・映像:高橋竜太 音楽:G.ガーシュイン)
手前の紗幕に投影した映像に合わせて動く趣向は面白かったものの映像のセンスが好みではありませんでした。

『レ・トロワ・ジムノペディ』(振付:ローラン・プティ 音楽:E.サティ)
様々なリフトを淡々と見せる作品で、所々に新鮮な振付がありました。一番有名な第1番をカットしていたのが残念です。

『パリの炎』よりパ・ド・ドゥ(振付:ワシリー・ワイノーネン 音楽:B.アサフィエフ)
回転や跳躍が連続する作品で、踊りは丁寧ではありましたが、もう一つ突け抜けた感じが欲しかったです。

『QLOCK』(振付:高橋竜太 音楽:SINSKE)
新作初演で、男が女に話しかける一瞬の長さを描いていました。ジャズダンス的な振付は良かったものの演劇的表現が安っぽく感じました。

『瀕死の白鳥』(振付:マウロ・デ・キャンディア 音楽:C.サン=サーンス)
有名なフォーキン版とは異なる男性ソロで、所々にぎこちない動きが入るのが印象的でした。床の狭いエリアだけを照らす照明が美しかったです。

『シャブリエ・ダンス』(振付:ローラン・プティ 音楽:AM.シャブリエ)
2組の男女デュオで踊る作品でしたが、あまり印象に残りませんでした。

『ジゼル』より第二幕のパ・ド・ドゥ(振付:ジャン・コラーリ/ジュール・ペロー 音楽:A.アダン)
ほっそりとしたスタイルの渡辺理恵さんの重力を感じさせない動きが幻想的でした。

『白鳥の湖』よりアダージョ(振付:レフ・イワーノフ 音楽:P.I.チャイコフスキー)
安定した表現で美しかったです。

『ドン・キホーテ』第三幕よりグラン・ディベルティスマン(振付:マリウス・プティパ 音楽:L.ミンクス)
ガラ公演にふさわしい賑やかな作品で、高揚感がありました。柄本弾さんが際立っていました。

『チーク・トゥ・チーク』(振付:ローラン・プティ 音楽:I.バーリン)
ジャズに乗せて踊るショウピース的作品で、公演全体を締めるデザート的扱いが洒落ていました。

『フィナーレ』
各作品の1シーンの静止ポーズを四角いスポットライトで照らしていく構成で、ユーモアがあって良かったです。

吉例顔見世大歌舞伎

吉例顔見世大歌舞伎

松竹

歌舞伎座(東京都)

2014/11/01 (土) ~ 2014/11/25 (火)公演終了

満足度★★★

夜の部鑑賞
有名な作品の3本立てで、充実した内容で見応えがありました。

『御存鈴ヶ森』
俠客と若衆の出会いを描いた物語で、前半の盗賊との立ち回りでは顔や尻が削げたり、首や手や足が切れたりとスプラッター的な表現が目白押しですが、陰惨にはならずにコミカルに描かれていて楽しかったです。後半は動きの無い会話の場面が続きましたが、台詞回しに引き込まれました。

『勧進帳』
染五郎さんの弁慶デビューで、声も動きも安定感のある演技でした。最後の幕外では間の取り方に嫌味が無い素直な雰囲気があって印象的でした。吉右衛門さんの義経は台詞はあまりなく座っているだけの時間がほとんどでありながら存在感がありました。

『義経千本桜 すし屋』
源平の争いごとに巻き込まれて思い違いによる悲しい結末を迎える物語で、コミカルなやりとりが繰り広げられる序盤から、心の葛藤を描いた終盤まで場面転換が無いまま1時間40分程続きますが、求心力を失わない舞台でした。人間味溢れる権太を演じた菊五郎さん、権太の母おくらを演じた右之助さんが良かったです。

ハムレット

ハムレット

Theatre Company カクシンハン/株式会社トゥービー

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2014/11/19 (水) ~ 2014/11/24 (月)公演終了

満足度★★★

もどかしい演出
台詞や構成はほとんどいじらずに、映像や1人2役といった趣向で個性を打ち出した、熱気とスピード感のある3時間越えの上演時間を気にさせない演出でしたが、演出意図が分からない部分が所々にありました。

ハムレットの父の亡霊がガスマスク姿だったり、ハムレットが国外に出される先がイングランドではなくジパングとなっていたり、ト書きにあるファンファーレを軍鑑マーチで表したり、ベルリンの壁崩壊やソ連解体の映像が流されたりと、政治的な含みを持たせていたもののメッセージとして何が言いたいのか伝わって来ず、もどかしさを感じました。
オフィーリアが清純な少女ではなく、ケバケバしい格好をした不良少女的なキャラクターとして描かれていましたが、そのようにした理由が分かりませんでした。

上部には5台のモニターがあり、舞台上や客席のライブ映像を映し出していて(奥の壁面にもプロジェクターで投影)、監視社会である現代を暗示していたのだと思いますが、もう一歩シェイクスピアの戯曲と絡む表現が欲しかったです。

傾斜した張り出し舞台で、一番奥が塹壕のようになっていたり、床下にスペースがあって墓掘りの場で墓として用いたりと、狭い舞台を巧みに活用して様々なシーンを表していたのが良かったです。

ハムレットを演じた河内大和さんは一般的なハムレット像とはかなり異なる雰囲気でしたが、気が狂った振りをする演技が嵌っていて、魅力的でした。

『ワン◆ピース 2014』『十三夜』

『ワン◆ピース 2014』『十三夜』

Co.山田うん

シアタートラム(東京都)

2014/11/21 (金) ~ 2014/11/24 (月)公演終了

満足度★★★★

新旧2本立て
過去の作品の再演と新作の2本立てで、両作品ともハードな振付ながらも身体能力を見せるだけではない、作品としての芯の強さが感じられました。

『ワン◆ピース 2014』
男性7人(2人は補助的な出演)による作品で、白い床の上に黄色い観音扉が付いた移動可能なブースが5台置かれていて、その中に出入りしたり、配置を変えながら展開しました。
ミニマルな電子音、体操的な動きから発展していく振付と幾何学的なフォーメーションによる、物語性の無い抽象的な作品ながらも、次第に熱を帯て行く構成に引き込まれました。
前後が異なる色のTシャツを着替えたり脱いだり、ブース内部が光ったりと鮮やかな色彩が印象的に残りました。

『十三夜』
赤~オレンジの衣装を着た女性ダンサーと緑の衣装を着た男性ダンサーによる、うっすらと物語性が感じられる作品で、ヨーロッパ的にもアジア的にも感じられる独特なアンティーク感が漂っていました。
いくつものグループに分かれての群舞に迫力がありました。アクロバティックな動きや素早く激しい踊りが続く体力勝負的な振付ですが、静的な印象がありました。
こちらもミニマルな音楽ながらもオーガニックな響きで魅力的でした。

バルカンのスパイ

バルカンのスパイ

日本・セルビア演劇交流プロジェクト

ブレヒトの芝居小屋(東京都)

2014/11/21 (金) ~ 2014/11/23 (日)公演終了

満足度★★★

疑心暗鬼
共産主義国家ならではの話でありながら、政治体制や貧困から生じる悲喜劇というテーマは今日の日本にも通じるものを感じました。

下宿人のことを西側のスパイだと勘違いし、仕事を辞めて生活の全てを下宿人の尾行・調査に費やし、家族までも巻き込んで行く男の姿を描いた物語で、物事を自分の都合良く解釈する様子が滑稽でした。最初は夫の方を変に思っていた妻が終盤で夫の側に付く場面が恐ろしかったです。
ラストでは壁が崩れ落ち、主人公の空虚な心を象徴していて印象的でした。
物語自体は面白かったのですが、受けを狙った衣装や小道具の演出はわざとらしくて違和感を覚えました。

舞台を枠取る赤いベルベット生地のプロセニアムアーチが古ぼけた感じを出していて良かったです。屋台崩しでプロセニアムも壊した方が社会の枠組みの崩壊を暗示してる効果的になると思いました。
セルビアの音楽(おそらく)をふんだんに用いていて、東欧独特のエキゾティックな雰囲気が漂っていました。

日本で上演されるヨーロッパの戯曲はドイツやフランス、イギリスが多く、東欧の作品はあまり取り上げられませんが、他のセルビアの作品も観てみたく思いました。

トーキョー・スラム・エンジェルス

トーキョー・スラム・エンジェルス

Théâtre des Annales

青山円形劇場(東京都)

2014/11/14 (金) ~ 2014/11/24 (月)公演終了

満足度★★★

お金と家族
貧富の差が拡大し、経済的破綻が目前となった近未来の日本を舞台とした作品で、現実味がありながらも、演劇ならではの趣向も盛り込まれたバランスの良い作品でした。

証券会社に勤める母と、店を失いラーメン屋台を営む父とその息子を中心に、証券会社とスラム街という対照的な世界が並行して描かれていて、お金や経済について考えさせる内容でした。
小学校の給食の牛乳瓶の蓋を例えにして経済のシステムを説明したシーンが変にお勉強的なモードにならなく自然な感じだったのが良かったです。
経済についても家族のドラマについても、もう少し掘り下げて描いて欲しかったです。

狂言回しとして設定されたキャラクターやラーメン屋台の登場シーンといったケレンを効かせた演出が所々にあり、経済という堅い内容になりそうな物語に程良くエンターテインメント性が盛り込まれていて楽しめました。物語の中心となる3人以外は、両極端な2つの世界の対照的な役を1人2役で演じていたのが印象的でした。

BGMとラジオニュースを模した録音の声のバランスが悪くて聞き取り難い時があったのが勿体なく思いました。

ダイドーとエネアス

ダイドーとエネアス

プティ・ヴィオロン

大田区民プラザ(東京都)

2014/11/18 (火) ~ 2014/11/18 (火)公演終了

満足度★★

物足りない演出
桐朋音大と東京芸大の学生による、イギリスバロックを代表する作曲パーセルのオペラの上演で、実演の機会が少ないバロックオペラを聴くことが出来て良かったです。

楽譜が消失して台本のみが後世に残ったプロローグの部分を、パーセルの他の器楽曲の演奏とテクストの字幕の投影を交互に行う形で再構成していましたが、せっかくの舞台上演なのに字幕を眺めるだけの時間が何度もあるのは勿体なく思いました。演奏と字幕を同時進行にするか、あるいはプロローグは本編と関連が薄いので丸ごとカットしても良かったと思います。
本編は舞台中央に布を山状に広げた美術のみで、特別な解釈や置き換えをしないオーソドックスな演出で進行しました。人が多く出てくるシーンでは意味が感じられない小芝居が多く、煩く感じました。

ベース照明が明るくて会場の壁がそのまま見えるのが安っぽく感じました。もっと暗くして歌手をスポットで照らした方が雰囲気が出ると思いました。

演劇としては物足りなさを感じましたが、器楽も声楽も充実していて聴き応えがありました。
いっそのこと演奏会形式での公演にして純粋に音楽だけを聴く形にした方が楽しめたと思います。

白神ももこ(演出・振付)× 毛利悠子(美術)× 宮内康乃(音楽)『春の祭典』

白神ももこ(演出・振付)× 毛利悠子(美術)× 宮内康乃(音楽)『春の祭典』

フェスティバル/トーキョー実行委員会

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2014/11/12 (水) ~ 2014/11/16 (日)公演終了

満足度★★★

近未来の日本の再生
様々な振付家によって振り付けられている名曲が、白神ももこさんならではのユーモアセンスで彩られ、独特の雰囲気を生み出していました。

客席を囲んだダンサーやエキストラによる、小さな物音から動物の鳴き声、人の話し声に変化していく、声のパフォーマンスの後にストラヴィンスキーの音楽が始まり、学校の制服的な衣装を着たダンサー達が様々な伝統芸能や民衆芸能をコラージュしたようなダンスが展開しました。第1部の終曲の前で一旦音楽が止まり、桃太郎の寸劇が演じられ、終曲に続いてそのまま第2部に突入し、草原にカモフラージュしたギリースーツを着たダンサー達が不気味且つコミカルに踊り、曲の最後で全員が舞台奥に引っ込んだ後、全身白の衣装に着替えで静かに客席を通って捌けていく途中で終演を知らせるアナウンスが流れて終わりました。

前半は静と動の対比が鮮やかで、印象的なシーンが多くて引き込まれましたが、桃太郎が演じられた辺りからは何を表現したいのか分かり辛くて求心力が弱まっていたように思います。
振付自体は変拍子が多用された音楽に沿った、見ていて気持ち良い動きがあったり、逆にビートの激しい部分であまり動かない箇所もあって魅力的でした。
舞台奥に向かって緩やかに登り坂になっていて一番奥が堤防のようになっている無機質な舞台美術とロビーに展示された美術作品に繋がりがあって、劇場に入った時点で作品の世界になっているのが良かったです。

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