子どもと大人と食堂と。 公演情報 子どもと大人と食堂と。」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2024/07/03 (水) 14:00

    児童養護施設を出た兄妹の物語。保育士になった妹と、自動車修理工場で働く整備士の兄が、子ども食堂の手伝いをするまでの心の動きを丁寧に描いている。

    児童養護施設に入る子どもたちの多くは、親の虐待が原因だ。この兄妹も、シングルマザーの母親が困窮し、恋人の男に逃げられないようにとわが子を意に反してネグレクトするという場面が登場する。それでも、幼い兄妹は母親と暮らしたいと訴えたが、母親としても児童養護施設に預けるしかもう、選択肢はなかった。
    舞台はこの母親が余命いくばくもない状態で入院しているというところから始まる。児童養護施設を出た子どもたちはケアリーバーと呼ばれる。18歳で施設を出ていきなり自立せよと言われてもアパートを借りる、仕事を見つける、などいくつもの高いハードルを乗り越えなければならない。登場する兄妹は何とか自力で暮らしているが、兄は母親と没交渉だが妹は母親のところに通っているという状況が描かれる。この妹の胸の内が、劇の進行に伴い、兄を引き入れて子ども食堂に関わっていくという重要な心の動きになっている。

    ネグレクトをする母親でも、子はずっと慕っている。外には出さなくても胸の内の奥深くにしまい込んでいる。今回の舞台が客席の感涙を絞ったのも、やはりこの兄妹の思いである。また、希望を持って劇場を出ることができるエンディングもいい。

    下北沢の小劇場楽園は、入り口にドーンと柱があって、どうしても客席は左右のウイングに分ける形になる。演出は非常に難しいと思われるが、今作では柱を挟んで入り口のスペースも有効に使い、照明を駆使して場面を区切っていくなど見事な演出がなされていた。自然な会話劇であるという台本の秀逸さに加えて、舞台を途切れさせない演出。社会的な問題意識も明確で、社会的養護の関係者はもとより、児童養護施設を知らないという人たちにも是非、見てもらいたい。

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