エアスイミング 公演情報 エアスイミング」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    これは凄い。精神病院版『ショーシャンクの空に』。作者の言わんとしていることがハッキリと伝わった。演出もシンプルで的確。『Fly Me to the Moon』が耳に残る。

    1924年、聖ディンプナ精神病院に収容されたペルセポネー・ベイカー(江間直子さん)、一日一時間だけ共同作業として他の収容者と掃除をさせられる。階段か風呂場。2年前からここにいるドーラ・キットソン(樋口泰子さん)が仕事を教えてくれる。上流階級のお嬢様で、すぐにここから出られると信じているペルセポネー。延々と続く日々の中、ドーラがあの手この手で励ましてくれる。

    金髪のウィッグを被ったポルフ(江間直子さん)と魔術の本を読み耽るドルフ(樋口泰子さん)。映画スター、ドリス・デイに憧れて歌い踊るポルフ。男性以上に戦場で活躍した歴代の女傑の素晴らしさを語り続けるドルフ。別人格を演じることで鬱屈した精神を解放させる試み。

    この二組の物語が交互に続いていく。モデルになった女性達と同様、50年以上も。

    江間直子さんは原田美枝子っぽい物静かな感じで登場するが、ポルフになった途端、豹変して狂い咲く。その躁状態の爆発ぶりはアミダばばあすら連想した。そして歌がメチャクチャ上手い。マジで歌手レベル。度肝を抜かれた。

    樋口泰子さんはどことなく香坂みゆきっぽい。この人の受けの芝居が重要で、じっと江間直子さんを補佐する。ドルフになっても変わらず抑えたままで、ペルセポネーとポルフの変化を際立たせることに徹する。このおかげでクライマックスの爆発がドーンと跳ね上がる。

    驚く程、良い出来。是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    聖ディンプナは7世紀、アイルランドの王女。父王からの近親相姦を拒み、逃げたベルギーのヘールにて処刑された。その地にて精神障害者が治癒されるという奇跡が起こり、キリスト教徒が巡礼に訪れるようになる。今も精神疾患を持つ人々が地元住民の家で一緒に暮らす治療法が行われている。

    ギリシア神話に登場する美しい娘、ペルセポネー。それを見初めた冥界の王、ハデスに拐われて冥府へと。大地と豊穣の女神である母デメテルは怒り大地に実りをもたらすことをやめた為、飢饉が起きる。それに困ったゼウスが介入し、ペルセポネーの一年の半分を冥府、半分を地上で暮らすようにした。デメテルは娘が地上にいる時だけ実りをもたらすことにした為、世界に四季が訪れた。

    ポルフがドルフの足を洗ってあげるシーンが堪らなく美しい。自分的にはここで満足。その後の浴槽に顔を突っ込んで自殺しようとする話などはあんまり入って来なかった。(元々『ショーシャンクの空に』もそんなに好きじゃない)。

    人生は監禁された精神病院の中、絶望して自殺したとしても目覚めた先はまたここ。死のうが生きようがこの灰色のコンクリートの中、尊厳も自由もはなから何もない。だったら唯一の武器、妄想で楽しくやろう。この下らない世界を想像力で謳歌しろ。この空気の海で溺れ死ぬことはない。気楽に泳いで楽しくやろう。終着駅が絶望だと知っていても構うことはない。
    「絶望という名の地下鉄に乗り込んで、鼻唄まじりで行くぜこの世界を」
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    この作品を初めて観た。もっとわかりやすい話かと思っていたが、なかなか理解の難しい混沌としたストーリーだ。不条理劇のようで観やすい作品ではない。事前に話の前提や登場人物たちの振る舞いの理由をよく把握してから観るのがよいのだろう。そんな作品だから、演ずる者への要求と負担は大きいと思うが、今回の2女優は見事にそれを果たしている。

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