大地の子 公演情報 大地の子」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    第一幕70分休憩30分第二幕第三幕105分。

    現代の『山椒大夫』。全てのエピソードは作家・山崎豊子が取材で得た事実を繋ぎ合わせたものだけに重厚。「小日本鬼子(シャオリーベングイズ)」=鬼畜日本の子と苛められ罵倒され理不尽な目に遭いそれでも尚且つ前だけを見て生き続ける男の姿。

    ステージ奥の中二階に回想シーン等が映る。静止した影絵のように始まり映像を投影しているのかと思うがふと動き出しリアルタイムで役者達が演じていることが判る。ざらついた幕を通してセピアなイメージが効果的。
    配役にかなり演劇通の人が関わっているのだろう。一人ひとり出演するだけの理由があり、必ず観劇後も記憶に残っている。この大作でこれをやるのは凄腕。(天野はなさんの代役で山﨑薫さんをキャスティングするのもよく判る)。

    時系列がかなりバラバラなので主人公・陸一心(ルー・イーシン)を演じる井上芳雄氏の各時代の演じ分けが大変。鬼気迫った役者馬鹿の情熱、ギラついた目付きは尾崎豊のよう。男泣き。70年代の役者の匂い立つ魅力がある。往年の映画ファンなら大好きになるだろう。凄い人気で1列目から双眼鏡で井上芳雄氏の表情を凝視する熱心なファンの姿も。

    育ての父、陸徳志(ルー・トウチ)役は山西惇氏。ただただ泣かせる。この物語の心を司る。
    育ての母、王淑琴(ワン・シューチン)役は増子倭文江さん。流石。
    従姉妹にあたる陸秀蘭(ルー・シウラン)役は山﨑薫さん。
    日本の父、松本耕次役益岡徹氏も巧み。
    みやなおこさん!
    内蒙古の労働改造所で羊飼いをしている黄書海(ホワン・シュウハイ)役浅野雅博氏のエピソードも秀逸。
    『金鶏 二番花』主演の丸川敬之氏!
    『焼肉ドラゴン』の櫻井章喜氏!
    ヒロインとなる江月梅(チアン・ユエメイ)役は有森成美みたいだなと思ったら上白石萌歌さん。アイドルみたいなキラキラしたオーラ。

    それでも何と言ってももう一人の主人公である張玉花(ツァン・ユウホワ)役奈緒さんがMVP。いつの間にこんな本物の女優に化けたのか。人間のカルマを見据えたとんでもない女優になりそうな予感。素晴らしかった。
    (勿論養母役山下裕子〈ひろこ〉さん、旦那役木津誠之氏の名助演も特筆もの)。

    いろいろと細かな不満点はあるがとにかく配役が効いている。一場毎に必ず人の心を打つ見せ場を作りガッチリ演技を堪能させる。小林正樹の『人間の條件』を一気見している気分。ガチのスタンディング・オベーションになった。

    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    都合により第二幕第三幕が繋がっている。幕が下りてすぐに上がり第三幕へ。脚本家としては休憩も当て込んで書いただろうに残念。

    山崎豊子原作は実は読んだことがなく多分ドラマ、映画も観ていない。名前だけで何となく知った気になっていた。今回何処まで原作通りなのか解らないが相当人間の嫌な部分を掘り起こす作家なのだろう。脚本のマキノノゾミ氏が描きたい部分は奈緒さんが担った。言葉を持たない者達の経験した記憶は誰にも掬い上げられることもなく無言で海の底に沈澱していくのみ。何億年何十億年誰にも顧みられず沈黙のまま。作家の仕事とは彼等の声なき声を世界に伝えることだと山崎豊子は訴える。

    井上芳雄氏は生みの親に日本に帰れと諭されるも自分は謂わば『大地の子』なのだと宣言する。経験してきた一日一日その全てが自分自身を形作ったのだと。
    結語に現在の日中関係を重ね合わせ、「『大地の子』は今、何処にいるのだろうか?」と決める。日中の現実に痛烈な言葉。どんな時代にも優しく正しく公平であろうとする者は日本にも中国にもいる。

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