寺山修司・作 疫病流行記 公演情報 寺山修司・作 疫病流行記」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.0
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  • 満足度★★★

    お勧めにしたのは、戯曲が寺山で演出はアングラの雰囲気を出していたからだ
     寺山 修司のオリジナルでは、キャバレーパコパコでのやり取りより、カーテンで仕切りを作り、観客からは舞台が見えないようにして演じる、閉じ込められた劇空間を実験的にやってみるというのが主眼だったとのことで、余り導入部を作り込んではいなかったということだが、月蝕版では、舞台を隠すということはしていないので、釘打ちのシーンを丁寧に演じる等の補強策を取った、と言う。

    ネタバレBOX

     この釘打ちシーンを如何様に解釈するかも観客に投げ出された問いであるが、オープニング・エンディングで用いられているシルヴィー・バルタンの「アイドルを探せ」と同様、このシーンも最終部分で繰り返される。寺山が閉じ込める、閉じ込められるに拘った、という証言がその通りなら、狙いは他にはない。閉塞そのものである。
     このように考えた時、疫病、大方、ペスト・コレラと考えて良かろうが、病原菌は何であれ、パンデミックな状態を作り出すものであれば、それで良い。疫病対策が進んでいなかった時代、発症が確認された地域は封じ込められるのが、他への感染を防ぐ最も有効な手段であったということは誰にでもわかる話だから多言を要しない。然し、封じ込められた側から見た世界はどうか? 寺山の基本的な問いは其処に在る。三沢基地の米兵の慰み者になる日本の女性を見て育った寺山にとって、これは、日本という植民地が、アメリカの玩具になって屈辱だけを貯め込む地獄の話であたハズだ。731部隊らしき医療関係者の登場といい、彼らが、自らの命を救い、他の日本人を含む多くの犠牲者を贄として戦勝国、アメリカに差し出す畜生根性といい、寺山は、キチンとそのグロテスクな日本の支配層の姿を描いている。と同時に、それに反旗を翻し、尉官を畜人として生かし続けることによる復讐も仕組まれている。シナリオ自体の持つ毒は、今も健在だ。寺山の才能を語っていると見て良かろう。
     アングラムードの演出は、それなりに面白いが、役者は演技のレベルに達していない者が余りに多い。それが原因で、明度を落としているのでは、と勘繰りたくなるほどである。良い役者を揃えて欲しい。何と言っても、幕が開いてしまえば、観客と向き合うのは役者なのだから。

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