30才になった少年A 公演情報 30才になった少年A」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.7
1-7件 / 7件中
  • 満足度★★★★

    「隠し事」の大小は人によって様々
    前科のある者複数が働く新聞配達店での物語。
    2人の前科者だけでなく、登場人物の殆どが大なり小なり「隠し事」をしていて、その重さ・大小などの基準は受けとり手によって異なるというのがミソ。
    性感マッサージ嬢だった過去を隠していた恋人を幼女いたずらの過去を持つ男が許せない、なんてところは可笑しいし、テーマがワカり易く表現されていて巧いよなぁ。
    なお、tsumazuki no ishi作品に一脈通ずる昭和っぽい装置も印象的。

  • 満足度★★★★★

    芝居の力
    前回もよかったが、今回もよかった。
    前作を見た劇場関係者?の方が、再演の声かけをしてくれての再演の運びとなった、という話を聞いた。
    いい芝居を作るとちゃんと評価されるという当たり前のようでなかなかないことだと思う。
    極端な言い方をすると「小劇場の神話」がひとつ増えた、ともいえるんじゃないか。

    前回の役者さんたちもとてもよかったけど、今回もしっかり伝わってくる芝居をしてくれた。

    いろいろな感想があふれてしまって、「観てきた!」を書くまでえらく時間がかかってしまった。
    感じたことを言語化するのがうまくできないので、よい作品を作ったスタッフや役者さんたちにうまく伝えられないのはちょっと悔しい。

    やっぱり、意識を触発される芝居(映画でもいいんだが)はいつまでも心に残るなあ。

    ネタバレBOX

    前作と比較して大きく違ったと思われるのは、主人公は感情の高ぶりやすい気質のままだったこと、宗教的要素が含まれていること。
    (登場人物も増えてるし、設定も多少変わっているしで、ほかにもあるのだが、私が印象的だったのはこの二点である)

    主人公が高ぶりやすい気質だった点で、再犯の可能性が見え隠れしてしまうので、見る側の気持ちはさらに複雑になってしまった。
    前作だと「過去の罪は関係者はともかくただ、周りにいる人はスルーしていいんじゃないか」と思えたのだけど。
    どっちがいい、とは言えないけど、私としてはさらに悩みの種が増えてしまった。

    ラストの「歓喜の歌」の使い方はよかったと思う。
    私はこの歌を聞くことでキリストは罪を許すために生まれ十字架にかけられたことを思い出した。
    許すことの是非は一概に言えないけど罪を裁くのは隣人がせんでもいいんじゃないか、と思った。
    私は身内を犯罪によって傷つけられた経験があるので、犯罪者に対して寛容になるのは難しいが、それでも多分私は石を投げることはしないと思う。
  • 満足度★★★★★

    罪と罰
    犯した罪は消えない。どんなに償おうとも、謝ろうとも、消えない。その罰を背負って生きていくしかない。そこに神はいない。あるのは罪と罰だけ。




    年初からヘビーでしたが、良い舞台でした。
    演出の都合上、1階と2階を隣り合わせることで、この様な小さな劇場ではうまく出来ましたが、もう少し大きくなるとどうするのかな。シアタートラムとか幅広いところ。再演希望ですが、少し場所は選ぶのかな。。

  • 満足度★★★★★

    観に来てよかった!
    前回公演で気にはなっていたが、都合つかず今回初見。

    小さい新聞販売店の作業場と事務所、2階には六畳一間?の和室。
    ほとんど初めてみる役者さんばかりなので、出だし、どういった役割か探りながら見ていたが、男の日常を取り巻く環境と心情の揺れ動くさまに次第に重い気持ちになったり、他愛ない話で一瞬表情が崩れる時もあったけど、その後の展開にやるせなくなったり。
    彼と周囲の人の関わり方、揺れ動く感情につい舞台の世界に入り込んでしまった。

    彼等90年代のアイドルはやっぱりあの人たちだよな、選曲ですぐにその時代背景がわかってしまう。
    出演者にそれぞれ出番があったけど、笑いの要素を入れようとしたバイト面接のやり取りは特に必要とは感じなかったかな。
    定時制だったかな、あの学校の先生はどこまで彼の事を知っていたのだろう。
    隣のバイト君の笑わせ方が、早口、がなる、リフレイン、で、いかにも関西のノリの笑わせ方だなーと思った。
    役者陣、全員素晴らしかったけど、新聞屋店長と元担任教諭の千葉さんが特に良かった。

    明るい話ではない。
    彼は全部受け入れて、誰にでも謝って、それでも生きて行かなきゃ行けない。罪の十字架を背負ったまま、彼の赦しの時間は果てしなく長い。あんなに重苦しい歓喜の唄を聞いたのも初めてだ。
    あり得ない話でもない所にまた気が重くなったが、熱のこもった素晴らしい舞台に惹き込まれた。約2時間。

    ネタバレBOX

    主役のかつて少年Aと呼ばれ、服役、改姓し出所。知人宅にひっそり暮らす30男の世間との葛藤、生活、罪滅ぼしから来る希望の行為、ルーチンワークのような日常にしたくても、どこからか綻びと噂は湧き出る。
    確かにあんなに興奮して怒鳴られちゃ、パニック障害の既往がなくてもビビる。
    彼の事件で自身も職を辞する事になった元教諭、彼女も暮しが一変するが、改姓前の彼を見捨てようとしなかった行為がやっぱり教育者だったんだなと、感心した。
    新聞屋の店長も時に荒ぶるけど、根は気弱でバカ正直さが出てていい人ぷりが伝わる。
    店長と彼の選択は、時間はかかるけどきっと報われる日が来るのではないかな、と希望を持たせたくなるような人柄とラストと受け止めた。

    今年最初の観劇にとても良い舞台を見せて戴き感謝。
  • 満足度★★★★★

    圧巻でした!
    普段観るエンタテインメントと全く違う感動と想いが心に残った舞台だった。
    感じたことは人それぞれだとは思うが…

    冒頭の宗教のくだりからすっかり取り込まれた。
    あれだけのセリフをあの迫力で観られる舞台はなかなかないかも。
    凄い!の一言。

    役者さんのレベルが高いのもこの舞台のポイント。

  • 満足度★★★★★

    演出の面白さ
    舞台が大きくなるとああなるのかということは、逆に言うと、舞台が小さくなるとああなるのかということでもあります。

    ネタバレBOX

    初演は2階の個室だけ、今回は商店街に面した1階事務所・作業場と2階個室。人の出入りがあります。

    元保護司が元中学校の先生に変わっていて、それ故に事件を目撃していた当事者として関わることになった点が一番大きな変更箇所かなと思います。

    先生も、口喧嘩していた二人を見掛けていたのに止めなかったことで自分を責めていました。そして、30歳になった少年Aを見掛けると、どうしても声をかけてしまい、それが元で少年Aの正体がバレてしまうという悪循環に陥ります。

    初演では登場人物の誰かが正体をバラしたのかと思ったりもしましたが、今回登場人物が増えたことで、出入り業者とか商店街の人達とか噂が広まる要因に幅ができて良かったのですが、要らない人も増えました。通信制高校の先生の場は少しダレました。

    新聞販売店の店長も、中学の先輩として頼りにされれば断り切れません。弁護士と接見中に逃走した男をスクーターに乗せた知り合いだって、いきなり出会って頼まれたら、ヤバい奴だしそうしてしまったのは仕方のないことのように思えます。災難です。

    店長と少年Aのそもそもの関係については初演の理由は省かれていました。少年Aは別に凶暴な少年でもなかったわけですし、これでいいと思いました。

    違う土地で過去を隠して生きるのが正解か、地元に戻って、バレても仕事を探し続けるのが正解か良く分かりませんが、店長は根性が座っています。少年Aはカミングアウトして、徐々に地域に馴染んでいくことになるのでしょう。

    そもそも、先生も目撃していたのなら、あれは殺人ではなく傷害致死、もしくは事故ということを当時から証言しなくてはいけません。どついたぐらいで欄干を越えて落ちてしまうような欄干の高さにも問題があります。

    ではありますが、元先生役の吉水恭子さんが殊の他熱く、熱演でした。
  • 満足度★★★★

    世間
    昨年9月に新宿ゴールデン街劇場でアフリカン寺越企画によって上演された脚本を
    リニューアルしてスケールを大きくしたというもの。
    主演のアフリカン寺越は相変わらずの熱量で隙のないなりきりぶり。
    新聞店に住込みで働く男の部屋を舞台にした前回の閉鎖的な設定から
    一階店舗部分と二階居室部分に分かれた舞台、
    登場人物も5人から11人に増え、確かに規模は大きくなった。
    増えたのは“世間”の人数である。

    個人的な好みと、前回公演を観ているという事情もあるのだが、
    あの極小空間での濃密な“行き場の無さ”が拡散してしまったように感じた。
    例えるなら、前回公演は岸を削るような急流だったが
    今回は川幅が広くなった分流れが緩やかになった印象。
    しかしこの重いテーマを、直球ストレートでど真ん中めがけて来る感じが素晴らしい。

    ネタバレBOX

    中学生の時、自分が描いた漫画をめぐる喧嘩から
    同級生を橋の上から突き落として死なせた32才の男(アフリカン寺越)は
    3年ぶりにその町に戻り、新聞店の住込み従業員として働いている。
    ワケありの従業員を雇う新聞販売店の店長、
    やはり犯罪歴のある同僚とその彼女、
    橋の上で起こったあの事件を目撃しながら何も出来なかった教師、
    彼を救うという名目で強引に通ってくる新興宗教の女、
    それらが入れ替わり立ち替わり訪れる部屋で、男は漫画を描き続ける。
    そしてついにここでも、男の過去が商店街で噂になり始める。
    店の存続さえ危うくなり、追い詰められた店長は
    「お前を橋の上から突き落としてやる」と迫る…。

    広くなった空間と増えた人数で描かれるのは、いわゆる“世間”というやつだ。
    彼を拒否し、あの小さな、漫画の本棚しかない部屋へ彼を追いやった“世間”である。
    その中に、前回は無かった「宗教」を取り入れたのは
    “もしかしたら救われるかもしれない”という一瞬の希望を与えて面白かった。
    だが辞めていく事務員とか、通信制高校の先生・生徒、商店街の人等
    前回登場しなかった人物が出て来ることの効果はそれほど感じられなかった。
    それら“世間一般”を一切省いた前回の方が、
    まさに“世間を狭く”生きている男の人生がくっきりと浮かび上がった気がする。
    男の現在は、世間の仕打ちの結果だからだ。

    人殺しを雇っている店などもう駄目だ、と絶望した店長が
    「お前を橋の上から突き落としてやる」と迫るところでは
    相変わらずアフリカン寺越の表情に見ごたえがあった。
    今回の方が、本当に突き落とされるような気がして暗澹とした。
    店長が「商店街の人に過去を正直に話せ、それでまたこのまま店を続けよう」と言い、
    男が「それは今までの経験からうまくいかない」と答えるやりとりが挿入されているである。
    何度も希望を持って、その都度潰された悲痛な思いがにじむ台詞だ。
    考えられるたったひとつの方法がボツになあった後の「突き落としてやる」だから
    なおさら選択の無さが胸に迫って、観ている私ももうダメなんだという気がした。

    罪を償ってやり直せばいい、ときれい事のように言うが
    実際過去に罪を犯した人と身近に接して心からそう言えるか、
    ということを鋭く問いかけて来て、舞台の“世間”を批判しつつ痛みを感じる。
    同僚のカップルには「過去は過去、今やってないなら問題ないじゃない?」と言いながら
    自分はその言葉に全く救われていないという矛盾。

    事件の現場となったこの町に、何でわざわざ男が帰ってきたのかと思うが
    それはたったひとり、彼を受け入れてくれた新聞販売店の店長がいたからなのだ。
    あちこち流れて、行く先々で過去がばれると拒否されて来た男が
    過去を知りながら「一緒に働こう」と言ってくれたことにどれほど救われたか
    その切なる思いが、危険区域での暮らしを決断させたのだと思う。

    オーバーアクト気味ながら緊張感のある役者陣が良かった。
    男の罪と一緒に自分の人生も壊れていった元教師役の吉水恭子さん、
    後悔ともどかしさに満ちたキツイ物言いが上手い。
    全編を通してギリギリの“長い間”が今回も効いている。
    シリアスな状況で時折笑いを誘うペーソスも効果的。

    前回の公演を観たのでつい比較してしまうのだが、
    何と言ってもアフリカン寺越あっての作品である事に変わりは無く、
    それがこの作品の力であると思う。
    この人、この風貌で他にどんなキャラを演じるのかなあと思った。

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