セールスマンの死 公演情報 セールスマンの死」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
1-2件 / 2件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    面白い。夫人役高橋恵子さんのラストの演技感動しました。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    「かつての栄光を胸にどんどん破滅していく人たち」「呪縛の場と化した家」「家を飛び出す
    息子」「父親が実質機能していない家族」……これなんかテネシー・ウィリアムズ「ガラスの
    動物園」とめっちゃかぶるな?と思って調べたら、「ガラスの動物園」の初演が1944年、
    「サラリーマンの死」が1949年とほぼ同時代の作品なんですね。

    不謹慎を承知で書くと、アリストテレスの「劣って滑稽なものを描く」のが喜劇という定義に従うと
    この作品はただしく悲喜劇といえるかも。自分たちのあんまりに拙劣で場当たり的な対応が袋小路へ
    誘い込む結果になっているのをみていると、もはや苦笑いしか出てこないよ……。

    ネタバレBOX

    アーサー・ミラーの脚本が良いのか、イッセー尾形の観察力と再現力が
    飛び抜けすぎてるのか、おそらくその両方だと思うのだけど、ウィリーの
    人物造形があるある過ぎる。

    人の話の聞かなさ、とにかく武勇伝絡みの昔話したがるクセ、誰かに
    突っかかるときの独特の口調、全てが「ある種の中高年以上の男性」
    まんまなのでビックリ。

    おそらくなんだけど、こういうある種の「男性性」を体現しちゃってる
    人って、アメリカに限らず、日本にも、それどころか世界中にいて各国で
    作品のネタになってるんだろうな……。

    観ていて一家の単純さというか、天を仰ぎたくなるレベルの短絡さに
    くらくらする。期待をかけていた息子が高校の卒業試験でポカして大学
    進学をふいにして以来、完全完璧な根無し草の生活を続けて30歳を超えて
    しまっていることにいつもふがいなさといら立ちを抱えている一方、

    息子から夢のような一発逆転劇の構想を聞かされてたちまち上機嫌で
    「15000ドル以上つかみ取ってこいよ!」なんていう。

    よくよく考えたら、融資候補者の相手って、息子と強い利害関係で
    結びついているわけでも、何らかの約束を交わしたわけでもなく、
    「ただ息子は相手に好かれていた」というすっごくあいまいで
    不確実性まんまの根拠しかなかったので、融資の相談事が15000どころか
    0で終わるだろうということは劇を観ている人ならほぼ全員分かったかと
    思うんですよね。

    思ってみると、法曹として活躍するハーバートも、自分のビジネスを
    切り盛りしてウィリーに毎週50ドル貸すほどになったチャーリーも、
    世界をまたにかけて活躍する富豪になったウィリーの尊敬する兄ベンも
    みんな好感度とかそんなあやふやなものじゃなくって自分の能力、地に足が
    つく範囲で活動して成功しているんですよね。

    みんなが分かるようなことをウィリー一家だけが分かっていない。彼らが
    掲げる成功条件は「誰かに好かれるようにしてぐいぐいセンターバック
    目掛けて突進していくガッツ」でありリアリティがない。ウィリー一家の
    周辺環境が浮世離れしているのが本作の特徴だなと思っている。

    最初に「男性性」の話をしたのだけど、1週間で200ドル近く稼いでいた
    時期も寂しさからバイヤーの女性と不倫してしまったり、自分たち親子が
    軽んじていたチャーリー&ハーバート父子がどんどん社会の中で出世して
    逆に自分を雇おうという好条件の申し出を断ってしまったり、悪い男性性と
    表裏一体化した意味のないプライドがどんどん悪い方悪い方へと押し流していく。

    その流れが、なんか運命の恐ろしさを描いてきたという点でギリシア悲劇的で
    あり、第三者からみたらなんでこの人たちここまでダメな方に面白いほど
    転がっていってしまうという点でギリシア喜劇的だなと感じた次第です。

    あと、妻のリンダはウィリーの唯一の理解者という立ち位置なんだけど、
    重篤なうつ病もしくは認知症の傾向があるウィリーにとっては、包み込む
    ようでいて逆に悪い方へ追い込んでいってるよなと……。

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