どうしても地味 公演情報 どうしても地味」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
21-24件 / 24件中
  • 満足度★★★★

    秀逸なデフォルメを隠し味に
    シーンの繋ぎ方や時間の重ね方から
    剥ぎ出される登場人物それぞれの姿に
    深く捉われてしまいました。

    作り手の作品の質感に
    さらなる境地が生まれた印象を持ちました。

    ネタバレBOX

    初日を拝見。
    冒頭の線香花火のシーンからしなやかに掴まれる。
    すっと視線がその光にさらわれて。
    その光景を原点にして物語が組み上げられていきます。

    舞台装置がしっかりと作りこまれていて
    その雰囲気から、地方の空気感が醸し出されていて。
    冒頭からのちょっと尾籠な会話なども含めた空気が
    なんともいえないぎこちなさのなかに
    場の実存感を観る側に刻み込んでいく。

    シーンの繋ぎ方にも工夫があって
    観る側に理性でリズムを作らせず、
    体感的な記憶の展開を引き出し
    舞台に繋ぎとめていきます。
    なんだろ、観る側が想像で補正するのを拒むような
    それぞれの自らの処し方や
    キャラクター間の距離の取り方(あるいは取れなさ)の
    無骨さがそのままに重なっていく。

    道具立ても上手いのですよ。
    やたら出てくるティッシュの使い方にしても
    距離感の盲目さを刷り込んでいくような
    カミニソやイカスミの異様な量にしても、
    観る側の世界を観るなかでの平衡感覚ををじわじわと失わせて。
    また、タバコの扱いなどで示唆される
    物語の外枠というか
    時間もしくは次元の違和感(近未来もしくはパラレルワールドみたいな)が
    観る側のバランスの根本を揺さぶりつつ、
    でも、そのことが観る側に物語を手放させるのではなく
    シーンの重ね方にもすがらせて
    物語の世界をたたらを踏むような感じで
    追わせていくのです。
    気が付けばどこかデフォルメを感じながらも
    その世界にそのままに踏み込んでしまっていて。
    そして、内側の世界からの視座だからこそ見える
    個性と狂気のボーダーラインに置かれたような
    キャラクターたちのベクトルの色や重ならなさ、
    さらには舞台には恣意的に置かれない
    貫かれた先の風景までが浮かび上がって。

    いろんなコミカルさがあって、
    場に置き切れないような密度の狭間があって、
    でも、それらがいつしか翻り
    観る側への鋭い切っ先へと変わっていく。
    気が付けば奇異に感じた感覚の理に
    実感を伴って浸されていて、
    シーンごとの時間の前後が、
    物語を記憶の肌触りと共に
    観る側に組み上げていく。

    初日ということで、
    いくつかの部分にぎこちなさを感じたのも事実なのですが、
    それを些細と思わせるほどに、
    ぐぐっと育つような作品の懐の深さも感じて。
    すでに、隠し味のように感じていた、
    舞台に惹かれるのではなく、
    舞台の世界に取り込まれ蹂躙されるような感覚が
    公演を重ねる中でさらに膨らんでいく予感がありました。





  • 満足度★★★★

    人生は線香花火
    「地味」と言えば地味かもしれない。
    だがこの地味さ加減は私たちの日常そのもの、人生そのものだ。
    そしてどんな「地味」の中にも人生における“個人的に劇的な展開”が潜んでいる。
    場の転換にアイデアとセンスがあって2時間を飽きさせない舞台だった。

    ネタバレBOX

    懐かしい、ちゃぶ台がひとつ置かれただけの6畳和室が
    灯篭のある純和風の庭に面して開け放たれている。
    障子の向こうは廊下。
    この部屋が、ある時は過疎地の寺院に隣接した集会所になり、
    また線香花火ビジネスでちょっと成功した、仲間3軒それぞれの家になる。
    微妙な照明と障子を開けて入って来る人を見て誰の家かと判るという、
    このアイデが秀逸で、流れが途切れずテンポも良い。

    中国製でなく日本製の線香花火を売り出したところ人気を呼んで、
    過疎の村のビジネスには補助金も下り、順調に行っていた。
    ところが言い出しっぺの二朗(爺隠才蔵)が、突然「辞める」と言い出した。
    思いとどまらせようと必死に説得を試みる博士(小島聰)。
    せっかく軌道に乗ったというのになぜ今辞めるのか。

    やがてメンバーみんなの様々な“家庭の事情”が見え始める。
    上手くいっている夫婦なんてひとつもない。
    住職(小野哲史)ももっともらしいことを言いながらとても怪しい。
    おまけに居候だか妾だかわからない元風俗の女(笹野鈴々音)と一緒に住んでいる。

    だがぐだぐだ言って迷っているうちに自分の意志とは関係ないところで
    全てが思いがけない方向へ転がり出すこともある。

    放火によって工場は焼け、花火も全て無くなってしまった。
    「好きでやってるのか、やらなきゃならないからやってるのか、わからなくなった」
    と言っていた二朗がやっぱり自分は線香花火が好きなのだと、失ってから気付く。
    だが共に働いてきた仲間も離ればなれになって行く。 
    人々はそれぞれ何かを失って終わる。

    もう少し早く二朗がなぜ辞めたいと言い出したのか、知りたかった。
    辞める理由を引っ張りすぎて、説得する博士の言動が空回りに見える。
    反対に火事の後、それぞれがどうなったのかを、もうちょっと説明してほしかった。
    あの人その後どうなったの?とイマイチよく判らなかったのは私だけだろうか。 

    謎の元風俗嬢を演じた笹野鈴々音さんが強烈な印象を残す。
    ピュアで世間知らずのような顔をして、実は人々を操る怖い女を軽やかに演じている。
    妻から逃げて居間で寝起きする新一を演じた須貝英さん、
    気弱な反面必死な抵抗、仕事は受け身というありがちな男が超リアル。
    普通の人々の代表二朗が情けなくも共感を持てるキャラとして印象に残る。
    怪しい住職の小野哲史さん、語り口が本当に和尚さんで説得力がある。
    説法が上手いと同時に悪事も平気でする坊主がとても良かった。

    人生は線香花火のようなものかもしれない。
    小さくてささやかで、でもその中には山場も事件もあるのだ。
    ちょっと満足しては、迷ってふらふらと彷徨う・・・。
    一人ひとりが持つ線香花火にフォーカスした作品に作者の真摯な目を感じる。
  • 満足度★★★★

    さすがのクオリティ
    初日初回を観劇。
    多少噛み合わない所はあったにせよ、さすがにクオリティ高い舞台です。
    やはり間の取り方が上手いのか、何気ない会話のシーンも退屈することはありません。ただ、いかんせん上演時間2時間10分は長かったです。

    舞台の使い方、場転の工夫は見る価値ありです。

  • 満足度★★★★

    大阪公演あり。
    今よりもっと窮屈になった日本の過疎の村の、不格好で滑稽な人間模様。あっという間に常識化する過激な社会制度や、いつの間にか忘れられ失われる日々の喜びを、地味目の会話にギュっと詰め込んだ現代劇。充実の2時間5分でした。

    ネタバレBOX

    欲求不満の妻が花火工場に火を付け、坊主はタバコでしょっぴかれ、中国人ハーフもつかまり。「いもづるしき」のひとことでわかるのがいいですね。

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