鶴屋南北御伽艸 公演情報 鶴屋南北御伽艸」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.0
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  • 満足度★★★

    敷居の高い所に挑んだが
     旗揚げ公演ということで、多少、割り引かないといけまいが、生き残るのが大変難しい世界でもあるので、厳しい注文もつけておきたい。
     

    ネタバレBOX

     南北の夢のシーンから始まるのだが、その時、舞台奥に後ろ姿の朱菊丸が現れる。その立ち姿に、何も表現されていないのが、気に掛かった。結論から言えば、非常に複雑な状況を背負った女性なのだから、その怨念たるや凄まじいものがあるはず。そのエネルギーが後ろ姿に出ていないのは、それをイメージできていないからである。シナリオを一読すれば、この程度のことは直ぐ気付くはずのもの。それが身体化されていないのは、演出家にも難がある。ファーストシーンは、観客を舞台という亜空間に引きずり込む為の大事な場面である。先ず、このことに気付くべし。
     また、話の内容から言うと、この作品は、南北のというより、作家としての兄弟弟子、清玄の物語だ。タイトルを改めるか、工夫すべきだろう。
     演劇シナリオは、徹底的に論理で貫かれていなければならない。何故なら、それがダイアローグを基本として作られているからである。扱われている内容が、政治であろうと恋愛であろうと怪異譚であろうとSFであろうと経済であろうと、基本、総てダイアローグで組み立てられる。そこに論理がきちんと通っていなければ総てがワヤになってしまう。基本中の基本である。
     他の細かい点については、会場のアンケートで答えておいた。
     折角、清玄、喜兵衛らの謀については、懐の深さを示唆できているのだから、南北の道化をも更に深め、進化させるべきである。シェイクスピア作品に、道化はたくさん出てくるが、キングリアに於ける道化は、他の小物道化と一線を画す。世界を逆転させる力を持つのである。笑いには、そのような凄まじい破壊力もあるのだ。それをデモーニッシュな笑いと呼んでも良いかも知れぬ。

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