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アンダーグラウンド・アンソロジー

アンダーグラウンド・アンソロジー

イマシブ

シアターKASSAI(東京都)

2021/07/22 (木) ~ 2021/07/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

2013年1月バンタムクラスステージ短篇集(https://stage.corich.jp/stage/40885)で上演された2作と、女優主催イベントのために細川博司が書き下ろした1作からなる3本の短編オムニバス。
過去に観ている2作の面白さは分かっているので作品に不安なく観劇。
観劇してから分かったことだが3作には2人が銃を向け合うという共通のシチュエーションが出てくる。その割に銃声が響くのは1作のみ、2発だけだ。それが3作を通してほどよい緊張感をもたらす構成になっているように思う。

3作とも洋画の吹き替え風セリフ満載でいてそれが浮つかない、不自然にならない細川作品の味をしっかりと孕んでいる。緊張と弛緩のコントロールがなされ、観客は一緒に緊張したり緊張を緩ませたり。そうやって翻弄されるのが気持ちいい。暗転明けから緊張の続く最初の「几帳面独白道化師」→暗転明けロリイタ服を着た女性2人が銃を向け合う異常な光景とすぐに始まる心地好いセリフの応酬に惹きつけられる「ステイルメイト」→全体の構造が見事に完成された「ジャガーノート」。3作の並びも良かった。

劇場での公演は本日までだがアーカイブ配信は後日開始。一見の価値あり。

ネタバレBOX

(※敬称略)
上記に書いた銃声は1作目「几帳面独白道化師」でのみ鳴るが光らないので「バンタムクラスステージじゃない」と思える笑(バンタムクラスステージでやるなら銃声にあわせて光が明滅し、薬莢の落ちる音が聞こえることだろう)(このとき2回撃たれる福地教光の撃たれる演技・こときれる演技が当たり前に良い)。1作目で銃声を響かせておくことで、2作目・3作目でもいつ発砲されるか分からないスリリングさがある。

2作目「ステイルメイト」は初見。櫻井しおりの声音遣いが素晴らしかった。アニメ声優をされているとのことで納得。諜報員として命をやりとりする駆け引きの声と娘との電話で出す母の声を使い分け、かつ全てが吹き替え風に発せられ観客を楽しませてくれる。
安っぽいロリイタ服(安っぽく見えないロリイタ服はそれはもうお高いのです)が妙に納得できる設定。登場人物5人のバランスが良い!狙われる必然は分かったが争う必然があまり見えなかったりと甘さはあるものの緊迫感と笑いと人間の妙、いつもながら細川博司は女性をえがくのがうまい。決着についてなんとなく想像できるタイトルも良い。人物の配置が入れ替わるときにさりげなくルームメイトを守る久代梨奈演じるレイク、ちゃんと訓練を受けた諜報員だななんて思わせてくれる。なおこのレイクのコードネーム「ペインキラー」ににやりとしてしまう(細川作品によく出てくる女性工作員のコードネームである)。女性スパイものとしてかっこよく出来すぎであるが満足度は高い。メキシカン・スタンドオフ状態の長かったお二人、ぜったい腕痛いと思う、、お疲れさまでした。

3作目「ジャガーノート」はとにかく脚本が素晴らしい。4回目の上演となるが今回の出演者がベストではないだろうか。氏家蓮のキンキーからまっすぐな愛情と情熱、そして、痛めつけられているはずなのにしっかりとした頼れる男らしさを感じた(暴力を受けるシーンもうまかった)。梅田悠のペイシェンス、強さも弱さも見せてくれた。土矢兼久のダニー、流暢なセリフ運びが耳によく馴染む。福地教光のチャズ、ついにダニーを卒業したが役としては名前が変わっただけで同じ役をやっており、そのときとはまた違う円熟味ある演技を見せてくれた(同じ役でもダニーではないのだから当たり前なのだろうが)。徹夜明けの疲労が見える演技、刺されかたひとつとっても8年前と異なる見せ方。正統に細川博司が演出し笑いに走りすぎない、あくまでも登場人物達が真剣極まりない状況だからこそ笑いが起こるコメディ。ペイシェンスが真剣にダニーを罵れば笑いが起き、チャズが困惑しても笑いが起き、チャズが手でジェスチャーしながら「戻せ」と言うだけで、半ばパニックのダニーとペイシェンスが言われるまま銃の向きを戻すだけで笑いが起こる。もちろん適切な演技、適切なタイミングが図られて結果として観客を引き込み笑わせるのだ。洋画のような動き、セリフ、物語。ロマンチックで、けして難しくなく見やすい。細川作品の随を集めたような短編。惜しみない拍手を送りたい。

細川博司が気に入っている状況やセリフなど、こうして3作を連ねるだけで見えてくるのが面白かった。

なおパンフレットの作品解説および人物解説も興味深く拝見。楽しませていただきました。
「几帳面独白道化師」は2012年5月4日初演(中之島春の文化祭2012)なので初出が2012年11月19日というのは誤りじゃないかなーなんて。「ジャガーノート」第3稿は2014年8月通称ロクバンタム(https://stage.corich.jp/stage/55523)に向けてでしょうね。初演は2012年5月18日からのLINX'S04(https://stage.corich.jp/stage/33748)、再演は2013年1月短篇集ですから計算が合います。重箱の隅つつきすみません。
「アンソールド」

「アンソールド」

パピプロデュース

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2021/07/07 (水) ~ 2021/07/11 (日)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★★

アーカイブ配信を拝見。
出演者自身が主導した公演ということもあってだろう、いきいき楽しそうな姿を見られるというのは観客にとって嬉しいもの。

2年続く30を過ぎた独身女性5人のシェアハウス、アンソールド=売れ残りたちが誰も出て行かない安寧と退廃。
登場人物たちが語り合う本音のそうだよね感、梅田悠さん演じる京香の「言い合いにも入れない」自己卑下、変わりたいという欲求。からの、物語としてそういう収束をつけるのかという一種コメディのような帰結。いろいろなところに共感が落ちながら、かつ、男性の目を通した「女性5人の仲の良さはこうあってほしい」理想が入っているようなところもあってなかなか興味深かった。

舞台美術が見事で、特に窓の照明はまさしく住宅のそれ。
家、あるいは部屋というものは誰しもが知っているものだから再現をしやすいということだろうがそれが作品の見やすさにもつながっている感じがした。

アーカイブ配信は7/25(日)まで。
女性のイヤな面はそんなに無いと思う(個人の感想です)、テンポがよく自然体な演技が見やすい作品。

ネタバレBOX

売れ残りと言われたら「いや売ってないです」ってなる、本当にそれです笑。

「わかるよ」って言いがちだけどそれは発言者の自己満足だとか、
他人を見て「自分より下がいる」って安心するだとか、
あるあるにせよ真理を突いたセリフは良いですね。耳に聞きやすいです。

目線を隠し加工された声(実際には裏声)でしゃべるシーン、
もっともっと本音を出してほしいと思わせる塩梅がまた良い。
本当の「心の声」ではなくてあくまでも聞き手に対して話しているから
「話せることだけ話してる」感じがある。バランスがうまいです。

ワンシチュエーションの日常話ゆえに物語にメリハリが生まれにくいのは致し方ない。
京香の「作戦」に感じる唐突な幼稚さも、Rのどこか破綻した人格を想起させると言えば許せるか。
とにかく公演主宰のお二人に惜しみない拍手を贈りたい。
外の道

外の道

イキウメ

サンケイホールブリーゼ(大阪府)

2021/06/26 (土) ~ 2021/06/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

何気ない会話からしっかりと物語が膨らむ。
ただし、コロナ禍を引きずってか、解決しない物語のように感じられた。

劇場(客席)が明るいうちから、歪んだ扉から一人ずつ登場する人物たちが終劇までずっと舞台上にいる。
心象風景の表現だったり、同調圧力だったり、さまざまに変化する俳優たちの演技と演出を楽しんだ。

ネタバレに相当すると思うが、、
劇中で2回、劇場が真っ暗になる。
そのときの静寂、客席の集中、孤独感、台詞を聞きながら自分の身にふりかかったらと想像して感じる恐怖。
これは劇場の客席で感じるからこその醍醐味だと感じた。この部分は配信してしまうと格段に薄れてしまう。
そういう意味でも貴重な観劇経験だった。

ネタバレBOX

人間の内的世界、精神疾患、脳と人格、そういったところに立ち入って、そのまま解決せずに終劇を迎え希望をあまり感じられなかったなという印象。
ただし、登場人物たちのセリフひとつひとつに納得感はあり、後味が悪いということはない。
相変わらず俳優さんたちのレベルが高いと感じる。

観劇しながら「外の道」というタイトルのことを考えてしまった。
空腹の獣が鳴らすノドの音のような唸り、タイトルや作中の固有名詞に「獣」とは入れられなかったのだろうと思うがどうしたって「獣」を連想した。
二回目に「無」に飲み込まれるところ、怖かったなあ。お見事でした。
蝶の筆

蝶の筆

CROWNS

王子小劇場(東京都)

2021/05/12 (水) ~ 2021/05/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

6月6日追記し満足度を4から5に変更しました。
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5月15日無観客配信を1回観た時点での感想としては、
・3人の主役いずれも素晴らしい。はやく劇場で観たい。
・照明がめちゃくちゃ綺麗。○○○○のシーンこだわりすぎでしょう。はやく劇場で観たい。
・電話の描写、良い。なるほど素晴らしい情報のとりかた。
・ははあ、あの人がこうなってあの人がこうなるかー。やられた。
といったあたり。

途中まで登場人物の関係が掴みにくい。当日パンフに役の名前があるとありがたい。(でも、観ながらつい確認したくなるかも)
フライヤー現物を作らないということなので、もしかしたら当日パンフも無いのかもしれませんが、ちょっとお芝居だけでは観たあとにフラストレーション感じるかも。
なお、★4は5月15日時点でのものです。
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6月6日追記。
5月15日・16日に定点映像を視聴し話の筋を理解して17日に劇場で観劇。
まず映像と実演鑑賞では受け取るものがこんなにも違うのかというのがショックなくらいだった。
パワーがすさまじかったのだ。演劇への情熱、緊急事態宣言下での旗揚げ公演を支えるという気概。
映像でも理解したつもりだった座組の信頼感のようなものは劇場ではもっと強く感じられ、おそらくは今公演が団体初主宰となる主演兼プロデューサー塩崎こうせいをがっちりと支える結束力なのだろうと思った。これはもうスクラムだ。

・劇場にはA4両面を半分折りにした当日パンフがあり配役表がありました。もちろん主宰挨拶も。ありがとうございました。
・劇場で見たのは通算3回目、さすがに物語は把握。見れば見るほど物語はシンプルだと感じるのだが、おそらくは詰め込みすぎなのだろう。時代ドラマにできるほどの内容。
・着物の着こなしが素晴らしい。主人公3人のうち大野清志演じる木島虎蔵は和装と洋装が入り交じり1幕と2幕の着こなしも異なるため目に楽しい。女性陣の着こなしも同じく。駒子姉さんの襟の角度と厚みがすき。塩崎こうせい演じる矢代露風は袂に手を隠しがちなのも良い。さひがしジュンペイ演じる剣持のおじさんが手紙を袂にさっと隠す仕草がプロ。江里菜演じる静子も衣装が多い人物、芸妓姿のだらりとした帯に上前が斜めになった着かたが艶やか。2幕の洋装も良い。なお今作品唯一の実在の人物は登場から一貫して洋装。好き。
・照明はやはりこだわりすぎでした笑。定点配信でまったく見えなかった照明を客席でみたときは度肝を抜かれましたよ。最後にまわる照明、良いですね。
・劇伴のほとんどがクラシック曲。月明かりのシーンに「月の光」、別離のシーンに「別れの曲」、嵐の見えるシーンには「テンペスト」、カーテンコールは「蝶々」。クラシック音楽が好きな自分は気持ちよく作品に没入できました。
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以下ネタバレBOXへ追記。

ネタバレBOX

上記に「○○○○のシーンこだわりすぎでしょう。」と書いたのは「月明かりのシーン」でした。
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公開されているあらすじから、もっと関東大震災を掘り下げるのかと予想してしまっていたがそんなことはなかった。
これは良い意味でも悪い意味でも(こちらの勝手なミスリードなのだが)肩すかしをくらった気分。
なんとなく、関東大震災をみんなが生き延びて(もっと大きい災厄がこの先あるにしても)希望を持って生きていく姿を見せることで、コロナ禍をみんなで生き延びようというメッセージを受け取ったような、そんな気がしている。
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6月6日追記
上記に書いたように物語のボリュームは大きい。特に後半はいろいろごちゃっとしていたかなあ。筋はシンプルなのだが所見時は正直頭の上に「?」がたくさん浮かんでいた。
露風の「おじちゃん」という呼びかけがとても素朴で良い。が、それゆえに当初は血縁ある「叔父or伯父」とミスリードした。兄の上官だった、それだけの「おじちゃん」だったんですね。
前島さんの英語、何を言っているかわかっていませんごめんなさい泣 たぶん分かりやすく言ってくれてると思うんですが。

物語の山場はいろいろあると思うが、最大の山がちゃんと露風のところに剣持がやってくる場面とコンクールの結果にあるように感じるのが演出の妙だと思うし座組の作品読解力によるものと感じる。
全ての登場人物に見せ場がありながらも適材適所、突出しているのはちゃんと主人公になっている。そういった総合的な見せかたこそが手練れの腕の見せどころなのかもしれない。
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・矢代露風(塩崎こうせい)
 声音と表情でつくる感情表現が繊細で丁寧。
 不自然な演技ではない、矢代露風というひとがそこに生きているただそれだけ。心地よかった。
 露風と兄・露運の演じ分けも鮮烈。
 新聞社で露風だけ正座している場面がいかにも現在とは違う感じが出ていてよかった。
 ラストの笑顔に救われ、ラストの台詞にここから先の彼を思う。
・青山千太郎(末原拓馬)
 着流しの襟ぐりが開きまくっているのに品がある透明感。
 恵まれた生まれに才能、誰もが羨むものを持ちながら満たされない本人の苦悩が
 重すぎない案配でしっかり漏れ出していた。
 千太郎だけが編集長を「藤堂さん」と呼ぶのがすき。
・木島虎蔵(大野清志)
 正直に申し上げてこんな大野さんを見たかったという感想。
 優しく不器用な青年を好演。
 千代に別れを告げられるシーンの静かに悲しみを受け入れる感じがたまらない。
・編集長(福地教光)
 ネクタイの印象が強すぎて衣装替えが無かったのが残念笑。
 主人公3人を見守る器の大きさ、目に映る範囲の人間くらいは守りたいという正義感。
 彼の報道が前島を動かし物語を動かしたというのがうまい物語である。
 完全に物語の中で生きる"登場人物"としての演技。堂々とした編集長っぷりだった。
・田島さん(有賀さやか)
 日露戦争で夫を亡くした未亡人。
 当時に未亡人が生活していくために女性が職に就けるようにする風潮があったと聞くが彼女が新聞社で記者をするのもそういうことなのだろう。
 これからも空白を埋めるように世間にしっかりしがみついていってほしい。

以下追記予定
ブレインズ・グラフィティ

ブレインズ・グラフィティ

イベント企画OZ

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2021/04/14 (水) ~ 2021/04/18 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

物語の着想や屋台骨は良いが、いろいろと突っ込みどころが浮かんでは頭の中を駆け巡ってしまい物語に入り込むことはできなかった。
作品を完成させることは簡単ではない。一本の脚本を書き上げたことは賞賛されるべきことと思っているが、その上で物申したい。本作は脚本家と呼ばれるような人物に添削してもらうべきだ。大人の世界でこういうことが許されるか。自分の経験だけでは世界を書くことはできない。創作するのなら小説でも映画でもドラマでもそれっぽいゲームでも新聞でもいいから知見を広げるべきである。(なんのことを言っているのかはネタバレBOXへ記入)
作品の帰着点や進展は「よくある」ものであったとしても物語の着想は新鮮だし主人公が止めた歩みを再び進める良い話だった。作品のメッセージもけして悪くない。だが、満足いく出来ではないのだ。脚本も、演出も、演技も、どこか薄っぺらい。これだけの登場人物がいればそうもなるだろう。ひとりひとりをしっかりえがき分けることだけでも大変で、そこから深くもぐるのは至難の業だ。少しひねればもっと良くなる。初演ではなく再演とのことだが、まだまだ伸びしろのある作品だった。


気になったマイナス点を2つ。
1.劇場に到着してまず目に入ったのが長蛇の列。開演15分前だった。来場する観客全員がチケットを持たない状態で来るのだからそれを捌くのは難しい。それゆえに開場が開演の45分前だったのだろうが指定席であれば観客は早く劇場に行こうとはなかなか思わないもの。運営や出演者が早めの来場を呼びかけることがあっても良かったと思うし、振り込みで支払った観客にはチケットを郵送するようにしていればここまでの混雑にならなかったのでは。密を避ける、接触を避けるのが良いとされている昨今、現金の受け渡しすらも忌避すべきというキャッシュレスに追い風が吹く情勢の中、見通しが甘かったと言われても仕方がないと思う。
2.キャラクタービジュアルやパンフレットのデザインが良くない。見る気をなくす。デザイナーを雇うべきだし、もしデザイナーを雇ってこれだったのならばそのデザイナーに再勉強を促したい。それほどの出来である。


あ、あとですね、公演ページご出演者さんのところに福地教光さんのお名前を追加いただけますか。よろしくお願いします。

以下ネタバレBOXへ。

ネタバレBOX

突っ込みどころはいろいろとあるんですけども。
まずは月島社長。盗作だめぜったい。劇中で申し訳ありませんでしたって言ってるけど、これは訴訟案件でしょう。書いた人、松岡氏、あなたは、これ(登場人物がパクられる)を許せる程度のものを書いてるんですか? 作家として、想像できませんか? どういう気持ちで創作されていたんだろう……申し訳ないですが分からなすぎて頭がついていきませんでした(個人の感想です)。開発の前に契約を交わすべきだし、自分を救ってくれた小説家をあんなふうに勧誘します??? 正直に言って、月島社長については、いろいろな場面で困惑しました。

火渡先生のメンタルの弱さ。完璧主義なんだろうけどもろい。これはある。あるけど、火渡先生にまでスポットを当ててるから作品の軸がぶれる。もちろん、先生良かったねの場面にほっこりするし、救いがあるのはうれしいのだけど。観客を困惑させるくらいの強烈さにする必要はなかったかな。

サンプル5名がなかなかやんちゃ笑。まあこの5名はゲームだと思ってるもんなあ。しかし随所でイライラさせられました苦笑。

登場人物の中で最も不幸な立場にあると言っていい玲。彼女にもいらつかされるがそれは彼女にとってはここが現実だから。彼女に突きつけられる事実、あまりにも配慮がない。物語の展開のためだろうと思うとやりきれない。要するに、随所に作劇の都合を感じたということだ。

いい人に見える玲の父親だが、突き詰めればエゴで動いている。陽本は月島社長が夏樹の作品を盗作していることを知っていただろうか。おそらく知りはしなかったのだろう。娘をあきらめきれない思いから出資をする善意の人物だが、彼は知らぬまま盗作という犯罪に荷担していた。
なお陽本の「融資をします」という台詞には少々の違和感。彼は資金を出すつもりがあるだろう、だが返済を望んでいるだろうか? 「融資をします」ではなく「出資をします」「資金を出します」が適切では? (重箱の隅をつつくような話で申し訳ない)
あきらめきれなかった娘の元気な姿に動揺しながら嬉しさを隠すような表情。娘が舞台に登場するとその姿を追い父親の表情になる。厳しい父親だったことへの後悔、娘への愛情。そのお芝居が、観客に「いつ何があるか分からない。今を大切にしなければ」と思わせる一端に、しっかりなっていた。

きらきらしたAI搭載NPCたちとプレイヤーたちが仲良くなっていくなんて素晴らしい着想だし、障がいのあるひともゲームの中ではのびのびと自由に、という開発動機だって現実にもあっていいと思うし。良いところがたくさんあった。あったけれど、起承転結ありきの印象を受けたことと、上記のような困惑があったことで満足度は低かった。いろいろなところを、もっと良くできるはず。演劇の裾野は広い。間口を広げず狭くしたっていい。次回作もきっと誰かに刺さるものを作っていただきたいと思う。
サンサーラ式葬送入門-普賢篇-

サンサーラ式葬送入門-普賢篇-

feather stage

シアターKASSAI(東京都)

2021/02/04 (木) ~ 2021/02/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

Bを劇場で、Aを配信映像で拝見。
初演を観ていてお話は分かった上で鑑賞。

本来の脚本は全て男性だったので、今回全員女性という変更があったことでどんな作用が起こるのか興味深かったが。緊急事態宣言の発出により稽古期間が短くなったこともあってかややパワー不足を感じた。
残念なことに演技を観ながら初演の俳優の演技が脳裏にちらつくこと多数。そんな中、主人公梶さんとヤクザの情婦しのちゃんは説得力があったように思う。女性になったことで「すぐに大金を用意するなんて無理」からの「命を売る」にリアリティが出た梶と、本当に親分さんの愛人であると自他が認識している立場であればこうなるのかもと思え衣装も良かったしの。他の役にはちょっと無理を感じるところがあった。そのために、ファンタジー感が拭いきれなかった印象。

とはいえ久しぶりに劇場で観劇できたこともあり楽しく拝見した。

サンサーラ式葬送入門-自在篇-

サンサーラ式葬送入門-自在篇-

feather stage

シアターKASSAI(東京都)

2021/03/11 (木) ~ 2021/03/21 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

初演を知っていて、一ヶ月前に普賢篇を観ているので話の流れは充分に分かった上で鑑賞。普賢篇と対になるちょっとした工夫・劇伴曲の変更が作品を新鮮に見せてくれた。

期待していたご出演者の演技に大変満足。
細川演出は俳優の個性を伸ばすようなところがある(と個人的に感じている)ので今作もとても楽しく拝見できた。

以下ネタバレ。

ネタバレBOX

観客の反応が気になりながら作ったという初演とは異なり、今作は作品に自信を持って作り上げたもの。いろいろなシーンによりメリハリがついていたように感じた。

出色のシーンは幸村先生を送るシーンか。「送る」はすなわち「殺害」である。しかし舞台上に展開される空気のカジュアルさが客席をも包んで笑いが起こる。
初演時からこのシーンは笑いの起こるシーンだが凄惨な殺害シーンであり、その前後に日常たる食事がおこなわれる異常さを感じられるか、観客として試されている気分になる。

初演より派手になった殺害シーンといえば境のシーン。斬られた場所をいたぶられて痛みに上がる境の悲鳴が流石。甲斐は標的をいたぶり、芹沢はそんな甲斐を止めるという点に人物像を垣間見た気持ちになる。
境は殺されたあとの幽霊としての演技も最高!まばたきの少ないカッとひらかれた眼、工藤が起き上がったときに数瞬遅れてすうーと半身を上げる動き。お前を恨んでいると言いたげな、こう、まさにイメージしている「幽霊」だった。

「ある男」作品の初手から自らの生命を売却しようとするこの人物は実は最初から異常人物である。それが最初から最後まで貫き通されているような演技。初演と同じ俳優が同じ役を演じているが初演よりパワフル、アップデートされているように感じた。

「あのお方」藍川青年はAとBで俳優が別。どちらもイマドキの高校生として登場するのに終盤にはまるで別人のよう。年齢相応の感じも、超越した感じもどちらも読み取らせる佇まい。普賢篇の俳優のときもそうだったが「おいで」にぞっとするし艶を感じさせてくれた。自在篇の藍川青年、学ランの下が半袖なのとても良いです。素でどきっとしました。良いです。

初演時から異色で目立つ役といえば殺し屋でありながら殺し屋らしからぬせりちゃんとその下にいる甲斐くん。今作も殺し屋らしからぬ芹沢はどこか聖人のような佇まい、慈母のごとき優しい顔で工藤を懐柔する。飄々とした初演の芹沢よりも優しさと冷静さを前面に出したような造形は俳優の内面があらわれたようで、この演技を観られる幸福を感じた。
甲斐くんのやんちゃぶりは初演と同様でありながら、より獰猛で威張りがち、チンピラ感の増した甲斐くんは長身もあいまって大型犬の様相。愛すべきキャラクターをこの俳優に演じてもらえてありがたい。

再演にあたり普賢篇・自在篇で加わったシーンはご都合主義的な感じあるが苦笑、まさに”入門”した工藤が習得した知識をつかおうとする場面ということで面白く拝見。

あいかわらず銃声にびっくりします。殺害シーン多数のエンタメ作。脚本には余白があり、説明しすぎることはしませんし正解も解釈の間違いも提示されません。ご自由にどうぞというスタンスなのかな。
作り手は好きに作るし、観客は好きに解釈する。それもまた良しと思っています。
愛する母、マリの肖像

愛する母、マリの肖像

T-works

赤坂RED/THEATER(東京都)

2020/03/11 (水) ~ 2020/03/15 (日)公演終了

満足度★★★★

非常に静かなお芝居だったことが印象に残っている。
音が少なく、客席の呼吸音までもが邪魔になるほど。だんだんと舞台に入り込んでいくと客席まで静かになっていた。が、この種類の作品では仕方のないことなのだけど合わないかたは眠くなりますよね…寝息に苦笑した時間がありました。
M0はマリ・キュリーの祖国ポーランドを意識したのかなと感じさせるスラブ系のメロディ。開幕するときにだけ舞台のある場所が輝きます。ラジウムのあかりを意識しているんだろうと分かります。そして舞台美術はまさにラジウムを取り出すために大量に必要だったといわれる岩石をイメージしたんでしょう。

しかしこういった知識がある観客には、この作品は物足りなかったのでは。
古川作品はわたしにとって2作目であるが、2作とも”ちょっと足りない”。
ただし今作では女優・山像かおりがその脚本の不足を補って余りある力を発揮していた。これこそが演技だと感じさせてくれる。冷静と情熱、マリ・キュリーの信念を感じさせてくれる。舞台の上で生きて死んだことが実感できた。
理系の知識が無いことでこの作品の観劇を忌避する必要は無い。
ひとりの女性の生き様を受け取る貴重な観劇になるだろう。
とはいえ、あまりに淡白、さらっとしすぎている感じもあって物足りない。
ただの伝記になりかねない、というか、ほとんどそうだろう。どこかで古川さんご自身がこの作品について「あまい」と記述されていたのはその通りと感じる。
☆は4つとさせていただく。

ところで山田延男について。
この名前は知らないと思ったし、お芝居を観て「そんな都合良く作って」なんて思ってしまったが。どうやら近年(ここ25年ほど)ご子息によりきちんと調べられ、ほんとうにキュリー夫妻の長女イレーヌと共同研究をし論文を発表していること、帰国後もやりとりがあったこと、初めて知ることとなった。空襲により史料が焼失してしまったことは残念である。
天才たちは相次ぐ体調不良を放射能の研究によるものと当然考えたが、証明は先のこととなる…そこに絡む感情も、山像かおりさんのマリ・キュリーはしっかりと表現されていたと感じる。

放射能の名付け親たる「キュリー夫人」を語る作品を3.11に解禁すること、その意義、挑戦には敬意を払いたい。(もちろん、新型ウイルス禍の中公演を実施くださったことにもだ)
100年前の言葉が突き刺さる。
人間の知は、未だ彼女が名付けた”息子”を制すことができない。

ネタバレBOX

作品には入り込めたのだけど、いかんせん脚本が弱い。
知っていることの羅列、並べられただけでは、ちょっと苦しい。そこはこちらの問題であるが、ううーんというのが正直なところ。

山田延男の訛りは必要だろうか。
この作品に息抜きが必要?
どうも自分の好みではない。

姉妹の確執は知らなかったが、考えてみれば無理もないこと。
7歳離れた姉妹、妹は父親を覚えていない、母親は家に居ても研究のことで頭がいっぱい。突如父親を喪った姉は母親を神格視する。科学の道をドロップアウトした妹は一家の中でいつまでも赤ちゃん扱いである自分を分かっている、身内でありながらも外側から一家を見る。
その姉妹を包み込むラストシーンには宗教歌がかかりまさに宗教画を見ている気分になった。

冒頭からほぼ平坦だった芝居がラストでだけ突出していたような印象だった初日。
これがどう変わっているか。
大阪で見届けたい。
『僕と死神くん』『KNOCK KNOCK KNOCK 或いは別れた記憶たち』

『僕と死神くん』『KNOCK KNOCK KNOCK 或いは別れた記憶たち』

ポップンマッシュルームチキン野郎

シアターサンモール(東京都)

2019/12/18 (水) ~ 2019/12/22 (日)公演終了

満足度★★★★★

PMC野郎らしさをあえて減らしたと感じられるSF仕立ての短編集「KNOCK KNOCK KNOCK 或いは別れた記憶たち」と2009年・2011年上演作の再々演「僕と死神くん」との2本立て公演。恒例の開場中(開演前)パフォーマンス15分をあわせると4時間近い芝居を観させてくれる。

短編集の巧みさに比べると再々演作の構成がご都合主義的であることが浮き彫りになるが、この劇団らしい力業を用いながらしっかりと最後まで魅せてくれた。
短編集の構成は見事。数本の短編とその合間を埋める小芝居という構成だった過去短編集から一歩踏み込み、作家の脳内に入ることで消された己の過去と向き合うことを選択する男の物語となった。SFであり、刑事モノであり。かなりシリアスに寄ったのはそのためだろう。

ネタバレBOX

「別れた記憶たち」という表記がひっかかっていた。
"分散した記憶(物語)"であるだけでなく"別離の記憶(物語)"だったのだ。
吹原作品が家族の物語をえがくのは常ながら、長編・短編集とも喪失・別離をしっかりえがいており客席からすすり泣きが聞こえるタイミングの多いこと!
生きる苦しみを知ること、死者と向き合うこと、愛すること、殺すこと。
シンプルかつ重い題材たちが心を打つ。
作家が希望を託した物語たちは当然ながら希望を宿し、
一度狂いかけた男もまたその希望を受け取ったかのように(おそらくは受け取ったのだと思いたい)自分の物語に舞い戻る。
何度も書くが短編集の構成は見事だった。

個人的には
2014年に観た短編をまたやっていただけたこと、
福地教光さんが着ぐるみで出演している姿を観られたこと
が単純に嬉しく、
また
短編集内「みにまむ」福地教光さんと増田赤カブトさんの二人芝居が
大変に、格別に贅沢な作品であったことを覚えておきたい。
2019年の観劇納めがこの公演になります。ありがとうございました。
メガネニカナウ5

メガネニカナウ5

メガネニカナウ

in→dependent theatre 1st(大阪府)

2019/12/10 (火) ~ 2019/12/16 (月)公演終了

満足度★★★★★

いやはや今回もたまらない3本否6本立てであった。
観ておいて損は無い関西小劇場のお祭り感たっぷりの公演である。

バンタムクラスステージ主宰細川さんの新作、期待通りだった。
大人の男が若者の幸せを祈ってしてやれること。
観客の観たいものを観させてくれた。

ネタバレBOX

ゲッコー!ゲッコー!ゲッコー!
この名前だけで2019年も細川作品を観られて良かったと思ってしまった。
河口仁さんの役が最初に殺害されてしまってどうなるかと思ったらなるほど!

観劇後はやたらとトム・クルーズが印象に残る笑。

勝山さんと二朗さんによる山本香織さん遣いが定番化。
しかし細川さんによる山本香織さん遣いも初めてなのに手慣れたもので
山本香織さんのすごさが浮き彫りになる。
贅沢につかわれましたね!

上杉逸平さんは3作すべてに出演されるわけだがまたその上杉逸平さん遣いも
シリーズ通してこなれてきたなあと感じる。
笑わせていただきました。
ただしシリーズが5にも及ぶと悪い意味での「慣れ」というのも出てくるもの。
難しいことだが「身内感」が悪い意味で出ないようにしてほしいと
苦言を呈しておく。

さいごに。
石畑さんの猫、最高でした。ありがとうございました。
コウト・イン・ザ・ネット 〜Caught in the Net〜

コウト・イン・ザ・ネット 〜Caught in the Net〜

ファルスシアター

シアターKASSAI(東京都)

2019/11/07 (木) ~ 2019/11/10 (日)公演終了

満足度★★★★

シアターKASSAIのコンパクトな舞台が舞台美術によりさらにコンパクトに。
そのきゅっと小さい空間をこれでもかと使い切った激しいファルス、楽しませていただいた。
スタンリー・ガードナー役福地教光さんの演技がほとばしり、お芝居に対する情熱を客席でひしひしと感じた。彼に関しての満足度は★5である。

公演全体、主に制作面で、開場前の観客に対するフォローの無さやグッズの少なさなどがどうしても気になってしまい★4とさせていただく。
ザ・小劇場といわんばかりの1公演3500円、こればかりは各団体が無理なくできる範囲のことをやってくれたら良いのであるが、のちのち見返したいものに限ってこうして映像が残らないというのは残念である。

ネタバレBOX

重婚の当事者ジョン・スミスとその片方の自宅に居候するスタンリー・ガードナー二人が主人公として物語を回していく。
結婚せず定職にもつかずすこしすっとぼけていて問題を直視しないようなところのあるスタンリーがなぜ10年以上もその家で居候を続けられているのか、それがすっきりと分かる戯曲がまずすごい。
なんともバランスの良い登場人物たち、しっかりとテンポで笑わせてくれるスピーディなお芝居。
そしてラストの「そんなんでいいのか笑」というオチ。
脚本も演出も気持ちよく、大きな拍手を送るばかりである。
キャッシュ・オン・デリバリー

キャッシュ・オン・デリバリー

合同会社シザーブリッツ

クラブeX(東京都)

2019/10/10 (木) ~ 2019/10/14 (月)公演終了

満足度★★★★

期待通りにクラシカルでおしゃれな劇空間。
ファルスらしいドタバタと優雅さとを兼ね備えた不思議な手触りの作品になっていた。

台風により10月12日の2公演が中止に。
ご関係者の皆さま、大変でしたね。
もろもろのお手続き、ありがとうございました。

ネタバレBOX

佐野瑞樹さんのエリック・スワンが自らの罪を告白する長台詞はうっとりするほど優しかった。
その後の「どうする、どうなる」という空気から一気にファルスらしいあり得ない展開へ行くのがこの戯曲の面白いところ。
ミスター・ジェンキンズの不憫さに同情し、ノーマン・バセットの振り回されっぷりにも同情したが婚約者からの純粋な愛されっぷりがうらやましく同情を撤回しそうになる笑
良い戯曲に良いお芝居で相対的に満足度が高かった。
ROBBER's LOVER

ROBBER's LOVER

ROCKA+エンターテイメント

ABCホール (大阪府)

2019/08/28 (水) ~ 2019/09/01 (日)公演終了

満足度★★★

演劇と太極拳と和太鼓とダンス。ある程度、プロデューサーのやりたいことは達成できているように感じた。
お話がどこまでも広がりすぎて最後にまとまるのか心配になりながら観ましたが、まあ、まとまった、んでしょう。
個人的には、和太鼓の力強さがもっと欲しかった。
お芝居パートは関西小劇場の名優たちによってかなり楽しく観られた。
太極拳の演舞と演劇の殺陣とがしっかりマッチしていて見応えがあった。
トリックスターの皆さまは言わずもがな。素晴らしかったです。

天守物語

天守物語

少年社中

近鉄アート館(大阪府)

2019/08/16 (金) ~ 2019/08/18 (日)公演終了

満足度★★★★

泉鏡花の戯曲をもとに改変を加え厚みを持たせた作品、2011年上演作品の再演。
舞台美術が豪勢。傾きのあるあの舞台に役者さんたちは平然と立たれるんだろうなと開演前思っていたことがまさに展開された。
衣装も豪勢。メイクも素敵。ぎゅっと密度のあるダンスは見応えあり。豪華な衣装とあのダンスとで印象は「エンタメ」なのだけど、隙の無いつくりなのは流石。

ネタバレBOX

主演・廿浦裕介さんが演じる誠実でまっすぐな若い鷹匠、お見事。貴城けいさんも廿浦裕介さんも、親しい者に見せる顔と、けして親しくないのに惹かれあって落ちた道ならぬ恋に惑う顔との違いが素晴らしかった。
廿浦さんは故人である父親も演じる1人2役。貴城さん演じる天守の女主人はその父親にも心を奪われていたという役。女主人にはさらにもう一人思い人があり、共感はできない役だったが軽薄になりすぎない演技だった。
少年社中版のオリジナルとして加わった「人を殺めた怪は鳥になる」設定のもと、泉鏡花版よりさらに重みを増した納谷健さん演じる鷹の存在が面白く、また俳優の表現としても見応えがあった。

当初上演された2011年といえば東日本大震災のあった年。理不尽に立ち向かうことや生きることへの応援を感じる作品だった。
DOGS,UNDER THE ROSE!

DOGS,UNDER THE ROSE!

メガネニカナウ

in→dependent theatre 1st(大阪府)

2019/07/09 (火) ~ 2019/07/15 (月)公演終了

満足度★★★★

楽曲とダンスが良かった。
演技は想像の範疇といった感じ。舞台上で突然着替えが始まるのが小劇場らしくて良かった。(お疲れさまでした)
問題は歌唱力。これはどんな作品でも同じ、ミュージカルであれば俳優の歌唱力は問われるべき。
あるかたのお歌には惹かれ、あるかたのお歌は聴きながら応援する。そんな感じだった。
脚本にはツッコミどころがあったけれどそれは笑って許せる程度。
全体的に見応えあり、関西小劇場の関係者が多く目にするだろうメガネニカナウプロデュース公演でこのミュージカルを上演した意義は大きかったのではないかと考える。
個人的にも、この俳優さんにこんな魅力が、と新しい発見をできた。嬉しいことである。

殿はいつも殿(しんがりはいつもとの)

殿はいつも殿(しんがりはいつもとの)

ポップンマッシュルームチキン野郎

HEP HALL(大阪府)

2019/05/30 (木) ~ 2019/06/02 (日)公演終了

満足度★★★★★

東京公演で観たあと大阪公演も観劇。
この作品を、いやこの劇団を初めて観る観客の笑い声にのせられて何度も観ている自分も初めて観るような新鮮さで笑うことができ楽しい大阪公演であった。
王子小劇場のぎゅっとした密度で感じた良さはHEP HALLでは薄れてしまうのだが、殺陣はHEP HALLのほうがのびのびとされていていくつか変更点もありたっぷり堪能することができた。横幅の広がった大阪公演では視線を左右に振らねばならず、前方の席で観ると大変さがあったし、つい次のシーンの準備されているところを観てしまうダメな観客になってしまったのであった。。
それでも物語の良さは変わらない。3年ぶりの大阪公演、大阪の観客にもポップンマッシュルームチキン野郎の良さを知ってもらえたのはとてもうれしい。

殿はいつも殿(しんがりはいつもとの)

殿はいつも殿(しんがりはいつもとの)

ポップンマッシュルームチキン野郎

王子小劇場(東京都)

2019/05/16 (木) ~ 2019/05/26 (日)公演終了

満足度★★★★★

初演を観ているので物語の骨子は知った上で観劇。
登場人物の名前が変わっているのも、ネタが変わったり増えたりしているのも、この作品をより面白くするためとわかって安心して笑うことのできる劇団であり物語である。45分の初演より90分の完全版のほうがより「しっくりくる」感じで、とても良い感触だった。
今作は舞台美術をごくシンプルにしていたのが気になったが、それだけ中身に自信があるということだろう。演劇への愛を感じる公演であった。

ミュージカル『悪ノ娘』

ミュージカル『悪ノ娘』

amipro

あうるすぽっと(東京都)

2019/04/06 (土) ~ 2019/04/14 (日)公演終了

満足度★★★★

VOCALOID楽曲から派生したミュージカル、再演を重ねに重ね見応えのある舞台作品に仕上がっていた。
VOCALOIDの知識が多少あったので大変楽しむことができた。が、小説を読み込んだりしていたらもっと場面に詰め込まれた作品愛を受け取れたのだろうと思うところもある。
そういう意味では観客を選ぶ作品だったのかもしれないが、基本的には気軽に楽しませていただいた。

獣の柱

獣の柱

イキウメ

シアタートラム(東京都)

2019/05/14 (火) ~ 2019/06/09 (日)公演終了

満足度★★★★★

なんだろうなあ、話は分からないことだらけなのだけど、とにかく上質のお芝居を観たという満足感はものすごいのだ。
ゆえに星は5つ。話が分からなくて、終演するときに戸惑うのに、星は5つだ。
美術、床の砂感がたまらない。上部にあるはずの余白は空を思わせてむしろ良い。
俳優の演技について。いわゆる悪人を演じるお二方がものすごかった。あんなに分かりやすく登場人物を憎んでしまうのに、別の役ではあのアクが無い。どういうこと、と思うほど。
会話劇で全てが浮かび上がるイキウメの濃密さ、今作も堪能した。

くるおしき綾、絢爛なれ

くるおしき綾、絢爛なれ

OG-3works

シアターKASSAI(東京都)

2019/02/28 (木) ~ 2019/03/03 (日)公演終了

満足度★★★★

出だしから漂う空気感が男女のそれで一気に引き込んでいただいた。
そういう話だと事前に公開されていたあらすじで知っていたしTwitterのクチコミからも読み取れたわけだがさすが、話の芯はそこではなかった。ミスリードのしかたが巧い。
お話を楽しめたし、お目当てのご出演者さんがたの演技も良かったという点で星はゆうゆう4点を超える。
毎度満足度の高い作品を見せていただきありがとうございます。

ネタバレBOX

三人組が引き続きということで嬉しかった。関係性はあのままか~!
観客が一息つけるところということでうまく作用していたと思う。
次回公演を決められたとのことで次作も楽しみにしています。

細川さんの考える「誠実さ」はそういうことなんだなあと感じてます笑
言葉の多さは軽々しく見える一方、言葉の少なさは相手を追い詰める。
勉強になります。

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