クッキー・ママの観てきた!クチコミ一覧

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時をかける稽古場2.0

時をかける稽古場2.0

Aga-risk Entertainment

駅前劇場(東京都)

2017/03/22 (水) ~ 2017/03/28 (火)公演終了

満足度★★★★★

2014年の初演版からさらにバージョンアップしたリメイク作品。
稽古場で見つけた時間移動アイテムを使って、まだできていない台本をめぐって時をかけ回る劇団員達の姿が爆笑と涙を誘う。

特に前半の掛け合いは、観客の笑いのツボを押しまくりで、劇場全体が笑いに揺れる一体感が楽しい。
でもこれ、コメディだから、というよりはアガリスクだからかな、と。
コメディのセオリーを踏襲しているのだと思うけれど、緻密に計算された間合いやリズムは、アガリスクリズム、というか、アガリスクスタイルというか(勝手に命名)、独特のものがある気がする。

また、台詞のない俳優さん達の動きもとてもよい。
皆、舞台上でずっと緊張を保っていて、その人物らしい動きをしている。それでいて、物語の進行を妨げない。俳優さん達も、演出家も、群像劇をとてもスマートに創っていると思う。

物語が大きく動く後半からラストにかけては、情報量が多くて、私自身は少し疲れてしまった。登場人物が増えた分、役の要素を分け合った部分もあったと思うが、その分少し散漫になった気がする。
ラストに向けての盛り上がりと、カタルシスを感じられたら、もっと良かったな、と思った。

とはいえ、この物語の中の人物達を観ていると、「今」、「この瞬間」をひたむきに生きていることを感じさせるもので、胸がいっぱいになった。

作者や演出家、劇団員達が、
「今、自分たちが一番関心のあること」
「今、一番やりたいこと」
をやれるのが、小劇場の良さだと思うし、それを観客が受けとって、心を動かされるという幸せな体験ができるのが、小劇場の醍醐味ではないかと思う。
そういう意味で、私の胸に「青春」という文字を灯してくれたこの作品に、星5つ!

皆、シンデレラがやりたい。

皆、シンデレラがやりたい。

森崎事務所M&Oplays

本多劇場(東京都)

2017/02/16 (木) ~ 2017/02/26 (日)公演終了

満足度★★★★★

演技巧者達が繰り広げる会話の妙と、イタさや苦さも含んだ笑いを大いに楽しんだ。後半に向けてどんどん加速していき、ラストシーンにはカタルシスも感じさせる。根本宗子さんの勢いを感じた。これだけ突き抜けていると気持ちイイ。キャスティングもぴったりで、それぞれの魅力が十分発揮されていたと思う。

「足跡姫」~時代錯誤冬幽霊~

「足跡姫」~時代錯誤冬幽霊~

NODA・MAP

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2017/01/18 (水) ~ 2017/03/12 (日)公演終了

満足度★★★★

江戸時代の芝居小屋を舞台に、伝説や史実、現実と空想が“ことば”を媒介に重層的に展開する物語。入り組んだ展開の中から、芸術と権力、肉体とともに消えてしまう芸のはかなさや観た者の心に残る強さ、中村勘三郎さんへのあふれる想いなどを読み取った。
俳優さん達の演技も衣裳もあでやかで、目にも楽しい舞台だった。

陥没

陥没

Bunkamura/キューブ

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2017/02/04 (土) ~ 2017/02/26 (日)公演終了

満足度★★★★

何となく予想していたのとはちょっと違って、ファンタジー要素もあるコメディだった。毒気の少なさが物足りなくもあったけど、登場人物達の会話の妙のケラらしさは楽しめたし、ほっこりと温かい気持ちにも。キャストも装置も豪華で、贅沢な作品だった。

わが家の最終的解決

わが家の最終的解決

Aga-risk Entertainment

シアターKASSAI(東京都)

2016/05/04 (水) ~ 2016/05/15 (日)公演終了

満足度★★★★★

希望と絶望が織りなすノンストップ・コメディ
新たな名作の予感!
ナチスドイツの占領下のオランダを舞台に、ゲシュタポの青年が、自分の正体を隠しながらユダヤ人の恋人をかくまっていることで巻き起こる、ホロコーストを背景にしたシチュエーションコメディ。
シリアスな題材なのに、劇場は爆笑の渦。
笑いの中にも悲しみが、絶望の中にも希望があって、笑いと涙で翻弄されるけど、観終わった後、残るのは大きな満足感だった!

ネタバレBOX

ゲシュタポの青年ハンスと、ドイツから呼び寄せた使用人のアルフレッドの、いかにもシチュエーションコメディっぽい始まりからの、オープニング。
不鮮明な、白黒の記録写真(?)の映像をバックに流れる、ワルキューレと結婚行進曲のアレンジが、観客に、あの事実を突きつけ、逃げ場のない設定に追いこむ。
ここで、もう、勝負があった気がする。

そこからの1幕目、登場したヒロインのエヴァが、ウェットでないのがまた良くて、熊谷さんの、大胆さと爽やかさと可愛らしさがとても良かった。
一緒に住むことになったエヴァ父の藤田さんの頑固さとキュートさ、エヴァ母の前田さんの優しさと母親らしい鋭さが魅力的で、安定した演技力が物語を支えていたと思う。
そして元カレのおもしろさと巧さ・・・津和野さんの集中力はすごい。つい、表情を追ってしまった。

ハンスの姉の、鹿島さんの、さっぱりしているけど、洞察力が鋭いところが良かったし、姉の夫の、伊藤さんの細かくてちっちゃい人物像が私的にツボだった。
そして、レジスタンスの男、淺越さんが、屁理屈を言い出すと、「キターーー」と心で叫んでしまう。

たびたび苦情を言いに来る隣人のヘルマン夫婦。こんな状況なのに、夫の悩みがまたおかしい。山田さんは、気弱で可愛い夫だった。沈さんの、実年齢よりずっと上に見える、妻のサンドラのイライラ感は見事だった。

ここで語られる重要なハンスの思いと、ドイツ大使館勤務の義兄の主張との対比も、おしつけがましくなく提示されて良かったと思う。

2幕目は、ハンスの同僚の友人が訪ねてくる場面で、ここは、勘違いや嘘、ごまかしが炸裂して、もう、ホロコーストもの、ということも忘れてただただ笑いの渦に巻き込まれる。
友人、ルドルフの塩原さん。前々から、(良い意味で)狂気を秘めている感じがしていたけど、今回、クレイジーさが炸裂。制服姿が格好いい、という声も多し。
同じく友人のカールの斉藤さんは、いつも爽やかな風を巻き起こす。可愛らしさがあって、軽いタッチの演技が明るい笑いを生み出すところがいい。
ハンスに恋をしているリーゼの榎並さん。可憐の一言だし、偏見がない人物像がよく出ていた。

山岡さん演じる、娘思いで、どこか優しさも感じさせるハンスの上司が登場してから、事態はシリアスになっていって、ハンスも窮地に立たされた後、どうするのかな・・・と思っていたら、なるほど、そういう手があるか!と思った。
最後のハンスとエヴァのシーンは、切なくて涙を誘われた。

ゲシュタポに所属しながら、ユダヤ人の恋人を助ける、ということを観客に納得させるには、甲田さんの無垢で優しいキャラクターが生きていたと思うし、物語の結び目になる、使用人、アルフレッドは、全編に渡って、もう、八面六臂の活躍で、矢吹さん、お疲れ様です!と言いたい。

3幕目、終戦後。
このエピソードがアガリスクがアガリスクたるゆえんで、秀逸だと思った。
ハンスとエヴァの恋の結末も、そうなるだろうな・・と、納得いくし、胸に切ない思いが残る。立場が変わった歴史の皮肉も示されて、ここは、映画「ブラックブック」のオマージュかな、とも思った。
そして、最後の大オチ・・・「まいりました!」と思ったし、ホロコーストVSコメディの確固たる勝負がついた瞬間だったと思う。

アガリスクエンターテイメントの、「悲劇を悲劇で終わらせず、喜劇に転じさせることができるか」という、果敢な挑戦は、成功に終わったと私は思う。

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