劇作家協会公開講座2012年夏 公演情報 劇作家協会公開講座2012年夏」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.5
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  • 満足度★★★★

    第一部
     自分が見たのは一部のみである。然し、日本人作家、アメリカ人作家作品が交互に演じられる構成は、ほぼ、アメリカ上演と同じだという。全般的に、非常に立体感のある、上手なリーディングであったが、やはり、文化の差が出ていると感じられた舞台であった。日本人作家の作品が、どちらかと言えば、内側から発せられていたのに対し、アメリカ人作家の作品は、コンセプトに重きが置かれているように思われる。何れにせよ、初めっから、同質の感情を喚起するような作品群であれば、それは、当に同一文化なのであろうし、不整合を感じる方が、むしろ自然なことであろう。これだけ大きな傷を我が国の人々に与えた核人災である。当然、立場も違えば、感じ方も異なる。それでも、支援をしてくれた人々の心情を我々はどう受け止めるべきか? オスプレイ配備や、TPP、トヨタバッシング、原爆を落とすために、敢えて、戦争遂行に必要不可欠なインフラを原爆投下直前まで破壊せずにいたアメリカ、ABCCによって被爆者をモルモットにしたのもアメリカという国であり、現在、沖縄を中心に基地を展開し、好き放題をやって日本人に迷惑をかけているのも彼らである。無論、個々人レベルでは、良い人も悪い人もいるであろう。だが、アメリカという名がついただけで、素直な見方ができない日本人が多くいることもまた事実であろう。そういう意味では、善意の人々の行為が、アメリカという国家のアリバイ作りに利用されているのではないか、との懸念も残るのだ。
     以上のような様々な要因も含めて、観たが、作品自体は、評価すべきものが多かった。評価は、作品の出来だけで下している。

  • 満足度★★★

    終始、釈然としないものがありました
    このリーディング公演の報告を耳にした当初から、この会の理念に、何か釈然としない思いがあったので、一体どんなものだったのかと、確かめたい意味もあり、伺いました。

    この会の主旨を忘れて、純粋に、リーディング作品として、拝見した場合は、大変中身の濃い、見応え、聞き応えのあるステージだったと思います。

    ただ、最後に、青井陽治さんが、「釈然としない」とおっしゃったように、また、これを被災地で上演することに戸惑いを感じられたご様子の東北演劇人の、くらもちさんや大信さんのお気持ちを推量するにつけても、
    このリーディングが、東北の演劇人応援のためのイベントではなく、本当に、生きるか死ぬかで頑張って過ごされている被災地の方への、少しでも力になれる形での上演形態であってほしいと願わずにはいられませんでした。

    ネタバレ欄では、純粋に、作品そのものに感じた感想のみを列記したいと思います。

    ネタバレBOX

    第一部

    「残された人」…夫が帰って来るかもしれないからと、放射能で汚染された自宅を離れようとしない主婦。夫の部下は、震災の日、二日酔いで、回れなかった場所に替わりに行ってもらったためにこの主婦の夫が行方不明になったことを悔やみ、毎日、この主婦に食料を届けています。このオノという部下が、「そんなことで、死んでいいわけがない。人間が死ぬ理由は、もっと、政治的対立とかでなければ…」的な発言をします。え?私は、政治的対立なんて下らない理由で死ぬのは、部下の身代わりで死ぬのと大差ないと思ってしまいました。鴻上さんの価値観はやはり理解できないなと思いました。

    「少数の屈強な人々」…記憶を語るアメリカの作家と日本の天皇が出て来て、哲学的な会話をしていました。私の頭ではあまり理解できませんでした。

    「さようならⅡ」…オリザさん嫌いな私ですが、意外にもこれは好きでした。荒井さんと川村さんのベストコンビで、放射能で入れない地に、詩を朗読するロボットを送るお話。ロボット演劇、嫌いだけど、そういう活用なら、大賛成。川村さんが、藤村の「やしの実」を口ずさむ場面は、心に残りました。そう言えば、オリザさんと藤村には、共通性がありますね。

    「子は人の父」…内容より、吉原さんが、楢原さんにそっっくりなことに見とれてしまいました。「子供は、死人に触れて、初めて大人になる」という台詞には、同感しました。

    「北西の風」…汚染地域の自宅にしばし戻った一家のヒトコマ。ドキュメンタリータッチでしたが、それ以上でもそれ以下でもない印象でした。

    「あの頃の私たちの話」…白人の女と、日本人とのハーフであるその息子母子の確執のお話。二人が口喧嘩する時の演出が面白くて、視覚的な変化のある舞台でした。息子が母親に言う、「優しさが一番大事」という台詞は、自らの子育てで、反省させられる一言でした。

    「一時帰宅」…坂手さんの脚本、前川さんの演出は、相性抜群。こんな短い話でも、きちんとした劇構成がなされていました。蠅の羽音。残ると言うおじいちゃんの鼻歌が、心に沁みました。

    「この劇の長さはウラニウムの半減期」…ベテラン女優さんの競演で、見どころ満載。まりことみちこと、スーザン。震災時の経験を、国民性の違う身振りを交え、繰り返し語り続けるという演劇的手法に、震災の経験や怖れに、少しづつ慣れさせられる人間の宿命のようなものがデフォルメされているような怖さがありました。

    「指」…「人間の心の中は盗みで成り立っている」とか、「うまく盗めた者だけが生き延びれる」とかいう「台詞に、悪人にも五歩の魂すら感じられず、何だかただ空しさばかり感じる作品でした。死人の指を切断して、指輪を奪おうという夫と、盗みは平気でも、それだけはしなたくないと拒む妻。でも、結局二人とも、被災地で人のモノを盗むという行為自体には何も抵抗のない人達。
    こういう作品を、被災地で上演して、どうするの?と、ただただ頭の中が混乱しました。

    第二部
    「太平洋序曲からの2曲」…黒船来航に怯える幕末を震災の来襲に重ねるところからして、何か違うんじゃないの?と違和感を覚えました。出演は、青井さんが信頼する学生さん達とのことでしたが、ソンドハイムの楽曲は、プロでも歌いこなすのが難しいのに…。この作品の選択は場違い感大でした。

    「はっさく」…「人間は、気づかない内に操られてる」という台詞はその通りですが、原爆のせいで、頭のない奇形児が生まれたという、このストーリー設定自体に、こういうイベントで扱うような話だろうかと、やはり疑問が湧きました。

    「消えたイザベル」…私には難解過ぎて、意味不明でした。

    「ゾウガメのソニックライフ」…ムックさんの演出だけあって、見せ方が斬新でした。和服で、様々な言い方を役者にさせるところが、目にも耳にも印象的でした。最後まで口を開けっ放しの芝原さん、お疲れ様。

    「日本流エチケットの手引き」…ちょっとシュールで、日本人の国民性を揶揄したような作品。坂手さん演じる日本人ガイドがとにかく面白くてなりませんでした。ただ、翻訳家としては大ファンの常田さんが、ナレーションを何度もトチられたのはちょっと残念。

    「ふるさとを捨てる」…一番ダイレクトに、心を揺り動かされた作品でした。福島を離れようとしない妻に、兄も加勢に頼んで、細かいデータを上げて、何とか説得しようと努める夫。最後に、妻が、他の場所に出られない真情を吐露する場面では、きっと被災地の方の心情を、この作品が一番代弁しているような気がして、辛くなりました。

    「海の風景」…エドワード・オルビーの作品を、鈴木聡さんが朗読。私には、全く理解の外の作品でした。聡さんのお声がいいのにだけ、心を奪われて、耳を傾けていました。

    「血の問題」…坂手さんの脚本、前川さんの演出。安井さんと菊池さんの二人芝居。作品としては、超一級。まるで、別役さんの「受付」みたいな雰囲気の作品で、単独上演希望したくなりました。

    「水の中」…太平洋序曲と同じメンバーの歌唱。さして、印象に残らず。

    「危機一髪」…上に同じメンバーの歌唱ですが、こちらは、歌詞に少しだけ希望を感じることができた感じ。

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