満足度★★★★
素晴らしかった!
これまで観てきた学生演劇とはずいぶん違っていてびっくりした。
この舞台には、物語があった。美意識があった。
かつ、テーマを重層的に構成していく知性があった。
舞台奥を要とした扇形のシンプルで象徴的な舞台。
男女5人の囚人たちの衣装は白いスエット上下。毛布の色とあいまって、蚕棚の「まゆ」のように見える。ゆるく仕切られた独房に備え付けられた大きさの違う四角い箱が、ラストになってあるものに変化するのがうまい。
音楽も、クラシック中心ながら、腹に響くような打楽器の音が緊張感を盛り上げる。
着想は、ベンサムやフーコーの監獄論によるものだという。しかし完全に自分のものにしている。
たった5人の登場人物のドラマは過去も含めて緊密に描かれ、キャラクター性もしっかりいている。「看守様」が神になるというルカの突飛な幻想も、次第に迫力を持って場を支配する。
魅力的な謎(ミシェルとベンについて)も仕掛けてあり、グイグイ引き込まれた。
テーマは明確なのに、理屈っぽかったり説明調になる部分はない。
役者たちは、特にうまいというわけではないが、しっかりと役になっている。半端でない演出上の追い込みが感じられた。
生の暴力、特にベルトでお互いを鞭打つシーンが何度も出てくるが、空振りもあるが断然身に当てている方が多い。必然性はあるけど、身体が痣だらけになっていることだろう・・・。(私が見たのは最終日の選抜メンバーの回)
ガチャガチャ作って、そこそこ笑わせて、、鬱屈した思いを吐き出して、最後パアッと盛り上がれば一丁上がり、みたいなシロウト劇とは一線を画す。観てよかった。充実した。
今回が第一回公演という演劇集団の「チト」。主宰にして作・演出の「ちょんよんぎ」は、今回は出演こそしなかったが脚本家・演出家としての才能と情熱を見せ付けた。役者としても美声美形で魅力的。羨ましい!
同じ早稲田系の「犬と串」とともに、今後注目していきたい。