満足度★★★★
多彩で楽しかった!
早稲田演劇週間、全7本中5本観ました。
無料で、各作品30~40分程度の内容。
層の厚い早稲田の演劇の中では、登竜門的な企画なのか、主宰(脚本演出を兼ねてる)が二年生というのがほとんど。金を払って見に行くのと違い、高校の演劇祭を見るような気分で(失礼)気軽に観られます。
● 「キリンズ」の『兄弟解散』。
吉本新喜劇を愛するという主宰の、練りに練られた脚本に唸らされた。熱もあり笑いもあり愛もあり毒もある。ラストに違和感も感じたが、その調和しない感じが余韻となって嫌いではない。
主演の長男役のハートのある演技は『一つ屋根の下』の江口洋介の過剰ポジか。うざさと滑稽さがすごく良くて、泣きそうになった。鍛えられた身体能力もすごい。
●「ポーラは嘘をついた」の『しらすがあなたを見ている』。
意外にも笑いを封印した男女の愛とすれ違いの物語。
一組の男女を二組の男女に擬して(?)、フーガのように紡がれた重層的な構成が面白い。象徴的な舞台で、照明や音楽に作者の世界観や美意識が現れ、引き込まれた。できればもう一度観て内容について考えたい。
役者さんたちが人形のようだったのは、演出意図かな。
●「un-call」の『引力に落ちる』。
「月」と「女性性」がテーマ?ちょっと甘くて、懐かしい感じの舞台。女性(うさぎたち?)三人の会話は、あまり共感できなかったが、舞台装置もほとんどないのにメルヘンの世界を感じさせたのは良い。
● 「劇団阿呆船」の『ホシヨミ』
『ひかりごけ』のようなプロレタリア演劇を思わせられて驚いた。劇団名も中高年の市民劇団っぽいが、今の学生達の中から出てきたものならかえってすごい。突き刺さるセリフ、労働者風の登場人物の存在感は印象に残った。
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早稲田演劇週間、実は昨年も行ったが、会場が一番のネックだと思っていた。
演劇をやる場というより講演会場。前席数列の後ろに広い通路があり、ほとんどの席はその後ろ。舞台がとても遠い。劇研アトリエの臨場感などとは大違い。
舞台の上でまとまった世界を作っている、客席へのストロークの少ない作品は損。
今回、そのデメリットを武器にして、小野講を最大限活用して見せた団体が現れた。それが「とろけるぱられる」。本企画の台風の目になり、動員数圧倒的トップを記録したという。
終わった公演とはいえ、以下は「ネタバレBOX」へ・・・。