ケイコ 公演情報 ケイコ」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★


     10分ほど遅れてしまった。コヘイジの女房の名がケイコなのとコヘイジが稽古熱心なこととは、当然、掛け言葉になっているのだが、コヘイジの友人、タクロウの絡み方が面白い。上演時間1時間20分ほどの短めの作品だが、いくつもの仕掛けが施されていて、観客のグレードによっていくらでも楽しい観方ができる作品である。以下、ネタバレで、いくつかその仕掛けを見ておこう。

    ネタバレBOX

     タクロウは、コヘイジの友人なのだが、女房のケイコにホの字である。それで、隙あればコヘイジを寝取られ亭主にしてやろうと虎視眈々。偶々、コヘイジに幽霊役をやったらと提案、真に受けたコヘイジが大当たりをとって、女房にも感謝されると、巡業に出た旅先で花見に誘い殺してしまう。そのまま、素知らぬ顔で帰ってきた後、コヘイジの死にまつわる嘘をでっちあげるが、死んだはずのコヘイジは、ここで稽古をすると落ち着く、というお気に入りの稽古場、押入れからぬっと姿を現す。腰を抜かさんばかりに驚き、恐れをなしたタクロウだったが、コヘイジは、まだ、稽古に夢中で死んだそぶりなど更々見せない。只、透明な霊に優るような演技を目指して稽古に励み、女房と入り浸りになったタクロウに、自分を無視して日々を過ごしてくれ、と頼む。
     だが、この前に、コヘイジは、タクロウに殺されていた。巡業公演で、出掛けた際、花見に行った先で事件は起こったのだが、その時に大きな雨が降る。そればかりか、コヘイジの死にまつわる部分では必ず雨音が聞こえるのである。観客は、このことによって、既に死んでいる、幽霊・コヘイジが、幽霊を演じ、且つ、目の前で自分の女房が、他人に抱かれる姿を見て、何にもできないことを嘆かなければならない姿を見るのである。痛烈ではないか? 雨が、時空を超えるきっかけの役を果たしているのだ。

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