満足度★★★★
まず、日本ではお目にかかれない作品であろう。
日本の演劇は、日本の現代に対するマクロな視点が抜け落ちている。現代の個人を描いた作品はゴマンとあるが、現代の社会に向き合ったものは、中々、ない。社会的な対立に踏み込む恐れもあるからだろう。
が、同作は、ネット社会やグローバル化、それに伴う新たな形のナショナリズムの勃興など、諸問題を炙り出している。
テレビやラジオ、勿論、ネットなどなかった時代に、演劇が担っていたであろう風刺や、警鐘といった役割が、今でもドイツではちゃんと意識されていることが理解できた。
私自身の演劇に対する向き合い方に、一石を投じてくれた作品でした。
劇構造をヤスミナ・レザの作品(映画 『おとなのけんか』、舞台シスカンパニー
『大人は、かく戦えり』など)世界に借りてはいるが独自の展開をさせており
キャスティングの妙とそれに応えた俳優陣の熱演怪演(?)に支えられ確かに
メリハリのあるおもしろい作品に仕上がっている。
ただ、この翻訳者の訳し癖なのか普通に使われている日本語の意味合いとは
ずれているカタカナ語を逃避的に多用するため聴いていて意味が取りづらい
ところがあったり邦題のネーミングなど翻訳へのこだわりというか粘り強さ
が欲しいところ(ゲーテ・インスティトゥートでの夏のリーディング公演の時
にも感じたが)。
また、会場の制約や時間不足があったのかもしれないが、最後の場面
(原著をみないと詳細はわからないが)は、あれでは単なるおまけ付け足しに
とられかねないので演出的にもう少し工夫が欲しい。ボードへの
Der Teufel träg(e)t Hosenanzug. の原語での書き込みは、日本語上演なので
日本語表記か日本語併記をとるべきで(ゲーテ・インスティトゥートのお先棒
を担いでいるところもありドイツ語学習の宣伝にはよいかもしれないが、
正対する客席の向かい側の年配の御婦人方が口をポカンと開けて?の顔を
されていたのが印象的)、演出者自らが、Der Teufel trägt Hosenanzug.
のごとく、言葉の壁で排除排斥の一例を実践してみせてくれた舞台でもあった
(Hosenanzugはパンツスーツのことで、全文でそれを身に着けている特定の物
か者を指す作品外の暗喩の意味もあるはずで現地の観客にはピンとくるのだろうが、
日本ではこれ以上は不明。そういう意味ではまさにホットすぎる現代劇で
それゆえかえって翻訳や演出がやっかいなのもわかるのだが)。
とんでもなく面白いドイツの現代劇。約75分弱。インターネットがもたらした革新的変化に適応、反発、または乗り遅れる人類を赤裸々に描く。グーグル先生が両親より賢くなった今の、教育とは。人類は常に過渡期にあり、新たな問題にぶつかって、愚行を繰り返すものなんだな…。
満足度★★★★★
鑑賞日2017/12/14 (木) 19:00
需要と供給と秩序と性教育について概念だけが飛び交う会話劇。
この大人たちはどれだけ溜めていたんだエネルギー?
兎に角。素人でもわかる素晴らしい演出。
飛び交う会話は「割と難しい」。でも細かい演出は見ていてどれもワクワク。
モロ師岡さんの抑揚ある台詞回しもgood。
激論する単調なシーンはバランスボールや椅子に立ち上がるさまが緩和していく。
狭い空間でもしっかりと計算された演出は唸るしかありません。
ラスト"彼女"の姿に疑問も帰路中に気付く「アマルの親が欠席した理由だよ!」
同時に彼女が白板に書いた文字を書き留め忘れた後悔が押し寄せて来ました。
あと「スリッパ」。
モロさん最初は履くか履かないか迷っていたのに。
椅子に立ち上がるとき最初はちゃんと脱いで両手に持って叩いていたけど、終盤はそのまま立ち上がっていました。
場になれたのか、興奮したのか、威圧感をあえて出したのか。
うーん、気になる演出。
演出の小山さん次回作品が配布されたフライヤーの中にあり。行こうかな。
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