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何処へ行くギルガメシュ
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公演情報
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何処へ行くギルガメシュ
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1-1件 / 1件中
Yuichi Fukazawa(131)
実演鑑賞
満足度
★★★
「複雑怪奇な世界をコミカルに描く」
ネタバレBOX
「ご存知ですかね。移動距離と成功って比例するんですよ(中略)みんなはじーっと動かないでお金失って、私は動き続けてお金もらっちゃって。どっちが人生の成功に近づいてるかって話ですよね」
実家を出奔しフードデリバリーとして働くギルガメッシュ(ともか)は、配達先の住人(田中杏奈)が注文した手の込んだ料理の入った袋の先を固く結び、こう言いながら頑なに手渡そうとしない。よい暮らしを満喫しているのであろう住人へのささやかで悪意のある抵抗は、彼女が辿ってきた流転の日々を象徴するような出来事である。
十字架に似た線画の意匠をあしらったマントが目立つギルガメッシュは、高貴な出であるかのような言葉遣いのふてぶてしい人物だ。地下鉄の乗車ホームに迷い、バイト先の店長に時給の値上げを迫り、車中泊を咎められ警官まがいの詐欺師に金を渡すなど、やることなすことずぼらばかりである。彼女のエピソードを軸にほかの登場人物の出来事が挿話として紡がれていく。ガールフレンド(田中杏奈・二役)の父(町田誠也)に結婚の許しを得ようとするものの、断られ続けて家で延々正拳突きを続けているヒロキ(小倉佑介)に、「桃太郎」の改ざん版を物語る噺家(中禰颯十)や、電柱にからむ酔っ払いのラッパー(中禰颯十・二役)。土地を奪われたから返せと現在の所有者夫婦に迫る侵入者(小倉佑介・二役)に、働くことができず生殺与奪の権利を妻に握られていると嘆く男(町田誠也・二役)など、オチがあるわけでもない不条理な人物描写が続いていく。いったいどこへ行きつくのかと袋小路になりかかるとギルガメッシュの彷徨となり、じょじょに彼女が家を出た理由が詳らかになっていく。
本作のなかには、階級格差や男女差別、くらしやケアといった現代のさまざまな問題が織り込まれている。しかしそれらを声高に主張するというよりは、登場人物たちの行動にさりげなく感じさせる作りになっている。一貫した筋がないようで当初は混乱したが、観続けているうちにギルガメッシュの物語に繋がっていく。しかしそれよりも本作の主役は、これらの登場人物たちが暮らす奇妙な作品世界そのものである、と私は思う。ギルガメッシュを演じたともか以外はほかの出演者が数役を兼ねるという配役も、観客の誰もが作中の登場人物に自身を投影し、複雑怪奇な現代社会と地続きのこの作品に思いを馳せることに寄与していたのではないだろうか。北海道の地名が出てくるもののやや記号化された舞台設定もまた、どこの誰にも起こり得る物語という趣を醸し出していた。
作者の強固な世界観に負けじと俳優たちも皆力演・怪演が目立った。ともかはもとより小倉佑介の演じたヒロキが俊敏かつ執拗にガールフレンドとの結婚を申し出るくだりや、兄妹役という設定の中禰颯十とともかによるラップ合戦、ともかと田中杏奈が体の部位を触り合い「あたま」「ひざ」などとその部分を奇妙な声で発話するところなど、印象深い場面が多い。これもまた吹き寄せやボードヴィルのような感覚で観ることができた。
長旅を終えたギルガメッシュは、偶然出会った男(宮下諒平)といい仲になりかけるところで物語は帰結する。企み深いとはいえ手数の多い本作は、どうしても散漫な印象が残ったところが否定できない。1時間半かけて果たしていまなにを観たのかとポカンとした心地にもなったが、他ではなかなか出合えない作品であることも事実である。
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2026/05/27 20:46
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