期待度♪♪♪
がんばれ!小越那津実
かんばやし!みちこ! 茶の湯文化研究会
舞台というものは,その日の客層や,客の入り具合によって,役者の当日の緊張感,出来具合に強い影響を与える。逆に,役者は,舞台に上がった途端,瞬間的に,その日の客席との距離を,正確にはかり,武装し,攻撃を始める。また,芝居には,見せる側と見る側の暗黙の意思の疎通があり,論理,良識がある。つかこうへいは,そう言った趣旨の事を述べている。
一般的には,演劇・芝居を見に行くということは,入場料+交通費に見合う満足感が欲しいものだ。貴重な時間を,はるばる見慣れぬ劇場に足を運ぶ。いい上演ならば,トイレにいくのも我慢する。客があえて,途中退席をする場合,体調が悪いか,不満があっての「舞台への挑戦」となってしまう。そういうものかもしれない。
演劇は,一回限りだから,素晴らしいとつかは言う。確かに,ロングランがあっても,実は,一回一回が少しずつ違っている。厳密にいえば,テレビ・映画・DVDで何度も見るのとは,異質の体験だろう。演劇を動画で記録し,舞台写真集に残す,そのこと事体は意味があっても,演劇における「一回性」は,別の次元に存在するのだ。
当然だが,劇場で演じられるものは,やはり,劇場で観て評論すべきだ。見ない人には,どれほど素晴らしいと説明しても,理解できない。舞台に思い入れがあるつかは,舞台装置を壊す瞬間に,いつも「空しさ」がわくという。その感傷こそが,次の舞台を呼ぶエネルギーになるらしい。ただ,次回つまらない芝居をやると,誰も見向きもしなくなる。
作家・演出家は,孤独で,初日がこわい。つかもそうだった。役者は,もう少し充実させておくべきだったと悔いる。テーマ・演劇空間はどっちでもいい,受けたか,受けなかったか,それが気になる。明朝新聞で少しほめられるとやっと余裕ができる。役者も油断すると,独走するケースがあって,怖いのだ。舞台の袖から,怒鳴りつけたくもなるとか。
参考文献:傷つくことだけ,上手になって(つかこうへい)角川文庫