夏の夜の夢 公演情報 夏の夜の夢」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    人生は夢...その世界にいる間は心眼で見る
    この「夏の夜の夢」は、約420年前の戯曲...、そしてシェイクスピアの戯曲はこれ以外にも多く上演されている。その魅力は...。

    さて、当日パンフの演出・林英樹 氏によれば、今回公演は階級社会(第5幕)について言及したかったようだ。初演当時は厳然たる階級社会で、本来なら出会うはずのない貴族階級と職人階級が交わるところまで演じた。翻って、現在の日本...階級社会における意味は階級がない(と思われている)現在では無効か?と疑問を呈している。政治・官僚・財界層の政争や利権争いと明日の不安を抱えながらも日々暮らしに賢明な庶民を重ね合わせたら、この劇はどう見えるのか。

    この公演は、分かり易い展開であるが、逆に既知のもので新鮮味が感じられないのは仕方のないことか。例え、先に記した階級に拘った観せ方であっても、その意図が十分伝わらなければ既視感覚だ。

    冒頭の照明(色彩)は、雰囲気を醸し出す効果があったが、それ以降のシーンにはその魅力が感じられなくなったのが残念である。

    ネタバレBOX

    舞台は二方向(変形L字型の客席)から観るようになっており、セットは舞台側の壁にレースのような布が幾重か垂れ下がり、部分的に蔦も絡まっている。そのレースにカラフルな色彩光を照射し、幻想的な世界が広がったが...。

    この作品は喜劇に位置付けられるが、その世界観は”あれもこれも”の何でもありで、そこには矛盾も内在する。時に、人は愛する人を拒み、愛していなくても求める。それが”花の力”を借りたとしても矛盾が矛盾のまま混在する-それが喜劇で世界であろう。もっとも人間らしさを考えた時、機械と違って理論通りに行かないのが人間である。今回の劇で言えば、恋に悩むことは反理性的であるが、そこには人間らしい矛盾も見える。それは愚かしいことであり、愛らしいことでもある。シェイクスピアの多くの喜劇に道化(=愚者)が登場するが、この劇でも職人が道化役、妖精が愛し役であろうか。

    矛盾する世界では、真実・正義は一つとは限らない。物事の視点を変えると違って見える。重要なのは、心眼で物事を捉えること。この「夏の夜の夢」でも、”恋は目でなく心で見る”という有名な台詞が聞かれた。ちなみに、台詞回しの妙、テンポの心地よさは秀逸。

    気になったのが、階級という対立構図の中で、それを体現する役者の演技力に差があったように思う。貴族階級の役者陣の熱演、一方、職人階級のぎこちない(「劇中劇」という演出か?)ような感じに違和感を覚えた。

    重要なのは、心の目で物事の善悪などを見極めること。心の目が塞がれ、目先の利益や快楽といった表面だけに惑わされることが多くなった昨今、本当に大切なことは心の目でしっかり捉えること...何百年の時を経て、今の世に訴える力がある。そこにシェイクスピア戯曲の魅力があろう。

    チョコレートカンパニー改めディ・ショコラーデは、シェイクスピア作品を上演し続けている。
    次回公演も楽しみにしております。

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