7月20日18時追加あり あゆみ 公演情報 7月20日18時追加あり あゆみ」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    人生の重みが現れた『あゆみ』
    既に様々な団体によって上演されている柴幸男さんの代表作が青年座の創立60周年に合わせたアレンジが加えられて演じられ、若い役者だけで演じるときとはまた異なる魅力が感じられました。

    役者が一人ずつ何もない素舞台に現れ開演前の諸注意をアナウンスして始まり、次第に今回新たに付け加えられた前口上となってそのまま本編に突入し、最後も同様の後口上が加えられていました。

    ままごとが2011年に上演したのを観たことがありますが、その公演では役のチェンジのタイミングが小刻みで、フォーメーションや照明によって幾何学性が強調された音楽性とダンス性の強い演出でしたが、青年座版はパフォーマンス色が控え目で、普通の芝居に寄った演出となっていて、より幅広い層の観客にアピールするものとなっていました。
    20代から70代までの役者がその年齢のパートを演じるのではなく、生まれてから死ぬまでを平等に演じることによって、特別な事件も起きない普通の人生を描いた物語の普遍性が強められていたと思います。

    いかにも「演技しています」感の強い新劇的な演技スタイルに冒頭は面食らいましたが、すぐに違和感がなくなり役者それぞれの個性を楽しむことが出来て、どの様な演出や演技でも形になる、この戯曲の懐の広さを感じました。

  • 満足度★★★★

    青年座版はやや年輩者向け?/約90分
    作者・柴氏の本人演出による『あゆみ』は、2011年暮れから翌年春のツアー公演以来、約2年半ぶり。
    そのツアーを私は横浜赤レンガ倉庫で観て、『あゆみ』という作品に初めて触れたのですが、美しく感動的な公演と劇場周りの港の光景が渾然一体となって素敵な記憶をなしていて、今でも時々思い出すほど。

    その美しい思い出を温存するべく、今回の青年座版『あゆみ』は観るまいかとも思ったのですが、どう違うのか確かめたい誘惑には勝てず、また、どんな姿勢で青年座版に取り組んだのか柴氏の口から聞きたくもあり、けっきょく早々にチケットを取ってアフタートーク付きの回を前方席で観てしまいました(笑)。


    柴演出の『あゆみ』としては初めて男性キャストを起用し、しかも横長の広い舞台を持つ青年座劇場で13人もの大人数により、それも年輩者主体の座組で演じられた青年座版は、若手女優8人きりで演じられたツアー公演とは当然ながら違っていました。

    平凡な日本人女性の一生を歩くことになぞらえて描いた劇であることに変わりはないものの、まず、男性役を男優が演じることで具体性が増していたし、青年座らしいメリハリの効いた演技体で演じられた今公演は口語演劇的だったツアー公演よりもずっとパワフルな印象。
    柴氏いわく、「皆さん、まるで猛獣みたいで、あまりに自由に演技する皆さんを抑え込むのが今回のいちばん大きな仕事でした(笑)」とのこと。

    また、若手女優だけで演じられたツアー公演はキャストと同年輩のお客さんをメインターゲットにしていたのか、若者が共感しやすいよう、幼年期から思春期にかけてのくだりに時間を割いていましたが、役者陣が年輩者主体の今公演では思春期までのくだりを端折り気味にする代わりに、壮年期以降のくだりがボリュームアップされていて、年輩のお客さんが感情移入しやすい作りになっていました。


    より抽象度が高く、そのぶん客が自己投影しやすい上、こぢんまりしているぶん、“どこにでもある小さな人生”を覗き見ている感じがより強くしたツアー公演のほうが私好みではありましたが、パワフルでダイナミックな青年座版は役者陣のハジけた演技がツアー版では少なめだった笑い所を増やしていて、それはそれで楽しく、幸せな90分でした。


    ちょっと意外だったのは、この演目の命とも言うべき、リズミカルなセリフと動きで作られる音楽性が年輩者主体の座組による青年座版でも損なわれていなかったこと。
    役者陣が声と体のみで作りだす韻律が、ツアー版ほど鮮烈にではないにせよ、この青年座版にも確かに感じられたのです。


    それにしても、やっぱり『あゆみ』は名作ですね~。
    大概の人が経験する、人生の節目節目の出来事がリアルに、そしてユーモラスに描かれていて共感しやすく、観た後に人生というものが愛おしくてたまらなくなったのは、ツアー版を見た時と同じでした。

    ネタバレBOX

    青年座60周年記念公演ということで、青年座のあゆみ、そして各キャストの役者としてのあゆみが語られる長めの口上が本編の前後にあり。

    残念なのは、本編と後口上の合間が短く、余韻に浸る時間があまりないこと。

    この後口上は作品の一部という性格が強く、合間を置きすぎて中だるみするのを嫌ったのでしょうが、もうちょっとだけインターバルを長引かせてくれると有り難かったです。

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