ここからは山がみえる 公演情報 ここからは山がみえる」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
1-5件 / 5件中
  • 満足度★★★★★

    ひとり語りの豊かさにひたる
    早熟な少年の思春期が、ひとりの役者のことばとうごきによって三時間で語りおろされる。
    語りのなかで言及される厖大な固有名詞は、私たちは成長の過程で驚くほど多くの人とモノと接触を持っていたということを気づかせてくれる。
    少年の成長の瞬間を鮮やかに描き出した第6場は感動的だった。

    三時間の一人語りをスペクタクルとして成立させるための役者の技術、演出上の配慮が素晴らしい。多くの人にあの濃密な語りと演劇の時間を味わって欲しいと思う。

  • 満足度★★★

    厨二
    休憩を入れて3時間20分の一人芝居、役者には敬意を表します。

    ネタバレBOX

    イギリス、さほど高くもない山々が連なるペイン山脈の麓にあるオールダムという小さな町が舞台。アダムという少年の、確か1982年12歳から1988年18歳までの地元で暮らしていた頃を描いたいくつかの章に分かれたストーリー。

    小学生のときの歴史の授業中の話からスタートしたと思ったら、いきなりペッティングの話になっちゃって、そのうち女性はみんな美人に見えるらしく相手構わずちょっかいを出してはセックスしまくりで、こいついくつなんだと思いました。

    今何歳という説明が欠けていたように思います。後から考えると多分14歳の頃にはサカリがついて、中高一貫してサカリがつきまくっていましたというガキの話でした。

    一人芝居だから相手のパンティを脱がせたりできるんですね。二人だとそれらしいことをやらなきゃいけないですからね。一人芝居の利点について納得しました。

    ただ、役者は口で説明するばかりで、身体による表現は全く無く、気恥ずかしさなどは伝わってきませんでした。

    妊娠騒動も起こしましたが、おばあちゃんの死を経て少しおとなしくなったみたいで、高校を卒業して町を出て水道会社に就職して普通の大人になっていくのでしょう。

    ところで、開演前に眠らないように促す前説がありましたが、それは余計なお世話だと思いました。いびきをかいちゃあ駄目ですが、眠らせないのはあなたのお仕事でしょうと思いました。
  • 満足度★★★★

    主人公以外の
    他の登場人物と出来事は心で観る、そんな感覚が楽しい。 一人芝居でなければ成立しないであろうノスタルジックな物語・・・。

  • 近い劇空間
    長いお芝居ですが、客席を含めた空間が素敵で、
    ゆったりとした席で楽しめます!

    太田さんのひとり芝居ですが、それが想像力をかきたてます!
    ワンマンショーをお楽しみください!

    ネタバレBOX

    客席を含めた舞台空間がバーのようになっており、
    実際、水やジュースがふるまわれ、
    テーブルにコップを置いて、劇中も飲め、
    3時間半の芝居ですが、ゆったりと楽しめました。


    おそらく、劇中で語られるスコットランドのエディンバラのバー、
    ある登場人物がゲイであることを告白するバーなのでしょうか、
    この劇も、主人公の半生の告白なのかもしれません。


    物語は、太田さんが演じる主人公アダムの12歳から18歳の回想、
    あるいは、その時々のアダムの語り、として進行します。

    (うろ覚えですが、成長につれ、一人称が僕からオレに変わったり、
    アダムの登場人物の評価が、現在形の語りで変化した、
    彼女は最高なんだ!、から、もう顔も見たくない、など。)


    その半生は、多くが女、セックス、暴力に関わるもので、
    また、主人公のイングランドの田舎の故郷で完結します。

    1980年代、
    アダムは、12歳から18歳まで、常に女の子に恋をしており、
    誰が最高だ、今の彼女はいまいちだ、などと、言い続け、
    それ以外のことはほとんど語られません。

    それ以外に語られることとしては、
    自身が受けた、隣人が行った、自身が行った、暴力、
    ふるわない学業、水道の補修という、ある種冴えない仕事に就くこと、
    また、立派な軍人であり、アダムの誇りであった、おじいさんのことで、
    彼自身の希望や生きがいなどはほとんど描かれません。

    タイトルは『ここからは山が見える』、”You can see this hill”
    ですが、作品中で山について語られるのは、二度のみで、
    物語の中盤で、彼自身が初めて直接的な暴力をふるったとき、
    この町は山に囲まれ、いつも霧に覆われ、山が見えない、
    というのと、
    物語の終盤、学校で唯一のアジア系の女の子で、パキスタン人である子と映画を見に行った時、
    その映画はイラン映画で、イラン人がトルコ、中欧、スイスに渡り、
    というものなのですが、
    この映画を観つつ、アダムは涙を流し、
    そこにいながらにして、自分の町を囲う山を見た気がした、
    と語ります。

    物語は、山に囲われた小さな町で、ほぼ完結し、
    物語全編にわたる、セックス、暴力の話題も、
    アダム自身が女好きであるのもあるでしょうが、
    それ以外にすることもない、小さな退屈な世界、田舎である、
    ということなのかもしれません。
    (主人公は、ロンドンではなく、マンチェスターにすら上京することをためらうのです!
    それだけ、都会とは距離感がある世界なのでしょう。)


    アダムが、故郷から離れた視点を持つことがわずかにあります。
    ひとつは上記のイラン映画であり、
    もうひとつは、彼が女の子と一緒にエディンバラのバーに行った時のことです。

    バーで、自分はアラスカ?(うろ覚えです)にボランティアに行く、
    といったことを言った青年が、ステージに上がり自分がゲイでエイズであることを告白し、
    周りの人がその勇気を讃え、拍手します。
    アダムはそれに感動し、ゲイでエイズであると告白した勇気を讃えるとともに、
    自分が以前、友人をゲイ呼ばわりし、いじめたことを告白します。
    アダムも、また、そのことを告白した勇気を讃えられ、拍手をうけます。

    この出来ごと、また、イラン映画を観たことにより、
    彼は、小さな世界から少し飛び出した視点を持てますが、
    結局、物語の最後には、下水道の修理業に就職することになり、
    町から逃れることは出来ません。

    また、物語中でアダムが語るように、
    彼の子供たちも、同じように、その町でセックスと暴力にまみれ、
    また、町を出られないのかもしれません。


    非常に地域に視点を置いた戯曲でしたが、
    現代日本にも、地方を描く戯曲があってもいいのかな、
    と刺激を受けました!

    上演形態としても、
    バーの中を、お客さんの間をすり抜け、
    太田さんが演技をする、といった形式で、
    役者さんとお客さんのコミュニケーションの関係が、近いように感じ、
    いわゆる劇、というより、もっと漫才のような語りかける、ショー、
    のような感じもし、楽しかったです!
  • 満足度★★★★

    会場の一体感
    1人の男の10代の生き様を会場全体で共有する、3時間半の1人芝居。上演時間の長さは全然気にならないし、演劇を普段見ないような人こそ、その楽しさを感じられるようなシンプルだけど力強い快作だと思いました。正直、具体的な地名や実在するミュージシャンの名前などはほとんど知らなかったので、わかるともっと深く楽しめるんだろうなと思いました。

    ネタバレBOX

    誰もが通る10代の多感な青春期に、体感する初めてだらけの体験の連続。女の子と付き合ってセックスするとか、身近な人を亡くすとか、理由のない全能感とか突然何もかも嫌になったりとか。一つ一つのエピソードがリアル(オリジナル戯曲が自伝的作品だから当然なのかもしれませんが)で、自分の実体験にないことが多いですが、あるかもと共感してしまいます。10代の何者にもなれるような全能感(学校の校庭で自分1人しかいない空間で自分が宇宙飛行士か冒険家になったような気になるような高揚感)から、年齢を重ねて徐々に自分の可能性が徐々に狭まっていくことへの焦燥や、自分の進路の新たな世界への希望までが丁寧に描かれていると思います。

    会場中が黒板とそこに書かれた文字で囲まれていて、出演者の太田さん演じるアダムがグルグルと客席の間を歩きながら黒板に書かれた人名を読み上げたりしながら演じるので、目の前で演技が見れてそれだけで、もう楽しい。なおかつ、観客一人一人に目を合わせて語りかけたり、問いかけたりする演出は本当に自分のために上演してもらっているような気持ちになるような贅沢で、物語にのめり込める、なかなか味わえない体験です。

    物語のクライマックスに浮かび上がるたくさんの登場人物や場所(地名)。その膨大な1人1人との関係がアダムの人格や人間性を形成するんだという事実。それは、観客1人1人にも同様にたくさんの人との関わりやつながりで今日があるんだという自明の理の再発見で、あぁこういう瑞々しい感覚、忘れていたなと思い起こされて堪能しました。

    終演後、会場に設置されたバーカウンターでビールも飲めます!時間があれば会場で、観劇後の余韻に浸りたかったなぁ。

    小劇場レビューサイトのワンダーランドにも今公演の記事が載っていて、理解が深まりました。

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