夜会行 公演情報 夜会行」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.6
1-5件 / 5件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    決して多くはない台詞に込められた繊細な思いが胸を突き刺す。
    心情の破裂を表現するかのような演出がたまらなく切ない。
    あんなこと自分は絶対に言わないと思いながらも深層ではどうなのか?と問われているよう。
    今観るべき芝居であることは疑うべくもない。良かった。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2024/04/25 (木) 14:00

    入場してまずはこの会場の特質を活かした幅広い舞台美術に眼を瞠る(さらに開演後に上手手前の二階席/オペブースへの階段や下手端の階下の楽屋への階段も装置として使う貪欲さ(笑)に感心)。
    それに加えて「通話場面」(ネタバレBOXへ)を筆頭とした演出の違い、そして言わずもがなの演者の違いで鵺的の初演版とはかなり印象が異なる。
    さらに「後味が悪くないのは鵺的として珍しい」と思った初演に対して、彼女たちなら酷い目に遭っても互いに理解し支え合っていけるだろうが、そういう相手にめぐり逢えず一人で悶々としている方も世間には少なからずいらっしゃるのだろう、と現実に目を向けることができたのはプレアクトならぬアフターアクトが続く中での終演によって「彼女たちの(そしてあなたたちの(?))人生はこうしてそのまま続いてゆくのですよ」と示した演出によるものではなかろうか?
    あと、5人の人物の個性の違いにアニメーション映画をキッカケにハマった某漫画作品を想起。(謎)

    ネタバレBOX

    クライマックスの通話場面で、誕生パーティーを盛り上げるために持ち込んだ沢山の風船を割ってゆくこと、そして暗い舞台上で装置の一部が赤くチカチカすることは「内心の怒り」の視覚化ではなかろうか? 演出の妙味だねぇ。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    2日目のお昼公演を観劇。
    4名のレズビアンの元に訪れた1人の恋人といくつもの提起。5名が過ごしたある夜の物語、そして、"ある夜"にも"レズビアン"にも決してとどまらない問題がガラス窓から街へと現実へとシームレスに続いていく。

    ガラス窓の向こうには植物に囲まれた部屋の一室、うっとりと見惚れてしまうような美術に迎えられ、そのまま食い入るように5名をただただ見つめ続けた85分。コロナ禍が初演なだけあり、物語や演出の端々から時節を想起させられました。ガラス窓はそれもあっての(感染対策も加味した)演出だったのかなと受け取りつつも、物語やその心象風景においてもそれ以上の効果が発揮されていて、素晴らしかった。3年前にこんな凄まじい演劇(初演)を見逃していた自分つくづく信じられないと悔やみつつ、今回たしかに目撃したガラス越しのあの風景を、あの一夜を、その手ざわりを知らない自分にはもう戻れない。戻らない。途中、理由のわからないままの涙を二度流した。そこにはきっと大切なことが隠されているはずだから、時間をかけて紐解きたい。
    静かに激しく流れる一夜を映すようでも照らすようでもある照明、怒りや焦燥、心の騒めきと伴走する音響。そして、饒舌な時も寡黙な時も、息づかいから瞬きまで、人間がそこに存在することによって生じる全て、感情の源流その在処を伝える様な5名の俳優の素晴らしさと、そのような細部こそが伝えるものの大きさととことん向き合った演出。全てが全てに隙間なく接続した圧巻の総合芸術でした。好きな俳優さんがたくさん増えました。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    今作は2021年7月、サンモールスタジオにて鵺的が公演。その時の演出家は寺十吾氏。まさに天才の仕事、メチャクチャ衝撃を受けた。ここまで練らないと成立しないのか、舞台芸術の奥深さに打ちのめされた。(未だにあれを、可能ならば観劇初心者に体験して貰いたいと思う程)。
    今作は『動物自殺倶楽部』の赤猫座ちこさんが活動休止する為、同時にユニットも一旦打ち止めとなる節目的作品。だが赤猫座ちこさんが心因性の体調不良にて降板。代役はアンダースタディの太田ナツキさんに。

    あるマンションの一室。お洒落な室内には鉢植えとプランターがお店のようにズラリと並び観葉植物が飾られている。中央のベランダのガラス戸を左右に開ける。そこだけ外からオレンジ色のライトが当たる。

    太田ナツキさんの家で同棲している木下愛華(まなか)さん。今夜は木下さんの誕生日パーティーが開かれる。太田さんは料理中。木下さんは物憂げな表情で理由なき不安感と焦燥感に気持ちを尖らせている。
    銀行員の日野あかりさんが到着。神経質な程、コロナ対策に拘っている。
    続いてやって来た保険外交員の輝蕗さんは区役所の生活福祉課で働いている寺田結美さんを紹介する。

    とある夜、東京の一室でほんのひととき営まれる夜会。太田さんの用意したドリアのようなボルシチのような料理が美味しそう。
    木下愛華さんは肩幅がガッチリしていて女子プロレスラーのHikaruみたいでカッコイイ。
    日野あかりさんの役の作り込みには狂気すら感じた。強迫神経症のような書き込み。ベロンベロンのワイン。素晴らしい。
    寺田結美さんの電話のシーンでは泣いた。

    ネタバレBOX

    木下愛華さん←福永マリカさん
    太田ナツキさん←笠島智さん
    日野あかりさん←奥野亮子さん
    輝蕗さん←ハマカワフミエさん
    寺田結美さん←青山祥子さん

    同性愛者として生きていく“覚悟”に対して、日野さんが寺田さんを問い詰める。“気分”のような不確かなもので一生を賭けたアイデンティティを弄ばないでくれ。その執拗さに我慢ならず、輝蕗さんは切れて怒鳴りつける。
    そんな中、寺田さんの元彼はよりを戻そうと電話を掛けまくってくる。実は妊娠3ヶ月、元彼の子供を孕んでいる寺田さんは黙って独りで出産し育てようと決めている。涙ながらに訴えるも無神経な元彼は寺田さんの“本気”を全く意に介さない。耐えられなくなった輝蕗さんは「今は自分が恋人です」と電話口で宣言する。元彼は大受けして、「他に男ができたのかと嫉妬していたら、レズの恋人かよ」と笑い飛ばす。「なんだ、それならじゃあもういいや」と。その遣り取りを黙って聴いていた部屋の女達の気持ち、観客の気持ち。痛みと悔しさと情けなさ、踏み躙られた尊厳。自分達マイノリティは言葉通りにいつだって少数派だった。何処にいたって差別されてきた。いつも笑われ馬鹿にされてきた。はみだし者の出来損ないだと。そして沢山の人間が長い年月をかけ、闘い勝ち取ってきた“権利”。そんなものですら大多数の人間にとっては何の価値も持たない事実。

    小崎愛美理さんの演出では、木下愛華さんの不安を視覚化したように天井から物が音を立てて降ってくる。輝蕗さんは大量の風船を部屋中に転がす。寺田さんの元彼の電話口からの言葉に怒り傷つく度、皆がその風船をバンバン割っていく。いろんな工夫、オリジナルに対しての戦意表明は支持するのだが、脚本の良さを肯定していないのでは?とも思う。一番重要な太田ナツキさんと木下愛華さんの物語が中途半端に投げ出されてしまっている。(前半の遣り取りが全体的に退屈に感じたのも、会話に潜む個々のキャラの掴み取り方が弱かったせいでは。後半の怒りの場面までの伏線が弱い。前半に緻密で繊細な関係性を構築させていないと暴力的な崩壊による効果が小さい)。

    この芝居は別れの岐路に立つこの二人の一夜の出来事であり、観客が観ているのもその一点。そこを放り出して「はい、終わり」は酷い。現実と地続きの物語にしたかったんだろうけれど、全く乗れない。初見の観客からすれば「酷い男がいるねえ」でオシマイ。何じゃこりゃあ。こういうのを観る度にヌーヴェル・ヴァーグなんてものは、ごく一部を除いて『百害あって一利なし』と思う。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2024/04/24 (水) 19:00

    鵺的で2021年の9月に上演された作品を、別名義の団体で、演出・役者を変えて上演。初演も観てるが、また違った感触が面白い。観るべし!観るべし!!観るべし!!!82分。
     4人のレズビアンと1人のクエスチョニングの緻密な会話劇。どの人物にも同意できる部分と同意できない部分がある会話は、何でもないものから徐々にヒリヒリする展開へと移る。初演に比べると、間を大事にした演出になっているように思うし、飛び道具的に使ったモノは効いてる。初演もいい芝居だと思ったが、再演は少し違った意味でとてもいい芝居。「レズビアン」というのは分かりやすいマイノリティの象徴で、全ての人にとっての意味があるのではないかと思う。

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