実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/09/13 (金)
女性からの視点。そして現在とつながる反戦。
舞台美術も凝っていた。サザンシアターって客席と舞台の距離が遠く感じるのですが…。
はい。観て良かったです。
実演鑑賞
満足度★★★
何のてらいもなく、真面目に愚直にノモンハン事件の愚かさを、関係者の証言であぶり出していく。辻正信の怪物ぶりがなかなか印象的だ。そういう誇大妄想的好戦家を陸軍が愛したというところに、当時の日本のゆがみが最も表れている。
終演後、青年劇場のFさんが「ど直球ですいません」というので、私は「初心を思い起こさせられました」と答えた。
実演鑑賞
満足度★★★
ノモンハン事件は戦後も長く一般的に知られることが少なかった事件で、そういえば、報道されたのは70年代だったか、と思いだした。その後、史実が明らかになってみると、事件は、中国北西部の砂漠で39年に起きた日ロの衝突で、ここで、日本陸軍は初めて装甲陸軍の威力から大陸戦争の難しさを知り、以後、陸軍は手薄の東南アジアに進出、難しいところは海軍任せでもっぱら内部抗争に明け暮れて、上層部全員が43年には負けると承知してからも二年間、国民はほっておかれ、大きな市民の犠牲を出したあげく敗戦を迎える。という日本現代史は概ね日本人は誰でも経験し、若い人も知ってはいる。しかし、この事件が、テストケースになり、関係軍参謀らは口を拭って終戦まで無事な戦線を廻ったと言うことはあまり知られていない。そのあたりのリアルな歴史事実のスジ売りの復習が第1幕1時間半で、ここは、どうと言うことはない。古川健らしくなってくるのは2幕からである。
物語の枠取りが70年代の発掘記事掲載する雑誌編集部にとられていて、始めての女性記者の登場と、事件の日本的構造は今の時代にも伝わっていることを巧みにつなげている。
この芝居に主演の女性編集者(藤井美恵子)が「男性は戦争の話になると生き生きする」という台詞があって、古川健らしい上手い台詞だと思ったが、ジェンダーをからめて今の時代の戦争にまでふれているところがさすがだ。最後の、日本が戦後80年、先進国やG20も含めて唯一銃を取っていないことも指摘していて、こういうところはするどく的をえている。
このドラマが描いた事態への批評はとてもこの場や、一夜の芝居見物で果たせるものではないが、それでも、こういう無謀な歴史の事実を思い出すことには大きな意義がある。例えば、昭和二十年代に高市早苗が今と同じ意見を言えば殺されかねない国民の怒りの対象になっただろう、そういう民族の底辺の記憶にまで達しているところが古川健らしさである。
この舞台の良いところは一点ここだけで、スタッフ・キャストも手を抜いたわけではなく全力を尽くしたのだろうが、全般には情報を伝えるのに忙しく、チョコレートケーキの終戦シリーズのような現代劇としての成熟に乏しかったのはやむを得ない。この劇団としては
大きめのサザンシアターだがやはり客席は薄い。失敗の研究、というのはなかなか出来ないものではあるが、60年も続いたという劇団ならでは、と言うところもあって欲しい。今回は古川健を、とにもかくにも連れてきて、ノモンハンを話題にしたたことを評価する。
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/09/18 (水) 14:00
座席1階
結構ハードな会話劇である。歴史や戦争に関する劇作では名高い古川健らしい緻密な物語だった。テーマは「なぜ、戦争を止めることはできないのか」。歴史上、最も困難であると思われるこの命題に若き女性編集者が挑んでいく。その材料となるのが、太平洋戦争開始直前の1939年にあったノモンハン事件だ。
劇中でも出てくるが、ロシア軍と衝突した現場の国境地帯は湿地と草原が広がるエリアで、軍事的な要衝ではない。「どうしてこんな場所を巡って」と後付けでは感じるが、それだけにこの戦闘で失われた両軍の何万もの命は「何のために」というむなしさが残る。日本軍にとってはもちろん「失敗」であったが、当然、ロシア軍にとっても「失敗」であっただろう。
戦争の教訓を学ぶ、特に先の戦争での「失敗」を学ぶことは平和な未来を築くには不可欠だ。特に日本では、失敗を学ぶという取り組みに欠けている。劇中でも当時の作戦参謀の生き残りが語るが、辻政信というエリート参謀が暴走した、誰も彼を止められなかったのが失敗だったと一定の結論が出されている。
だが、なぜ辻を誰も止められなかったのか。それは、勇ましい作戦を「無駄だ」と反対する、戦わない選択をしようという主張を周囲ができなかった「空気」なのではないか。戦わないとの決断はひきょう者の考えであり、日本男子としては、天皇の軍隊としてはあり得ないという空気だ。辻を止めようとして自らの出世を棒に振る恐怖もあったであろう。でも、戦争を止められない本当の理由は、周囲の空気を読んで行動する同調圧力ではないのか。
この舞台では、失敗の教訓は同調圧力だと匂わせる場面もあるが、はっきり言っていない。関東軍の暴走、陸軍の東京の司令部が何もしなかったこと、勇ましい進軍のニュースを垂れ流したメディア。それを推した国民。いろいろな要因がせりふの中で指摘される。だが、そうした要因ももちろん「失敗」なのだが、失敗を失敗だと言い出せない同調圧力が関東軍にあり、陸軍にあり、国民にあったからだ。だから、その直後、外交的な失敗とされる日独伊三国同盟につながり、国を破滅させる「失敗」となる太平洋戦争につながっていく。ノモンハンを止められる空気がすこしでもあれば歴史は変わったかもしれない。いや、もっともっと前、明治維新から列強に追いつこうと富国強兵を重ねてきた日本が、欧米列強に伍するとしてアジアの国々を次々に侵略していくのを当然だという「空気」を変えられていたなら、というところにまで行き着く。
古川らしい脚本であったが、で少し物足りなさも感じた。もう一つ、演出に招かれた鵜山仁は客席の目の前とか舞台のあちこちに戦車や軍艦の模型を配置して、「何が起きるのだろう」と期待を抱かせたが、結局これらの模型は装飾のような感じで終わってしまったのは残念だった。
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/09/13 (金) 19:00
座席1階1列13番
価格4,800円
タイトルからは戦争の歴史物のように感じられますが、話はもっともっと奥が深いです。今の日本でもしぶとく生き残っている日本の組織的体質、特に「日本のエリート組織の欠点」を活写した極めて完成度の高い作品でした。